DO-IT Japanでの学習を支援するテクノロジー活用例

新型コロナウイルス感染症による全国の学校での臨時休校中は、皆さんはどのように過ごしておられましたか。自宅でオンラインや放送での授業を受けたり、学校から渡されたプリントなどの宿題を、自宅で行うように指導を受けた人が多かったのではと思います。

そうした皆さんの中には、ディスレクシア(読字障害)やディスグラフィア(書字障害)、視覚障害など、読み書きに困難があり、宿題のプリントに取り組むことが難しい人もいると思います。また、肢体不自由があって、支援がないとパソコンを操作することが大変で、自宅では教材を読み書きしたり、オンライン授業を聞いたりすることが難しい人もいると思います。

このページには、DO-IT Japanのスカラーがテクノロジーの活用を学んでいる場面の動画を掲載しました。動画の場面は、夏季プログラムで、中高生のスカラーを対象に、テクノロジー・ワークショップをしているところです。テクノロジーを活用して学習を支援する方法は本当に様々で、個々に紹介した以外にもたくさんあるのですが、ここではそのいつくかを紹介できればと思います。「こんな方法があるんだ!」ということを、ぜひ知っていただけたら幸いです。

また後半では、米国ワシントン大学DO-IT Centerが制作した、障害のある学生へのテクノロジー活用に関するビデオへのリンクを掲載しています。いずれも、日本語字幕がつけられたビデオです。

1. テクノロジーを使った学習方法 

様々な学習を助けるテクノロジーを、スカラーが使っている様子と一緒に紹介します。Windowsに標準で備わっている機能もありますので、ご自宅にパソコンがあれば、ぜひ触ってみてください。

DO-IT Japanのプログラムでは、このような機器を実際に触るテクノロジー体験の機会があります。毎年の活動をまとめた活動報告書も併せてチェックしてみてください。
※各ムービーには、日本語字幕がついています。

(1)音声読み上げ機能で教材の内容を読む

Wordの音声読み上げ機能で内容を読むことができます。Wordにコピー&ペーストした文章を読み上げさせることもできますし、教科書や教材、プリント資料のデータを手に入れることができれば、それを音声読み上げさせて、「聞いて読む」ことができます。

オンライン図書館「AccessReading」では、Wordのデータ形式(DOCX形式)での検定教科書のデータも無償提供しています。詳しくは上記のサイトをご覧ください。
また、AccessReadingでは「オーディオブックや電子書籍を活用して、読書や学習を楽しもう!」という特設ページも設置されています。

Wordには標準で「音声読み上げ」機能や「イマーシブリーダー」という機能があり、読むことに障害のある人々が、Wordの文書を耳で聞いて読んだり、ハイライトや色の変更、注目したい行だけを表示させながら音声読み上げすることができます。

また、最新版のEDGEというブラウザには、「音声で読み上げる」という機能があり、ウェブページをハイライトしながら読み上げることができます(インターネットにつながっていれば、「Nanami Online」という音声を選ぶことができるのですが、この音声は非常に自然で、優れた音声です)。

ビデオでは、Word標準の読み上げ機能ではなく、「WordTalker」というアドインを導入して、音声読み上げさせています。文字にルビを振っておけば、ルビを音声で読み上げることができたりと、Word文書を音声で読み上げる上で便利な機能や、細かく個人のニーズ合わせて設定を調整できる機能が多数備わっています。

(2)印刷物をスキャンして音声で読み上げる

テキスト情報が含まれた電子データがあれば、音声読み上げ機能は、電子データ(テキストデータ形式や、WordのDOCX形式、ウェブページで使われるHTML形式など)のテキスト部分を音声に変換することができます。

ところが、紙の印刷物しかない場合、そのままでは音声読み上げさせることができません。何らかの方法で、印刷物を画像に変換して、そこから文字に当たる部分をコンピューターに認識させて、テキストに変換する必要があるのです。

そこでこの動画では、スキャナーを使って印刷物をスキャンして、それから「OCR(高額文字認識ソフト)」を使って、テキストデータに変換し、それを音声読み上げ機能を使って読み上げています。

この動画の中で読み上げに使っているのは、「TextToWav」というソフトです。このソフトには、「クリップボードにコピーしたテキストを自動的に読み上げる」という機能があるので、ウェブサイトでもWordでも、文書の中のテキスト部分を選択してコピーすると、即座に音声で読み上げてくれます。

スキャナーを使う方法以外にも、Microsoftの「Office Lens」というソフトを使う方法もあります。カメラで撮影した画像から、文字の部分をOCRでテキストデータに変換する機能があります。

ただ、学校で使われているプリント教材や連絡物などの資料に関しては、先生がWordなどで作っておられるとしたら、そのデータをそのまま渡してもらえるのが一番助かります(音声読み上げで内容を確認すればよいからです)。ぜひ、データ提供を学校にお願いしてみてください。

