DO-IT Japan 2012 Report Disabilities, Opportunities, Internetworking, and Technology Japan 【見出し記号の凡例】 見出しレベルの大きいものから小さいものの順に、次の記号を使用しています。 ## 見出しレベル1 #  見出しレベル2 ■ 見出しレベル3 □ 見出しレベル4 【見出し記号の凡例 終わり】 1ページ 表紙 DO-IT 2012 2ページ ##DO-IT Japan 2012 レポート Diversity, Opportunities, Internetworking, and Technology 目次 「DO-IT は次のステージへ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 @ DO-IT Japan 高校生向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4   夏季プログラムを終えて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 A DO-IT Japan 小学生向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16   夏季プログラムを終えて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 B DO-IT Japan 秋季プログラム   企業訪問@富士通株式会社 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24   企業訪問A株式会社資生堂ライフクオリティービューティーセンター・・・26   企業訪問B株式会社マガジンハウス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26   重度重複障害児向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 C 一般公開シンポジウム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 D DO-IT Japan の概要と未来への展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 3ページ ##「DO-IT は次のステージへ 」  DO-IT の活動も 6 年目に入り、高等教育機関を目指す障害のある学生たちを取り巻く環境も変化しています。この 5 年間で彼らの進学率は 2 倍に伸びており、パソコンを利用した入試も少しずつですが認められてきています。これからも DO-IT の活動が配慮の拡大や進学率向上の支えとなればと思っています。  その中で様々な問題も見えてきました。技術は進歩しその恩恵を受ける学生たちが多くいる一方で、技術を用いても必ずしも進学や就労に結びつかない学生もいます。例えば、記憶障害のある学生は記憶問題中心の今の入試制度の中では試験にパスする事は非常に困難です。さらに重度重複障害のある子どもの中にはどのような教育を行ってよいか分からないケースもあります。彼らにとって高等教育機関は遠い存在ですが、こういった学生たちと大学進学を目指す学生たちを区別する理由は何もありません。DO-IT は大学に進学する事が重要なのではなく、その人なりに自己実現できる社会をつくることが大切だと考えています。また、大学進学を果たした DO-IT スカラーたちが、社会のリーダーとなって障害・人種・性別・職業など多様な特性を有する人たちを理解し、誰もが自己実現出来る社会の構築を実現してくれればと期待しています。  しかし、これまでの DO-IT はダイバーシティ(多様性)を謳いながら大学受験の出来る学生だけを対象にしてきました。DO-IT スカラー達が真の意味で多様性を理解するためにも、今こそ、DO-IT は次のステージに移行する時期にさしかかっているように思えます。そこで今年度から重度重複障害のある子ども達の活動体験プログラムを DO-IT のプログラムの 1 つとして開始しました。その中では、運動や知能発達に重い遅れのある子ども達の僅かな動きを画像解析プログラムで解析することで、彼らが残存機能を活用して様々なアクティビティに参加しています。ビデオカメラの前に座った全く体を動かせないと思われていた子どもがわずかな動きで扇風機や照明の ON/OFF を行う姿に彼らのポテンシャルを感じました。  DO-IT の次のステージでは進学・就労支援のみならず、ダイバーシティの理解を助け、新しい働き方や生き方を創造する活動も社会に広がっていけばと思います。 DO-IT Japan ディレクター 中邑 賢龍 4ページ ##@DO-IT Japan 高校生向けプログラム 夏季プログラムへの参加に先立ち、スカラーたちは 3 週間にわたり、週末にインターネットを通じたオンライン会議で事前学習を行いました。事前研修で「様々なテクノロジーやインターネットの活用方法」、「周囲への自分自身の障害と配慮に関する説明の準備」、「高等教育機関での障害者への配慮の現状」等について学んだ後、実際に東大先端研に集合。いよいよ夏季プログラムの開始です。 #プログラム1日目 8月 1日 水曜 10:30受付 12:30オープニング/オリエンテーション (中邑 賢龍 教授、福島 智 教授) DO-IT Japan の目指す未来の社会、ひとりひとりが将来の社会のリーダーとなることを目指すプログラムについてディレクターの中邑、福島教授からのメッセージ。その後、参加者全員がはじめて顔を合わせ、自己紹介しました。 13:10ガイダンス 13:30ディスカッション 「大学や入試での配慮の求め方を考える」 個々のスカラーが、自分自身の障害と必要とする配慮内容を説明し、大学進学後に周囲にどのように支援を求めていくかを議論しました。先輩スカラーや専門家からの経験に基づいた助言が議論を膨らませました。 17:00ホテルへ移動 残り時間や先のスケジュールを見越して自ら考えて移動。公共交通機関をスマートに使いこなし、周囲に上手に支援を依頼する経験を積みました。また支援ニーズや移動ペースがそれぞれ違う仲間たちや先輩たちとの移動は、自らの困難のあり方について気づきを拡げました。 19:00ホテルにて BYO(Bring Your Own) PARTY Sponsored by 株式会社トヨタレンタリース東京 夏季大学体験プログラム期間にリフト付き車両を2 台無償でお貸しいただきました。自力での移動が体力的に難しいスカラーや体調を崩したスカラーの移動に使わせていただきました。 Sponsored by 株式会社京王プラザホテル 夏季プログラム、秋季プログラムの期間中、スイートルームを含む宿泊プランを提供いただきました。一流のホテルでサービスを受ける経験はスカラーが場に即した立ち居ふるまい方を身につける機会となりました。 5ページ #プログラム2 日目 8 月 2 日 木曜 9:40講義T 「付加価値化のためのデジタルデザイン」 講義T 写真 鈴木 宏正 東京大学先端科学 技術研究センター教授 11:00講義U 「社会技術による医療開発:南からの挑戦」 東京大学の先生方の講義を通して、世界最先端の研究を学ぶことのできる大学の授業を模擬体験。大学進学後にどんな学びの環境がやってくるのか、そこで学ぶためには自分には何が必要かを実体験を通じて学びました。 講義U 写真 馬場 靖憲 東京大学先端科学 技術研究センター教授 写真 ラジェーンドラ・マヨラン GE ヘルスケア・東京大学大学院 工学系研究科先端学際工学専攻 12:15ランチョンセッション 13:30「自立した生活を考える」 【セミナーT】【大学生リーダーの体験談】 学習場面でも生活場面でも、自分自身で意志決定することが求められるようになる大学生活。自身が小児麻痺の当事者でもあり、さまざまな工夫と周囲の配慮を得ながら医師・研究者として活躍する熊谷講師の話題提供と、さまざまな障害のある DO-IT Japan の先輩たちひとりひとりの進学後の経験談をもとに「自立」の意味について議論しました。 写真 熊谷 晋一郎 東京大学先端科学技術研究 センター 特任講師 15:00【障害別グループディスカッション】 DO-IT Japan の先輩スカラーやアドバイザーの先生方とともに、肢体不自由、発達障害、聴覚障害の 3 つのグループに分かれ、自立生活についてさらに議論を深めました。聴覚障害グループでは、関東聴覚障害学生サポートセンター代表・石川絵里さんおよび PEPNet-Japanのスタッフの方々にご協力いただき、ファシリテーターを勤めていただきました。 写真 石川 絵理 関東聴覚障害学生サポート センター 代表 16:30全体意見交換 17:10ホテルへ移動 Sponsored by 沖電気工業株式会社 (講義U) 夏季プログラム中には、参加者全員に配布する各種資料、授業体験や講演などの配布資料など、大量の紙の資料を印刷します。