(3)キーボードで数式を入力する

「分数はもちろん、累乗、ルート、行列、シグマ、微積分等々、複雑な数式は手書きでないと書くことができない」と思っている人もいるかもしれません。しかし、実はそんなことはありません。

Microsoft Wordには、「数式」という機能があり、クリックやキーボード入力で、複雑な数式を入力することができます。「演算式または数式を入力する」を参照してください。

マウスを使わず、キーボード入力だけで数式を入力することもできます。「Word で UnicodeMath および LaTeX を使用して行形式の数式を入力する」のほか、「Wordの数式の使い方(挿入/入力/設定など)」が参考になります。

この動画では、Wordではなく、「ChattyInfty」というソフトを使っています。ChattyInftyは、キーボードだけで複雑な数式を入力できることに加えて、数式を正しく音声読み上げすることもできます。DAISY形式やEPUB形式の電子データを作る際にもChattyInftyは役立ちますが、日本語での数式読み上げの機能は、ほかのソフトにはないユニークな機能です。

(4)グラフをキーボード入力で描く

数学の学習には、もう一つの壁があります。それは、「グラフを手書きで描く必要がある」ということです。肢体不自由があったり、書字障害があったりすると、グラフを方眼紙やノートに手書きすることが難しいことがあります。

数式の意味を学ぶときには、グラフを描きながら、あれやこれやと試行錯誤して、切片や傾きを始めとするグラフの意味を学びます。グラフを手書きで書くことが難しいと、グラフを描くことを通じて数学を学ぶチャンスが制限されてしまうことがあります。

手書きにこだわらなければ、グラフを試行錯誤しながら描くことができます。この動画では、「GeoGebra」という無料の数式ソフトを使って、キーボード入力でグラフを描いています。

一次関数や二次関数のグラフを描くことひとつとっても、傾きや切片の数値を変更すると、その瞬間にグラフが書き換わります。他にも、いくつかのグラフを重ねて表示して違いを比べたりと、GeoGebraは、グラフを描くことで数学を学ぶ上で必要な機能がとても充実したソフトウェアです。

(5)上肢の動きを支える機器を活用する

上肢の筋力が低下する、あるいは、運動麻痺等でも、補助があれば腕を動かせる場合があります。腕を支える装置を用いることで、軽い力で机上動作が可能になり、腕をキーボード等の上に運んでくることが出来ます。

この動画では、腕を補助する道具である「MOMO」を机に固定し、腕をアームサポートの上に乗せて使用しています。
この他、キーボードの一部は押さえられるが、少し離れた隅のキーを押さえることが出来ない場合に、以下の方法も考えられます。

解決方法(1):小型キーボードの利用
小型のキーボードを用いる方法です。これによって、隅にあって押しにくかったキーも手元で押せるようになります。小型キーボードには障害を持つ人専用に開発された製品と、一般のパソコンショップでも入手可能なものがあります。

解決方法(2):オンスクリーンキーボードとポインティングデバイスの利用
オンスクリーンキーボードとマウスあるいはトラックボールを併用するのも1つの方法です。オンスクリーンキーボードは、モニター上に表示するキーボードです。このキーを手元のマウスあるいはトラックボールを通じて選択出来るようになっています。

(6)頭の動きでマウス操作やキー入力を行う

マウスやトラックボールの操作には微妙な運動調整が必要になるため、運動障害によってはそれらの装置が利用しにくい場合があります。通常のマウスが利用できない人のために、マウスの動きを代替する代替マウスの利用が考えられています。

この動画では、身体に装着して使うワイヤレスマウスである「Zono」を利用してマウスカーソルを操作しています。
この他、マウスの操作に困難さがある場合に、以下の方法も考えられます。

解決方法(1):OS標準機能での調整
OSの設定OSには、マウスやトラックボールの速度調節機能が組み込まれています。この機能を利用して、速度を変更して試してみるとうまくいく人がいます。また、マウスキー機能と呼ばれる、キーボードのテンキーを使ってマウスを動かすためのソフトウェアも用意されています。

解決方法(2):特殊マウスの利用
小型から大型まで、様々な形状のマウスやトラックボールが市販されています。この中からその人に合ったものを選ぶのも1つの方法です。
障害のある人向けに開発された物の他に、パソコンショップには様々な製品が展示してあると思います。是非、実際に触れて試してみることをお勧めします。

(7)ロボットを使った遠隔からの参加

DO-IT Japanの夏季プログラムでは、入院や病気、または障害から生まれる何らかの理由によって、東大先端研などで開かれるイベントに現地参加できない人もいます。

また、海外に留学中で、日本に帰ってくることができない人もいます。夏季プログラム以外にも、3か月に一度は「ギャザリング」という集まりを開いていますが、国内でも東大先端研から離れた所に住んでいて、毎回はギャザリングに現地参加することが難しいもいます。そうした人たちには、インターネットを通じてイベントに参加するために、カメラやロボットなど様々なツールを使っています。

この動画では、スカラーの一人(現在は、AccessReading担当の東大先端研職員として就職)が、「Double」という遠隔操作ロボットを使って、会議に参加している様子を再現しています。