その印刷用にプリンターを複数台ご提供いただきました。 Sponsored by 富士通株式会社(ノートパソコン) パソコンは障害のある学生たちにとっては単なる機械ではありません。パソコンを使いこなすことは自らの困難を代替する方法となり、彼らが社会の中で学び、働き、生きる上で不可欠な道具となります。富士通社からは、毎年スカラー全員に最新のノートパソコンをご提供いただいています。 6ページ #プログラム3 日目 8 月 3 日 金曜 【企業訪問】日本マイクロソフト株式会社 テクノロジーの利用は障害のある人々の進学や就労、自立生活にとって不可欠なものです。日本マイクロソフト株式会社を訪問して、実際に教育やビジネスの現場で使われている最新のテクノロジーを体験し、自らの学習や生活に生かす方法について学びました。 9:30集合・受付 10:00実習T 「デジタルノート術(Visio や OneNote の活用)」 肢体不自由や書字障害があるためペンを使ってノートを取ることが難しい人、記憶や認知面の障害があるため思考や概念をまとめ上げることが難しい人などの、障害による困難のある人々にも大きな助けとなるデジタルノート術について、Visio やOneNote といった製品を活用して実際に作成する方法を学びました。 11:30昼食 12:50日本マイクロソフト品川本社・社内見学 13:00講義 「様々な障害のある人を支援するアクセシビリティ機能を知る」 Windows には様々な障害のある人のコンピューター利用を支援する「アクセシビリティ機能」が標準機能として備わっています。さまざまな障害のある人がどのようにアクセシビリティ機能を利用しているのかについて学びました。 13:30実習U 「他者への説明とセルフ・アドボカシー」 PowerPoint を使い、周囲の人々へ自分自身の困難と必要な配慮に関するプレゼンテーションするスライドをスカラー全員が作成しました。作成したスライドは、論理的な説明に基づいて周囲に必要な配慮を求めるワークショップの中で、DO-IT ディレクターの中邑が扮する「障害者者の大学進学や配慮の提供に否定的な態度を持っている大学教員・K 先生」をスカラーが説得し、大学での配慮を求めるためのツールとして役立てました。 16:00発表/まとめ 16:50日本マイクロソフト品川本社・社内見学 17:00移動・夕食 Sponsored by 日本マイクロソフト株式会社 (Visio,OneNote,Office) パソコン上で動く優れたソフトウェアなしには、読むこと、書くこと、考えをまとめること、相手にそれを伝えることが叶いません。日本マイクロソフト株式会社からは、学習に役立ち、将来の就労でも不可欠となる優れたソフトウェアの数々をご提供いただいています 7ページ #プログラム4 日目 8月 4日 土曜 9:30朝の会 9:40一般公開セッションT 「DO-IT Japan2012 障害学生による海外研修報告会」 DO-IT 海外研修プログラムとして 2012年 2 月にカリフォルニア州を訪問した山ア康彬さんが、研修で得た経験や気づきについて、日米の障害者への配慮内容の違いや文化的な背景の違いを比較した観点から報告しました。また、米国の大学へ留学した蔵本紗希さんが、長期に米国で暮らした経験から得た日米の違いについて意見を述べました。 11:00一般公開セッションU 「国際的な障害者への配慮の考え方と障害学生の自立:合理的配慮を知る」 DO-IT サブディレクターの近藤武夫講師が、国際的な障害者への差別禁止ルールに基づいた「合理的配慮」の考え方と、米国の大学で行われている具体的な合理的配慮の実例について話題提供しました。 12:15スカラー交流ランチ 13:30一般公開シンポジウム→C一般公開シンポジウム(p.28)参照 【テーマT】高等教育における障害学生支援の最新情報 2012 「全国の高等教育機関における障害学生に関する実態調査・結果報告」 「大学入試センター試験における障害者特別措置の現状と今後」 【テーマU】試験の本質を考える      :書字障害の生徒に漢字書き取りの出題は適切か? 「国語における学習指導要領が達成を求める教育目標の本質とは」 「さまざまな障害のある学生における読み書きの困難と代替手段」 【テーマV】産学官連携でつくる配慮ある社会 「配慮ある社会への取り組み」 16:00クロージング:DO-IT Japan2012 でのチャレンジ 2012 年度のスカラーへ、夏季プログラ ム修了を記念して修了証が送られました。 スカラーたちは 4 日間に渡る濃密なスケ ジュールを振り返って、自分自身が学ん だことを聴衆に伝えました。 17:20交流会 8ページ #夏季プログラムを終えて ■DO-IT に参加して少しでも自分に必要な支援を自分で説明できるように変わろうと思った 伊井 健悟 /奈良県・高校 1 年   僕がDO-ITに応募したきっかけは、母にDO-IT と言う大学体験プログラムがあると教えてもらったためです。参加しようと思った理由は、母や周りの人に頼ることが多い僕ですが、高校生になって、いつまでも母や周りの人に迷惑はかけられないと思い、DO-IT に参加して少しでも自分に必要な支援を自分で説明できるように変わろうと思ったからです。  DO-IT の講義の中で、配慮申請した時に無茶な返答にどう対処するかというものがありました。「僕に必要な支援は代読と代筆です。何故かというと、ディスレクシア(読み書き障害※僕のディスレクシアの特徴は全く読み書きができないわけではなく、書くスピードが遅く、飛ばし読みや間違いをしてしまう)だからです」というと、「ディスレクシア?何それ?要するに読み書きができない人はいらない」と言われて、ディスレクシアがどういう障害かよく知らないのに、単に読み書きができない子だろうといわれて、そんな子うちの学校にいらないといわれるのはおかしいなと思ったし、嫌だと思ったので、僕のディスレクシアがどういう障害なのか知ってもらって、その上で入試の配慮のことを考え直してもらいたいと思いました。  講義の中で、自分の障害について説明するスライドをつくるときには、先輩スカラーがついてくれて、最初は何を書けばいいのかがわからなくて、とりあえず、自分の障害の説明を書きました。なぜ配慮が必要なのかを書くために、Visio を使って、その理由を書き出していく方法を教えてもらいました。頭の中でうまいこと考えを整理できない僕にとって、考えをまとめる方法を教えてもらって、良かったです。自分の障害の説明を人にすることをチャレンジしてこなかったので、人に説明できるように近づけたように思いました。  京王プラザホテルのスイートルームで BYOパーティーをしました。BYO パーティーとは、みんながいろいろな食べ物を持ち寄って、みんなで夕食を食べたりするパーティーの事です。DO-IT の先輩スカラーや先生方が、夕食にラーメンやケーキをどこかで買ってきた鍋に入れて持って来たりしていました。先生や先輩スカラー方がなぜそんなことをしたかと言うと、「チャレンジしてみると大抵の事は出来る」ということを伝えるためでした。だめかなと思っても、とりあえず、してほしい支援や配慮を言うことが大事だと思いました。  最後に DO-IT で失敗してしまったことは、朝寝坊してしまったことです。いつもなら間に合う時間に起きられていたのですが、連日の百文字感想文を書くのに時間がかかり、2 日連続で12 時までおきていたせいかもしれません。寝坊してしまったので、朝食はコンビニで買って食べていきました。DO-IT 会場には間に合いましたが、遅くまで起きるのは控えようと思いました。これからは自己管理ぐらい自分でできるようにしようと思いました。  僕の将来大学でしたいことは、脳の記憶の研究です。何故かと言うと、自分がどうでもいい事は覚えているのに大事な事は忘れてしまうなどの記憶の優先順位がつけにくいからです。また、人の脳の大事なことの記憶の仕方やや思い出しかたをしているのかを調べてメカニズムが知りたいからです。大学に行くために今やろうと思っている事は DO-IT で教えてもらった、ICレコーダーを使って大事なことを録音して記録を忘れないようにしたり、読み上げが苦手なので音声読み上げソフトを使って読み飛ばしのないようにしたりと言った工夫を普段の勉強に活かしたいと思います。 ■伊井 久恵(保護者)  息子は、読み書きに困難があるため、中学で実施してもらっていた代読を高校受験でも希望し、何とか代読での受験が実現して現在公立高校に通っています。計画や段取り、見通しをたてることも大変苦手なため、何事にもまじめに取り組んでいるものの、時間ばかりが過ぎてしまい、なかなかはかどらないため、つい手を貸してしまっていたことがたくさんあったと、私自身改めて反省させられました。今後は「何をしてやるか」ではなく「どれだけ自分でできるか見守る」ことが、私のすべきことだと勉強させてもらいました。せっかくスカラーに選んでいただいたので、これからは先生方や先輩スカラーに、自分自身で悩みや困難を相談し、解決できる力をつけていってくれることを期待しています。いろんな困難を抱えながらもがんばっておられる先輩スカラーの姿は、とても頼もしく、息子もまた、そのようにたくましく成長してくれたらと願うばかりです。皆さんと出会う機会を与えていただいたことに感謝し、DO-IT の皆さんと一緒に社会を変革する一端を担えればと思います。今後ともよろしくお願いいたします。 9ページ ■違う困難を持った人でも、お互いに助け合える 井上 睦美 /愛媛県・高校 2 年  私は小学校 6 年生の時、非定型広汎性発達障害と診断され、中学校 1 年生の時そのことを知りました。しかし自分でもこの障害のことがよく分からずに、障害とどうつきあっていくべきか、ずっと迷っていました。普通の高校に通っていたこともあり「自分は障害者ではないのではないか」という思いもありました。  そういう時、高校の先生からこの DO-IT Japanプログラムを勧められました。面接で中邑先生から DO-IT の文字の意味や、点字ブロックで困る人もいるという話をうかがい、参加したいという気持ちが強まりました。  実際に参加してみて、まず自分の障害について初めて真剣に考えることができたと思います。初めてノイズキャンセリングヘッドフォンを使わせていただいて、自分がこれまで雑音でとても疲れていたことがよく分かりました。そして、大学生リーダーの方が「自分ができることでも、自分の本当にやりたいことをするためには、他人に頼んでやってもらう」というようなことをおっしゃっていたのがとても心に残りました。私はそれまで自分のできることは自分でやらなければならない、と強く思っていたからです。そして、何でも完璧にしようとして、できなくてとても落ち込む、ということを何度も繰り返していました。だから、そのような考え方があったことに驚くと同時に深く納得しました。「自立とは、たくさん依存できることである」という熊谷さんの言葉も、自立とはなんでも自分ですることだと思っていたので、とても驚きました。そして、もっと頼るべきところは人や支援技術に頼ってみようかな、と考えるようになりました。また、自分が今しなければならないこと、やりたいこととは何か自問していくことも重要だと感じました。  疲れとのつきあい方についても、いろいろ考えることができました。自分はそれまで他の人と違う時に疲れてしまう自分に強い劣等感を持っていました。しかし、DO-IT で同じ発達障害の人と話し合った時、自分の疲れ方に共感してもらえて、とても嬉しかったです。そういうことは初めてで、心強かったです。また、そういう人たちと話しているうちに、自分の疲れについて前向きに捉えられるようになりました。疲れも自分の一部なのだ と思えるようになり、心がとても楽になりました。  また、大学へのニーズと求める配慮について、実際に大学に進学している方から、大学ではどのようなことを配慮してもらえばよいか、具体的なアドバイスが得られたのも良かったです。今まで遠く感じられていた大学生活を思い浮かべることができました。そして、DO-IT では自分で判断し、行動することが求められていたので大変でしたが、自分で考えて行動することによって自立に向けて大きな一歩を踏み出せたと思います。  また、他の障害を持った方と語り合えたことが印象に残りました。自分とは違う障害を持っている人が、どんな困難があるかこれまで想像したことはあまりありませんでした。そういう方と一緒に過ごしたこともありませんでした。今回、車いすに乗っている人にお茶を運んであげたり、耳の聞こえにくい人には口を大きく開けてはっきり話さなければならなかったりして、これまで周りの人にまで気を配っていなかった自分を反省しました。これからは、そういう障害を持った方に出会ったら、できるだけ手助けしたいな、と思いました。違う困難を持った人でも、お互いに助け合えるということが分かりました。  今回私が DO-IT に参加して一番強く思ったのは、自分の障害や他人の障害についてもっとよく考えてみたい、ということです。これまで障害、ということについてあまり考えてこなかったので、DO-IT が終わってもしっかり考えたいです。そして、自分のニーズや求める配慮について、しっかり説明できるようになりたいです。また、自分の障害だけ考えているのではなく、他の人の抱える障害についてももっと理解する姿勢を持ちたいです。DO-IT はいろいろなことを考えるきっかけになり、参加できて本当に良かったと思っています。また次回からも参加したいです。 ■井上 聡子(保護者)  真夏の暑さの中、あっと言う間の 4 日間でした。娘は期待と不安で、はちきれそうになりながら出発して行きましたが、数え切れない程の気づきをお土産に帰宅しました。娘にとって、ここまで自らの障害を見つめたこと、その上、配慮を自らどのように頼むかを考えたことは初めての経験でした。そして自分と同じしんどさを他人と分かち合えたことは尚更初めてで「ほんとうに、うれしかった」と語っていました。障害を持ちながらも充実した大学生活を送っている先輩方との出会い、高校で頑張っている 12 スカラー、そのほかスタッフ全ての方々とのディスカッションは、一生の宝物でしょう。感性豊かなこの年頃に、真剣な話し合いの場を持てたことに親として感謝の気持ちでいっぱいです。帰宅後は早速この DO-IT Japan での成果をどう現実の生活にフィードバックしていくか、日々考えている様子が頼もしいです。先生方はじめ、スタッフの皆様方、本当にありがとうございました。 10ページ ■自分自身の事を一から見つめ直し、これからの人生を歩いていく礎を築くことが出来た 川本 真梨子 /広島県・高校 1 年  DO-IT を知ったのは、模試の希望大学を記入する為に、車椅子の学生を受け入れて下さる学校をインターネットで検索していたとき、偶然目に入りました。それは申し込み期限 3 日前の夜のことでした。私は小学 6 年生で腎臓病になり、再発を繰り返し、私の命を維持する為に必要であるステロイド薬や免疫抑制剤を毎日服用しながら生きています。しかし、ステロイド薬の副作用で多くの症状で悩まされています。中でも一番困った事は、両足の一部が壊死して車椅子生活になったことです。心身障害医療センターへの転校を学校長から勧められましたが、普通学級に通いたいとお願いし、遠方のバリアフリーの校舎のある学校に転校させていただきました。また高校も田舎町なので、バリアフリー対応の学校がなく、養護学校や通信制という話もありましたが、私は、大学に進み医療に携わりたいという夢を支えに生きているので、大学に受験しやすい進学校に通いたく、ようやく家から 125 キロ離れた県外の高校で受け入れていただきました。私にとって学ぶ場所を得る事はとても困難なことでした。  DO-IT の活動内容や考え方を知り、プログラムに参加して進路を選択する知識や能力を身につけたいと強く思いました。私の DO-IT への活動はそこから始まりました。徹夜で申込用紙に記入し、朝一番で担任の先生に、DO-IT に参加させていただきたいと資料を持参し説明して、推薦書を書いていただきました。申込書を記入しながら、初めて自分の気持ちや考えを表現することや支援をお願いすることの必要性を感じました。2 次選考の面接の際に、中邑先生にお会いして、今まで、自分を受け入れてもらえなくなる事が怖くて、無理していても「できます。大丈夫です」といつも発言していたことが見抜かれ「出来ない事は、出来ないとはっきり言いなさい。自分に必要な配慮を求めたらいい」、「頑張りすぎることはよくないよ」、「障害があっても、その障害をカバーし、受け入れてもらえるような提案や手法を知り尽くしたプロがいるから大丈夫」と言っていただき、私の中で張りつめていた大きな壁が崩れていくのを感じ涙がポロポロでました。  下肢障害を抱えて 3 年目になりますが、今まで避けてきた障害と向き合うことの大切さを DO-IT夏季プログラムでいろいろな角度から12スカラーや先輩と先生に出会い教えていただきました。今までは「車椅子だから諦めるしかない」など、自分のやりたい事を言葉にする前に、現状に自分が出来るか出来ないか、人に迷惑にならないかなどを頭で考え、自分の気持ちを押し殺す方法しか知りませんでした。しかし「自分に必要なお願いすべき配慮は何であるか?」など、やりたい事を実現させる為にアクションを起こす事が必要だと考える事が出来ました。なにより、障害を持つもの同士で自らの抱えている悩みや対処法などを話す事は、私にとっては初めての出来事であり、とても貴重な体験ができました。  マイクロソフト社では、One Note の使い方を教えていただき、薬の副作用で震戦(手の震え)があり、長時間鉛筆を持つことが辛かったので、IT 機器を使い学習することの利便性を実感しました。これからは、IT 機器を活用して日々の学習効率をよくしていきたいと思います。  