夏季プログラムでは、ほかにも「Kubi」や、共催企業であるソフトバンク社から貸出を受けた「Pepper(ペッパー)」など、さまざまなテクノロジーを使って、遠隔での講義やイベントへの参加を可能にしています。

2. DO-IT Videosから

障害のある児童生徒・学生が、学校教育にアクセスするために必要な支援や、オンライン講座のアクセシビリティ保障、様々なテクノロジーの活用、合理的配慮の考え方、発達障害など見えない障害への支援、テクノロジーの発展を障害のある若者の視点からどう捉えるかなど、多彩なテーマについてのビデオへのリンクを張りました。いずれも、DO-IT(ワシントン大学DO-IT Center)が制作したものです。

DO-IT Videos」には、以下の8本以外にも多数のビデオがありますが、以下のビデオには、日本語の字幕がついています。ビデオプレーヤーの下部にある「CC」をクリックして「Japanese」を選ぶと、日本語字幕が表示されます。

(1)アクセシブルなオンライン講座を提供する20のヒント
「20 Tips for Instructors about Making Online Learning Courses Accessible」

DO-ITの創設者であるSheryl Burgstahler博士が、障害のある児童生徒にアクセシブルなオンライン講座を提供する20のヒントを話題提供しています。
ヒントのうち9つは、ウェブサイト、資料、ビデオ、画像についての工夫、残りは、障害のある児童生徒に対する指導方法についての工夫です。

(2)学習障害のある人々へのコンピューター活用
「Working Together: Computers and People with Learning Disabilities」

LDのある人々へ、読み書きを代替し、学習を助けるコンピューターの機能を紹介しています。画面上の文字を読み上げてくれる音声読み上げ機能、スペルチェッカー、マインドマップなどが紹介されています。
このムービーでは、LDのある児童生徒・学生を例に上げていますが、これらの機能は、何らかの障害や疾患で同じ困難を感じている人にも参考になります。

(3)スクリーン・リーダーの活用
「Using a Screen Reader」

スクリーンリーダーとは、主に視覚障害のある人が利用する、パソコンの画面上の情報を音声で読み上げる機能です。
視覚障害があるHadi Rangin氏が、見出しやテキストコンテンツなどのウェブページの要素と、それらをどのようにスクリーン・リーダーが読み上げているかを話してくれています。

(4)アクセシブルな資料の作り方
「Creating Accessible Documents」

その資料がアクセシブルかどうかは、資料のファイル形式がAdobe PDF形式なのか、Microsoft Word形式なのか、または別の形式で作成されているのかで決まるわけではありません。障害のある人々が資料にアクセスできるようにする上で、資料の作成方法には、良い方法と間違った方法があります。
このビデオでは、すべてのユーザーがアクセスできるように配慮して電子的な文書を作成することが必要な理由と、その方法が説明されています。

(5)見えない障害と高等教育
「Invisible Disabilities and Postsecondary Education」

このビデオは、「見えない障害」と呼ばれることのある、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害その他、何らかの見えない障害がある人への、高等教育機関での授業や試験での効果的な支援の方法(合理的配慮やユニバーされるデザインなど)が紹介されています。

(6)DO-ITスカラーが語る大学進学の重要性
「DO-IT Scholars Discuss the Importance of College」

DO-ITは、アメリカのワシントン州にあるワシントン大学が始めた、障害のある高校生の大学進学移行プログラムです。
このビデオでは、大学に通うことが重要であると考える理由について話されています。ビデオには、アメリカのDO-ITスカラーたちも参加しています。

(7)工学系カリキュラムでのユニバーサルデザイン教育
「Including Universal Design in the Engineering Curriculum」

ユニバーサルデザインをカリキュラムに含めることで、工学系の学生が、障害を持つ人々を含むさまざまなユーザー向けに製品を設計する方法を学ぶことができます。
ユニバーサルデザインをカリキュラムに積極的に含めていくアプローチを取ることで、多様なユーザーのニーズが考慮されるようになり、製品全体をより良いものにすることができます。

(8)テクノロジーの進歩と障害者のアイデンティティ
「Technology Advancements and Disability Identity」

障害のある人の困難を補い、助けてくれるテクノロジーは、皆さんのすぐ近くにあります。しかし、障害者を支援するテクノロジーが存在しているからといって、必ずそれを使わなくてはならないわけではありません。
テクノロジーをどう捉えるかについて、アメリカのDO-ITスカラーたちがさまざまな視点で話してくれています。

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障害があり、学びや生活に困難のある、中学生、高校生、高卒者、大学生、大学院生の中から、テクノロジーの活用と移行支援を通じ、将来のリー ダーとなる人材を養成することを目的としたプログラムです。
毎年春に参加者が公募され、書類選考、 面接選考を通じ、スカラーが選抜されます。

2020年度の募集受付は終了致しました。
ご関心をお寄せ下さった皆様、誠にありがとうございました。

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