同社にて、自分に必要な配慮についてプレゼンをするプログラムでは、既存のもので自分が対応するように生きていく方法しか思いつかず、配慮を求めるという感覚のない私に、先輩の大学生リーダーが私の障害に必要な配慮について真剣に考えてくださり、アドバイスを沢山くださったことがとても嬉しく思いました。プレゼンで配慮を否定する K 先生役に扮した中邑先生は、笑いを交えて否定しておられましたが、実際私達が配慮を求めていく上で、今後、前例がないなどで否定される事や拒否されることも数々あることと思います。そのためにも、自分の事を客観的にも考えられる柔軟な考え方と、自分が必要な最低限の配慮・体の負担を軽減する為の要望など自分の病気や障害をあらゆる角度から分析して周知しなければ、人に配慮を求める事は難しいと感じました。先生や先輩方のアドバイスを軸に、自分自身の事を一から見つめ直し、これからの人生を歩いていく礎を築くことが出来た気がします。  今回私が DO-IT で過ごした 4 日間は、私の人生の岐路になりました。自分の障害を考えることができ、一緒に参加した 12 スカラーの皆さんや先輩、先生方との出会えた事に感謝しています。多くの相談相手を得たことにより、人生の不安感が希望に変わりました。これからも DO-IT に参加し、私が大学生リーダーになった時には、カッコよくアドバイス出来るまでに成長したいと思います。DO-IT 関係者の皆様、ありがとうございました。 ■川本 正美(保護者)  娘は、薬の副作用で、下肢障害・満月顔・肥満などになり、年頃の女の子として悩む事も心配しておりましたが、常に前向きでいてくれました。しかし、入院中に慣れ親しんだ学校に帰れないと告げた日から、心を閉ざし、いい子を装うようになり、自ら高い目標を課し、無理をするようになりました。周囲が注意や助言をした時には、生きる為に必要な薬を飲む事を拒否する程、心のバランスを崩していました。希望の高校に入り、校風や友達にも恵まれ、徐々に明るさを取り戻しておりましたが、DO-IT 夏季プログラムにて、先生方や先輩のアドバイスをいただき、様々な経験を同期スカラーの皆さんと一緒にさせていただき、人生観が一転したようです。引き目を感じず、障害と向き合い、自らの人生に希望と楽しみを見つけたようです。閉ざされた心が解放されたのでしょう。久しぶりに見る娘の姿は、本来の天真爛漫で積極的な行動になり、何より親として、ありのままの自分が表現できるようになっていた事が嬉しく DO-IT Japan の関係者の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。有難うございます。 11ページ ■苦手を理解できるようにするにはどうしたらいいか、苦手をどうしたら上手に伝えられるか 小板 菜々美 /島根県・高校 3 年  DO-IT での 4 日間で、もうすこしがんばったらできるようになることとやっぱり苦手でちょっと支えてほしい所が、段々分かるようになってきました。自分について考える、いいきっかけになりました。  DO-IT での 4 日間は、短いようで長く密度の濃い日々でした。毎日たくさんの方々に様々なことを教えてもらいました。二日目の「自立はみんなに支えられて自分もみんなを支える、という形が良いのだ」と語ってくださった先生、同じく二日目の障害別グループで自分たちの苦手なことを話し合ったときの「私も同じことに悩んでいた」と言う感覚、三日目の頭の固い先生を納得させるための文章作りの時、あまりにも頭が固い先生を説得するのでいろいろ書き綴っては消していた時に、先輩スカラーさんから様々なアドバイスをもらい、そしてそれらを生かし、とてもいい文章ができました。  最終日の先輩スカラーさん二人が話してくださったアメリカ留学体験談の「アメリカは思考が柔らかく、人々の意思を尊重し人権を大切にするので、支援を求めた時に軽く快挙してくれる」という話と「アメリカでは、法律の都合上最低限の配慮が公共交通機関にあるが、それ以上はあまりなく、日本で受けられる車いすの方の電車乗車補助が無かったりした」という話を聞きました。その時に日本はどうなのかという話が出て「日本は配慮をするなら 120パーセントめいっぱい配慮をするが、してない所はとことん配慮をしていない」ということを聞いて、日本と比べて随分違っていて不思議だなと思いました。あと、アメリカのほうは障害者の大学入学率が日本より高いっていうのも驚きました。これもおそらくは、人々の意思を尊重し人権を大切にするこの国特有の良い所の部分が影響していると教えてもらいました。また、文部科学省の方が来てくださって「書体によって違う書き方があるので、採点の時はそれを考慮して点をつける」という話はすごく耳に残っています。その話をされた直後、拍手喝采が起きて、そのあとの質問の時もほとんどこの話 でもちきりでした。  どれも、日常では中々ない体験でした。実は、講義はどちらかというと苦手部類に入るのですが(終わりが見えない上、じっと座ってるのが苦手なため)、でも今回の講義は楽しく興味を持って聞けました。  夜の BYO パーティ(ご飯を持ち寄って楽しくお話しパーティ)では、昼の講義とは違う話をして盛り上がりました。お土産を起点に、みんなの住んでいるところの気候、東京までにかかった時間、地元の学校の話などの住んでいるところについてお話ししました。他にも好きなものの話をしたらいつの間にか本の話になったり「〜さんのボールペンについていたキャラの事知ってる!」などの楽しい話をたくさんしました。あと、ほぼ毎回DO-IT の機材班の方々が面白い持ち寄りごはんを持ってこられて、ある日はわざわざお鍋を買ってまでして、ラーメンを鍋に入れて持ち寄ってきたり、ある日は牛丼屋さんで牛抜き牛丼を持ち寄った、という話を聞いたり…またある日は、お鍋をまた持参して「お鍋に入れるべきものを買ってきた」と言い、12 スカラーのある人に開けてもらったら、その人の名前がチョコのプレートに書いてある誕生日ケーキが現れたりしました。ちなみに、その人の誕生日は随分先だったそうです。  そんな素敵な 4 日間を過ごして思ったことは、私は自分の事を知ってるようで知っていない事と、少しの補助で何とかなる事と、本当に無理なことの区別がまだ少しわかってないと言う事です。なぜそう思ったのかというと、まず自分の事をある程度は理解しているつもりで、いざ他の人に説明するとなると、どのように言っていいかわからず声が出なくなったからです。説明で声が出なくなること自体は何回かあったのですが、それをちゃんと覚えておらず、どうしたら説明できるかはおろか、それが少し「苦手」と理解していなかったです。このような状態では『少しの補助で何とかなる事と、本当に無理なことの区別が分かる』はずも無く、それを DO-IT で痛感させられました。  これからの日々は、苦手を理解できるようにするにはどうしたらいいか、苦手をどうしたら上手に伝えられるか考えようと思います。DO-IT で教わったさまざまなこともうまく生かしていこうと思います。それらを考え、生かしながら高校を卒業して、小・中学生の時にやり残した勉強の穴を埋めてゆき、美術系専門学校に行けるように日々頑張ってゆこうと思います。 ■小板 幸子(保護者)  『DO-IT は、みんなの困ったを持ち寄ってどうしたらいいかを考えるところだったよ!自立にも、いろんな種類や段階があるって解った。私はもうちょっと自立出来るように頑張らなくちゃいけないと思う。だって私にはその機能が備わっているから』。喜びと自信に満ち輝くような笑みで、四日間の感想を伝えてくれた事は忘れられません。アスペルガー症候群と書字困難を抱える娘にとっては、環境への適応やコミュニケーション、大学での講義等について不安もありました。ですが、そんな心配を吹き飛ばし、彼女持ち前の明るさと優しさを発揮し、充実した四日間であった事を確信させるに余りある言葉でした。小学生時代に、既に厳しい二次障害を起こしていた娘と私にとって、スカラーに選ばれたことは、これから進むべき道標となる希望の光のように感じられました。そして全国から集まった同期スカラーや先輩スカラーとその保護者の方々、支援してくださる先生方やスタッフのみなさんとの出会いは、私たちの世界を広げる貴重な機会となりました。ここからまた始まる、新たに初めて行こう!今そんな気持ちでいっぱいです。皆様ありがとうございます。 12ページ ■私が友達とうまくいかなかったのは、自分の困っていることを友達に理解してもらえてなかったからだ 泉保 亮太朗 /香川県・高校 2 年  この 4 日間、DO-IT に参加してみて、12 スカラーや大学生スカラー、チューターなどの人たちとたくさん議論を受けたり交流したりしていくことで、障害に対する考えが少しずつ変わっていったように感じました。また、大学生スカラーの講義を受けたり、パソコンの要約筆記をしてもらったりして、今までにない貴重な経験をさせてもらいました。  初日、スカラー同士で障害について困っていることや、こう思っているといったことなど話していたので、期間中は互いの弱点を補おうとしていました。その人のために車いすを押したり、逆に聞き取れなかったことを教えてもらったり、代わりに電話に出てもらったりして、お互いのできないところを補いつつ、一緒に取り組んでいくことにやりがいを感じることができました。  私は普通高校に通っているため、他の障害を持った人がどんな支援を受け、どのような事に困っているのか、あまり考えたことがありませんでした。しかし DO-IT を通して「こういうことが必要なんだな」と気がつくことができました。自分の考えが大きく変わったきっかけは大きく分けて 4 つあります。  1 つ目は、福島智先生の「きこえたら、僕が僕でなくなる」という言葉です。福島先生は全盲ろう者のため、人口内耳を薦められたが断わったそうでした。先生の「自分が自分でなくなる」、「つらさ、しんどさも自分、その中で人生が見えてくるはずだ」という言葉は、障害があることを素直に受け止め、明るく前向きに生きていこうとする福島先生の強い気持ちから出てきたのでしょう。この授業によって、私も今まで分からないことをそのままにしてきたが、分からないことは分かるまで聞いていこうと思いました。また、困った時は人に頼っていいんだと思いました。  2 つ目は、ラジェーンドラ・マヨランさんの講義で、発展途上国の現状について学んだことです。現在アフリカや東南アジアでは、あまりきれいな水が飲めず、結核やマラリアなど感染力の強い病気になることがしばしばあると聞きました。普段、私たちがきれいな水を飲んでいることが当たり前だと思ってはいけないと同時に、自分たちに何ができるか考えていきたいと思います。今まで私は身近な範囲でのことしか考えてなかったので、視野が狭いことを改めて思い知らされました。世界問題である地球温暖化と同じように、日本だけではなく世界中で考えるのだ、と思うのと同時に、物事を個人で進めるだけではなく、周りを見ながら行動していくことの大切さを学びました。  3 つ目は、パソコンの要約筆記です。今までは要約筆記をしてもらっていたため、正直不安が大きかったです。でも、パソコンの方が普通の要約筆記より 7 割増し分かりやすいと聞いて安心しました。実際にパソコンの要約筆記をしてもらうと、パッと見て分かりやすかったです。DO-IT 大学生リーダーの難聴のある先輩も、分かりやすくて便利だと言っていました。パソコンを使うことが、日々の生活の中でとても役に立つということに気が付きました。自分自身、大学に行って授業を受ける時にパソコンの要約筆記を絶対に受けようと思いました。そして、パソコンを活用する機会を増やしていきたいと思います  4 つ目は、自分自身の障害のことです。このDO-IT に参加するまでは、自分の困っていることを友達にあまり言わずにいつも親だけにしか言わなかったことが何度かありました。しかし、DO-IT で 12 スカラー、大学生スカラー、チューターなどと困っていることをお互いに打ち明けていく内に、気持ちが楽になったように感じました。その時、ふと思いました。私が友達とうまくいかなかったのは、自分の困っていることを友達に理解してもらえてなかったからだと考えるようになり、これからは友達に対してもオープンな気持ちで困っていることを相談していきたいと思います。そして、素直に感謝の気持ちを表したいと思います。DO-IT では自分で移動することが多かったので、その分不安もあったかもしれません。でも、大学生スカラーやチューターが熱心に支えてくれたおかげで、自分に自信を持つようになりました。  私の将来の夢はまだ決まっていませんが、大学生スカラーやチューターのように困っている人がいたら、すぐに助けてあげられる人になりたいです。 ■泉保 朋子(保護者)  この度は DO-IT Japan に参加させていただき、ありがとうございました。今の彼には大変貴重な体験だったと思います。生まれつき高度の感音性難聴の彼は、補聴器を付けても言葉を聞くことはできません。3 歳で文字を覚えて言葉を目から学びました。普段の会話は読話です。でも、目に見えない情況音や声、空気間が、彼には情報不足となって困り感をもたらします。みんなの中に居ても、みんなと違う自分を感じるにつれ、小さい頃の何をするにも一生懸命な前向きな姿勢が見られなくなったことに、親として不安を感じていました。障害を抱えて生きることは、決して不幸であるとは思いませんが、不便であることは確かです。DO-IT の交流の中で、彼自身が障害と向き合い、出来ないこと、わからないことを認め、理解して貰えるように状況を説明し、適切に人を頼る力を身につけることを学んでいって欲しいと思います。困っている自分を表現して助けて貰うことは、生きていく上で大切なスキルだと思います。始めからうまくいかなくても、失敗を豊かな経験としてとらえ、努力を続けていって欲しいと思います。支えて支えられて、一人一人が尊重される世の中になって欲しいと思います。まだ彼の学びは始まったばかりです。今後とも引き続き、交流やご指導頂けますようお願い申し上げます。終わりに、DO-IT に関わっておられる全ての方々に、心から感謝申し上げます。 13ページ ■僕達スカラーが、この改革を実現できると信じています 馬場 春樹 /青森県・高校 1 年  僕は、このプログラムに参加して、とても多くのことを学び、また、考えることができました。そして、これから自分の将来を考える上で、とてもいい情報を得ることができたと思います。自分にとってとても良い刺激になりました。このプログラムで知って驚いたことが幾つかあります。  1 つ目は、「自立」についての考え方です。自立とは、依存しないことではなく、依存先を増やし、それぞれに依存する度合いを少なくすることだと知ったからです。これまで依存しないことが自立であると思い込んでいたので、これにはとても大きな衝撃を受けました。  2 つ目は、支援技術の発達です。標準の機能や市販のソフトウェアを使うことで、これほどまでにノートなどが取りやすくなることにとても驚きました。これまで支援技術は、なにか特別な技術を使ったものだと思っていましたが、とても身近なものだということがわかったからです。  3 つ目は、講義でのことです。「シボ」に関する講義では、工業を学んでいる者として、とても興味深いものでした。その中での、狩野モデルについてのお話も、とても参考になりました。また、医療開発に関する講義では、これまでの医療を根本から覆す技術と社会のあり方にとても驚きました。医療が世界中に行き渡る世の中が実現すれば、今の医療制度からこぼれている人々や、医療制度が整っていない国々の人々を救うことができると思います。 このプログラムに参加して、深く考えるようになったことがあります。それは「外から見えない障害」をどう説明するかということです。ぼくは、アスペルガー症候群で、これまで自分がどんな困難があるのかをうまく説明することができなかったため、必要な支援を得ることができなかったことがありました。しかし、今回うまく説明する方法を学ぶことができてよかったと思います。この問題は、発達障害のみならず、他の障害にも当てはまることだと思います。  また支援技術についても、どれが自分に合うのか、これからじっくり向きあわなければならない課題だと思います。今回、様々な支援技術を試すことができましたが、使いたいものが全て使えるわけではないのが現実です。よって、これから自分が実際に使えるものを見極めることが重要だと思います。  自分とは違う障害を持つ人々と語り合うことも、普段できない、とても良い経験になりました。自分と同じ種類の障害を持つ人々と出会うことで、自分の困難を多くの人と共有し、解決する術を共に考えることができました。今回、多くの人と出会い、語り合うことによって、かけがえのない仲間を得ることができました。これまで、自分のありのままを受け入れてくれると心から信じることができる仲間がほとんどいなかったので、これか らの僕の大きな支えになると思います。  僕は、改めて思うことがあります。「すべての人が本当に住みやすい世の中を作るには、今の社会制度を根本から変える必要がある」ということです。これは、教育や福祉だけのことではありません。この DO-IT Japan、そして僕達スカラーが、この改革を実現できると信じています。しかし、実現するためには、社会全体が「普通」や「前例」などから開放されなければならないと感じます。何故ならば、これらから開放されない限り、これまでとは全く違う、新しい認識を受け入れることは多くの場合難しいからです。僕は、この活動とその効果を広く世の中に伝えることで、この意識改革を実現したいと考えています。  今回この活動で、とても多くのことを得ました。学んだことを伝えることで、より多くの人々が救われると思います。これからは、今回学んだことを生かし、また多くの人に伝えていきたいと思います。そして将来、僕は工業を学ぶものとして、今回学んだことや、学校で学んだことを生かして、支援技術の開発機関わって行きたいと思います。今回参加したスカラー、リーダー、チューター、スタッフの方々、みなさん、ありがとうございました。 ■馬場 美奈子(保護者)  小学校の低学年の時に発達障害の診断を受け、親の会主催の SST やことばの教室での支援、ビジョントレーニングなど「親の思い」を押し付けつつ、本人の世界が少しでも広がってほしいと願っていました。いろいろな体験の場を意識的に作ることによって少しずつ世界が広がっていく中で、書く事への苦手さはどうしようもなく、高校受験に対して漠然とした不安があり、どうしたものかとネットで検索していた時出会ったのがDO-ITのHPでした。成人期に向かって親がすべてを握っているのではなく、本人が社会と直接関わって自己決定をしながら社会に出る準備をしていく、そのはじめの一歩が DO-IT Japan のように思います。先の見通しが立たないと不安が大きい彼です。練習したり、スケジュールがあったり、見通しをつけることが出来れば、集中して取り組むことが出来る、目標に向かっていけることは、これまでも体験済みですが、初めて東京で彼の手を放すことに不安を感じていたのは母の方でした。高専に入学し、はじめは参加申し込みを迷っていたようですが、パソコンが送られてきて、目をキラキラさせてメールやチャットで自分から準備をしていく様子を見て「成長したね」と思いつつ、世話を焼けないことにちょっとさびしさも感じました。入学早々いじめの洗礼を受け、親子で落ち込んでいましたが、今回のプログラムに参加していく中で、本人の目標が明確になっていくことで、前向きになることが出来たように思います。充実した 4 日間であったことは、迎えに行ったときの表情で感じました。「いろいろなところに仲間がいる」そう実感したと話す春樹が、頼もしくもありました。高等専門学校というちょっと変わった学校の中で、ちょっと変わった奴と思われながらも自分の目標を持って過ごしてほしい。現実に今、学校に「合理的な配慮が必要」とパソコンや IC レコーダーを持ち込むことは難しい事ですが、必要な人には必要な配慮が当たり前になるように、一歩ずつ着実に新しくできた DO-IT の仲間たちと一緒に前に進んでほしいと願っております。母も、たくさんの出会いと勇気を頂きました。今回このプログラムに参加させて頂けたこと感謝を申し上げます。 14ページ ■DO-IT に参加していなければ この課題は見えてこなかっただろうし、機械にも人にも頼れず、今よりももっと不自由な生活をしていた 藤木 祐衣 /佐賀県・高校 2 年  私は今まで、人の手を借りることや、人と違うことをすることがあまり好きではありませんでした。なので、頑張ったり時間をかければできたりすることは、できるだけ自分でやるようにし、できないことは切り捨てるようにしていました。だけど、学年が上がるにつれ、できないことがどんどん増え不自由を感じることが多くなってきました。そこで DO-IT は、私の狭い視野を広げる良いきっかけとなりました。  まず私は、DO-IT に参加するときに「人にものを頼めるようになる」という目標を立てました。東京に行くまでの飛行機や、移動の電車などで絶対に必要だと思ったからです。私は 1 人で飛行機に乗ったことがなく、電車の時刻表や路線図の見方さえわからなかったので、東京での移動はとても不安でした。でも、勇気を出して人に聞くと、みんなとても親切に教えてくれ、嫌な顔ひとつせず介助を手伝ってくれました。いろんな人に頼りながらも目的地に着いたときは本当にうれしかったです。このことから学んだことは「いろんな人に頼ってもいいんだ」ということです。「人に助けを求めたら迷惑になるんじゃないか」とすごく気にしていたけど、そうじゃないということがわかりました。これからは、今まで行ったことがない場所に 1 人で行ってみたいです。  2 つ目の目標は「人がどんな支援を求めているかを考えて動けるようになる」です。私は、小・中・高と普通学校で過ごしてきたので、ほかの障害者の方とかかわる機会があまりありませんでした。なので、受け身だけでなく自分も誰かの役に立ってみたいと思ったからです。でも、やってみるとこれはとても難しいことでした。例えば、駅に車いすで止まっているとき、大学生リーダーの方に「点字ブロックの上に車いすを止めちゃだめだよ」と注意されることがありました。今まで何気なく過ごしていたけど、こんなに近くに配慮できることがあるなんて思いもしませんでした。もので道がふさがれていた時に、どれだけ困るかは車いすに乗っている自分なら分かるはずなのに、それに気付けなかったなんてとても恥ずかしかったです。それと、DO-IT の中で 1 番印象に残っていることがあります。それは、昼食の時ゲストとして視覚障害者の方が来られて、本当はその方に最初にお弁当を選んでもらわなければいけなかったのに、1 番最後のあまりものになってしまったということです。こんな目標を掲げているのに、自分のことだけで周りが見えず、そのせいで誰かが嫌な思いをしていたと思うととても悔しいです。これからはこの経験を活かして、周りをよく見て自分にできることを考えて行動していきたいです。  今回 DO-IT に参加して、自分の考え方が変わり、できることが増えました。進路については特にです。今までは自宅から通えることを条件に大学を探していましたが、福祉サービスや宅配弁当などをうまく利用して 1 人暮らしをされている先輩方を見て「私にもきっとできる」という自信がつきました。今では、1 人暮らしをしてみたいと思えるようになりました。  また、大学の授業は、どのように・どのくらいのスピードで進むかのイメージができるようになり、パソコンなどの機器をうまく使うこと、大学の先生方とコミュニケーションをとることなどがどれほど大切かも痛感しました。なので、パソコンを早く打てるようになること、DO-IT で紹介していただいた OneNote や Visio を使いこなして授業に役立てられるようにすること、説明力や友達を作るためのコミュニケーション能力を磨くことなどが、私の大学までにこなすべき課題です。  もしも DO-IT に参加していなければ、この課題は見えてこなかっただろうし、機械にも人にも頼れず、今よりももっと不自由な生活をしていたと思います。これからは、ここで学んだことを日常生活にどんどん生かしていきたいです。DO-IT に出会えて本当に良かったです。 ■藤木 政次(保護者)  DO-IT への参加は、友達の中に入っていくことも、自分から行動を起こすことも苦手な祐衣にとっての大きなチャレンジでした。でも DO-IT での活動は、とても充実していたようで、大きな自信を得て帰ってきたようです。「頑張ってもできないこともたくさんある、でも、人に手伝ってもらったり手段を考えれば可能になることも分かった」と話してくれたとき、人に手を貸してもらったり特別扱いされるのが嫌で行動範囲を狭めていたのが、その殻を破り、自分の手足の障害を受け入れたうえで視野や考え方を広げたんだな、と頼もしく感じました。自分の進路についても、もう一度前向きに考えてみたいと思っている様です。DO-IT の先生方、スタッフの方、本当にありがとうございました。今回のプログラムで出会った仲間や体験したことは、未来を切り開いていく大きな力になると思います。障害の有無に関係なく、誰もが秘められた能力を持っています。皆に長所短所があるように、障害も一つの個性として向きあい、困難に直面しても仲間と励ましあいながらそれぞれの能力を発揮でいる場所を目指していってほしいです。 15ページ ■自分自身の目標を完全に定めることが出来ました 吉田 伸吾 /沖縄県・高校 3 年  私が DO-IT-Japan に参加するきっかけは、学校の先生が私に教えてくれたことでした。私は大学への進学を希望しています。  私が DO-IT-Japan の資料を見て、日本における大学の障がい学生数が 0.27 パーセントに対し、アメリカでは 11 パーセントと日本の 40 倍であることに非常に驚きました。日本は障がい者の受け入れに関して、まだまだ法の整備が出来ていないことにかなりショックを受けました。私は DO-ITJapan で、全国から集まった障がい者、そして専門家の方達とそれぞれの障がいにおける配慮やこれからの社会のあり方についてディスカッションしていく事で、それぞれの意見を共有したり、これからの自分自身の目標を定めていきたいと思って臨みました。  私がどこか遠いところへの移動や宿泊をする際は、いつも親がついており、何か自分自身困ったことがあってもサポートをしてくれました。しかしこの DO-IT-Japan のプログラムでは、身の回りの事など全て自分で考えて行動していかなければなりません。それは大学へ進学した際のシュミレーションになると思いました。今回は、初めて 1 人で私の住んでいる沖縄から東京まで移動することになりました。時間通りに到着できるか、路線の複雑な電車に乗りこなせるか不安でいっぱいでした。でも無事に東大の先端研に着いた時、自分の中で少し心に余裕が生まれました。  そして、初めて同じ 12 スカラーと会った時は、恥ずかしさなどであまりしゃべれなかったが、自己紹介やディスカッションを重ねていくうちにお互いの事を知り、どんどん話をすることが出来て、今ではメールでやりとりをするくらいになりました。  そして、一番勉強になったのは、熊谷先生の自立と依存に関する講義でした。私は自立というのは誰にも頼らない(親元から離れて何もかも自分でやる)ことだと思ってました。しかし先生が多くの人に依存することも自立とおっしゃられた時「人は 1 人では生きていけない。人と人によって支えられて生きている。」という言葉を思い出しました。私は自分でも出来るのであれば手を差し伸べ、何か困ったことがあれば誰かに依存する事も悪くないと思いました。しかし支援してもらう人を、その人だけに頼ってしまう事は良くありません。皆が関われる網にしていかなければならないと思います。その為には人とのコミュニケーションを容易にするようなシステムを作るべきだと考えました。私は現在普通高校へ通ってます。しかし障がい者だからと言って不自由な事はなく、例え困ったときは友人がサポートをしてくれます。これは相手に自分の障がいを伝える事が大事だと思います。学校という小さな社会かもしれないが、社会全体がそのようになってほしいと思います。  障がい別のディスカッションでは、自分は首都圏の大学進学を希望しているという事を伝えると、同じ肢体不自由で 1 人暮らしの大学生スカラーの先輩から、住居や日常生活について細かい所までアドバイスをもらうことが出来ました。私の一番心配している住居に関してでは、その先輩は推薦を利用し、他の受験生より早く合格が分かることが出来たので、たくさんの物件を探すことが出来たという事です。また身の回りの生活は、ヘルパーを使うことで不自由なく生活を出来ていることを知りました。色々制度やサービスを使いこなすことで、たとえ障がい者でも普通の生活に近づけることを知りました。そして私はこのアドバイスから、結果が早い段階で分かる AO 入試での受験しようと思いが強くなりました。  私が今回の DO-IT-Japan で得られたことは、障がいにおける配慮の求め方、そしてこれから求める社会について、そして自分自身の目標を完全に定めることが出来ました。私は将来、社会的弱者を助ける弁護士になりたいという夢を持っています。特に法律によって私のような障がい者が、社会の中で幸せに生きていけるような自立を支援していきたいと考えています。これからも DO-IT-Japan で「誰もが笑顔で幸せになれる社会」を追求していき、社会へ発信していきたいと考えています。 ■吉田 努(保護者)  沖縄から東京まで生まれて初めての一人旅。妻と私はハラハラドキドキしながら見送ったものの、本人は我関せず「大丈夫だよ。心配しなくていいよ」と目を輝かせて、那覇空港出発ロビーに車イスで足早に消えて行きました。本人にとって東京で過ごした 4日間は、ハードではあったがとても刺激になったらしく、台風と共に帰ってきました。私達には、いろいろな出来事を楽しそうに話してくれました。伸吾の将来の夢は弁護士になる事です。大学は東京で進学する予定です。「障がい者が声を挙げなければ、何も変わらない」、「障がい者は、社会の中で幸せになる権利があるはずです」が彼の持論です。親は見守ることしか出来ないのですが、DO-IT Japan に参加して、小柄なわが子が大きく見えるようになったのは、やはり親バカなのでしょうか。スタッフの皆さんには、いろいろとお世話になると思います。障がいのある子供たちの未来への可能性の背中をこれからも押して下さい。4 日間ありがとうございました。 16ページ ##ADO-IT Japan 小学生向けプログラム DO-IT Japan が 2011 年からスタートさせた小学生向けプログラムは、読み書きが苦手なだけで「学びたいのに学べない」子どもたちに対して、テクノロジーを使用した学習方法を教えることで、彼らが自立した学習者になるお手伝いをしています。子どもの能力とテクノロジーの作り出す力とのハイブリッドで、子どもたちはどのように変わっていくのでしょうか? #プログラム1 日目 8月 2日 木曜 10:30受付 11:00ガイダンス DO-IT ディレクターの中邑先生から DO-IT がどんなプログラムなのか説明をしてもらいます。いろんなテクノロジーを紹介してもらって、みんな興味津々です。 12:00BYO(Bring Your Own)ランチまずは、ジュニアスカラー同士が仲良くなるために、自己紹介をします。それぞれのやり方で自分をアピールします。 13:30「自分の得意・不得意を知ろう」 いつもの紙と鉛筆で、勉強の得意なところと不得意なところをチェック!どんなテクノロジーやテクニックがあれば、学びやすくなるのかな。 15:30「iPad で連絡帳を書こう」 学校でいつもは書くのが苦手な連絡帳も、iPad を使えば自分で写真に撮ったり、キーボードからメモしたりできるぞ。 Sponsored by フォナック・ジャパン株式会社 (FM 送信機、FM 受信機、線音源スピーカー) ざわついた環境での聞こえを改善する FM システムを、夏季プログラム期間に無償でお貸しいただきました。マイクでひろった先生の声を耳元で聞ける受信機や、教室の後ろでもクリアに聞こえるスピーカーを、小学生・高校生スカラーの授業に使わせていただきました。 17ページ #プログラム2 日目 8月 2日 木曜 10:00受付 12:00「iPad で勉強するためには?」iPad を勉強に使うには、どんな方法があるのか、自分で試しながら学びます。「音声読み上げ機能を使うといいよ」友だち同士で教え合います。読み方が分からない漢字だってへっちゃらだ。 13:00駒場第 1 キャンパスへ移動・昼食 お昼休みは、地図アプリを使いながら隣のキャンパスまで少し散歩します。大学の広い学食で大学生に混じりながらお昼を食べました。 14:00博物館見学 大学内には博物館もあります。博物館の中は撮影禁止だから写真の代わりに iPad でスケッチをしたり、メモしたり。展示に詳しいお兄さんのしてくれた、ちょっと難しい説明が IC レコーダーで録音できていたか、帰り道で確認してみます。 15:00「iPad でパワーアップ」 午前中に習った iPad を使った勉強法で、昨日チェックした不得意なところが、どれくらい克服できるかを試してみます。iPad でテストをしてみよう。 16:00まとめ Sponsored by オリンパス株式会社 (IC レコーダー) スカラー全員に IC レコーダーをご提供いただきました。手書きすることに抵抗のある小学生スカラーや肢体不自由のある高校生スカラーが活用しています。ノート替わりの録音や、日常のメモなど学習や生活に幅広く利用させていただいています。 Sponsored by ソフトバンクグループ (iPad, 携帯電話) 音読や手書きの苦手な子どもが学ぶためには、使いやすいテクノロジーが必要です。小学生スカラーの読み書きを補うタブレット端末を、ご提供いただいています。また夏季プログラム中の円滑なやり取りに携帯電話もお貸しいただきました。 18ページ #プログラム3 日目 8月 4日 土曜 10:00先端研クエスト! これまで学んだ機器の機能やアプリを使いこなして、みんなで力を合わせてミッションをクリアしながら、先端研の敷地を隅から隅まで探検します。翻訳機能を使って外国人研究者から情報収集したり、難しい漢字を調べたりしてヒントに近づきます。すべてのミッションをクリアして、すごい大きな風のトンネルのある実験室にたどり着きました!資料を写真に撮ったり、説明を録音したり、教室の外だって、学べるんだ! 12:00昼食 13:00ロボカップに挑戦 ロボット同士でサッカーするロボカップに挑みます。自分のアイディアをブロックを使ってコンセプトモデルで形にしてみよう。力作のマシンに、どんな工夫をしたのかをロボットクリエイター高橋智隆先生の前でプレゼンだ。 写真 高橋 智隆 ロボットクリエイター 15:00まとめ/クロージング 3 日間の DO-IT の夏季プログラムもいよいよ終わりです。DO-IT を支えてくれているたくさんの人の前で挨拶します。うれしいプレゼントも貰えました。 19ページ #夏季プログラムを終えて ■DO-IT でiPad を使えるようになってすごく楽しかったです 永福 太一 /小学 4 年  DO-IT で iPad を使えるようになって、すごく楽しかったです。クイックボイスは、録音した声があとで聞けるから便利です。それからカメラでスライドをうつして、明日の準備やメールの書き方をメモしました。僕は字を書くのにすごく時間がかかるし、時々自分でも読めない字になるので、声や写真で残せるとすごく便利で安心です。  家での勉強では、辞書と筆順辞典をよく使っています。インターネットで調べ物もしました。DO-ITが始まる前に、自己紹介の準備をする宿題がでました。僕は人前で話すのは恥ずかしいから困りました。話すことを全部クイックボイスでいれて、iPad にしゃべってもらって、それから、キーノートで僕の好きなものをまとめて紹介しました。ちゃんとできて、うれしかったです。  みんなの自己紹介はアニメーションや動画をいれていて、すごくおもしろかったです。あとでアニメーションの入れ方を教わりました。  最後の日に、高橋先生のロボットを見せてもらえてよかったです。話かけるとこたえるロピッド君や、ひもをのぼるエボルタ君がかわいかったし、すごいなと思いました。ロボットをつくる勉強もしてみたいなと思いました。 ■永福 由紀子(保護者)  「ひとつ新しいことを知るとさ、じゃあこれは?こっちはどうなの?って知りたいことがいっぱい増えちゃうんだよね。」目を輝かせて話す太一は、学ぶのが好きな子です。学校では読み書きや協調運動の苦手さから、自信を無くし、級友との関係に悩むことも多くなってきました。今回 DO-IT に参加させていただいて、素敵な仲間たちに会えたこと、iPad を使って自分の言葉を文字にし、相手の言葉を手元に残せるようになったことで、少しですが自信をつけ、前を向いて踏み出す力を得たようです。私もプログラムに参加させていただきましたが、保護者の皆さんとお話しできたことが、なにより大きかったと思 います。様々なつらさを抱えながらも、ゆったりしっかり子供と向き合い、行政や学校へ働きかけ、情報を集めてきた皆さんの話を聞いて、ここで疲れていてはいけない、私がやるべきことはまだたくさんあると感じました。今できることを探して、動いてみようと思います。そして、余裕を持って、子供達との時間を楽しんでいけたらと思います。先生方、ジュニアスカラーと保護者の皆さん今後もどうぞよろしくお願いします。 20ページ ■大人になったらどんなことをできるかいろいろ想像しました 小橋 海 /小学 5 年  DO-IT のプログラムに入れてすごく嬉しいです。  iPad があれば、漢字や算数を楽しく学べるのに、「何で全ての学校で使われていないのか」と思いました。iPad のおかげでずっと苦手だった漢字がもっと楽しく学べるようになって嬉しかったです。プログラムの途中で見学した Ebolta や Robbit というロ ボットもすごかったです。いつか自分のロボットを発明したり、大人になったらどんなことをできるかいろいろ想像しました。  プログラムで教えてもらったことをもっと出来るようになるように、これからもがんばって楽しく勉強していきたいと思います。DO-IT で勉強したとき、勉強ではなくて、遊ぶように思いました。これから、宿題を楽しくしようとおもいます。僕が一番気に入った時はロボットを作った時です。友達ができて大変嬉しいです。石の世界は、あまり大きくないかもしれないけれど、色んな石の色や形がすごかったです。31 アイスクリームやピザもおいしかったです。また来年にやることが楽しみです。 ■小橋 玲子(保護者)  得手不得手の差の激しい息子。得意な分野を伸ばして、苦手な分野をフォローしてあげたい。そんな夢や理想を抱きつつも、親として、息子をこれからどのように導いてあげたら良いのか、なかなか道が見えず苦しい日々でした。今回、中邑先生にお会いする機会をいただき、さらには DO-IT のプログラムに参加させていただくことが出来、暗くて長いトンネルの先に、やっとかすかな光が見えてきた、そんな気持ちです。息子は、プログラムで沢山のことを教えていただき、驚くほどの成長を見せてくれました。私が心から喜んでいるのを感じ取り、息子自身の自信にも繋がっていると思います。苦手だった漢字も、iPad を使えば、僕でもこんなに出来るようになる!と目を輝かせています。まだまだ先は長いですが、頂いたチャンスと、共に学べる仲間と共に、これからも諦めず、前進していけたらと思います。きめ細やかなご配慮でお指導下さった先生方に、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。 21ページ ■キーボードを使って文を作ったりテストを受けたりしたのは、学校とは違った 徳永 哲 /小学 5 年  DO-IT Japan 2012 で一番楽しかったのは、ロボットクリエイターの高橋さんの授業だった。エボルタくんや音声認識のできるロボットを見せてもらえて、すごくよかった。レゴでサッカーのできるロボットを作ることになって、ぼくは最初歩くロボットにしようと思ったが、時間がかかりすぎるので、タイヤで動く物に変えた。発表する直前になって、前輪が左右で独立して動くようにするのを忘れていたのに気づいて、急きょ前輪の部品を外した。発表した物と、写真を撮ったのが違った。  先生から泳ぐエボルタくんとエボルタくんの絵をもらった。家に帰ってエボルタくんをお風呂に浮かべて遊んだ。エボルタくんの絵は、絶対にほかの人にあげないで大事にしたい。  ジュニアスカラーのみんなで自己紹介したり、終わった後にあった交流会でいろいろな人と話したりした。ジュニアスカラーの全員と仲よくなって、とても楽しかった。  キーボードを使って文を作ったりテストを受けたりしたのは、学校とは違った。国語のテストの時は、iPad を使うと答えをタッチするだけで、とても早くできて楽だった。算数は割り算に電卓を使うと答えに余りが出ないから、紙を使って計算した方が楽だった。来る前にお母さんと予定を iPad のカレンダーに打ちこんでいたので、とてもわかりやすかった。家でも夏休みの宿題を忘れずにやるのに、リマインダーを使っている。総合学習のまとめに Keynote を使っているから、夏休みの宿題の発表でクラスのみんなに見せたい。DO-IT Japan に来年も参加して勉強したい。 ■徳永 真理子(保護者)  小学5年生の息子は書字が苦手で、集中力がなかなか持続しません。人一倍努力をしていますが、漢字の成績は未達成の「B」で、作文は原稿用紙1枚書くのに3日がかりという状態でした。最近は親の口述筆記で課題を提出することを始めましたが、モチベーションが上がらずに間に合わない時も多く、親子とも非常にストレスを感じていました。DO-ITJapan 小学生プログラムでは、支援機器で記録を取る方法を教えていただきました。早速、夏休みの制作物を写真に撮り、Keynote を使って研究課題をみずからまとめました。頭の中にあるイメージを形にするのが容易で、修正もすぐできます。大人に頼らずに「一人でできた」と、非常に自信を持った様子です。さらに、同じ困難を持つ子どもに会ったことや、その後のメールでの交流も息子にとって大きな支えになりました。より明るく前向きになった息子を見て、親も成長の喜びを感じております。障害のある子どもに対して「血の滲むような努力で克服を」と強いるのではなく、「テクノロジーによってエンパワメントされた個人でよい。合理的配慮を得られるように頑張ろう」という先生方のお話に大変励まされました。今までは書字だけで精一杯、提出物の完成度や推敲に気が回らなかった息子ですが、これからは少しずつそちらも意識がいくかと思います。将来技術者になるために勉強したいという思いを、これからも応援したいと考えています。 22ページ ■一番うれしかったのは、仲間に会えたことです 長沼 慧 /小学 4 年  はじめの自己紹介では、キーノートというアプリで発表しました。すごくきんちょうしたので、ボイスメモで録音した自分の声を使いましたが、うまくいってよかったです。  他にも iPad の使い方をいろいろ教えてもらいました。メモを書いたり、調べものをしたり、楽しく勉強ができそうです。  夏休みに出た読書感想文の宿題も iPad を使って考えてみました。えんぴつを使って書くよりも、よく考えられるし楽にできたと思います。それから、先端研クエストで大学の中を探検したり、博物館で石の展示を見せてもらったり、ワクワクすることばかりでした。  ロボットクリエイター高橋先生の授業では、ブロックでサッカーロボットを作りました。プレゼンもうまくいったし、とても楽しかったです。  僕が DO-IT Japan 2012 に参加して一番うれしかったのは、仲間に会えたことです。それから、食堂で食べたハンバーグ丼がおいしかったこと。またみんなで食べたいな。 ■長沼 晶子(保護者)  この度、DO-IT Japan 2012 のスカラーとして息子を選んでいただけましたことに深く感謝いたします。短期間ではありましたが、わが子がとても良い刺激を受け、成長していく過程を目にして、嬉しい驚きと共に「環境が人に与える影響の大きさ」を改めて実感した 3 日間でした。今回のプログラムを通して「周りに理解を求めるのであれば、まず自分について知ってもらう必要があるんだ」と、子ども自身が認識したことを心強く、また嬉しく思っています。今後も子どもが自分の特性について困難を感じていく場面は数多くあると思われます。けれど、その度に萎縮することなく自身をアピールすることが一番必要だと考えています。また、読み書きに困難を感じる学生たちの手助けをする iPad のようなツールを、学校での授業や試験においても、ノートや鉛筆のように利用出来る環境であって欲しいと思います。このプログラムに参加させていただいたことで、親子共に殻を破る手がかりを手に出来たと感じています。お世話になりました先生方、関係者の皆さま、そして、ご一緒させていただきました皆さま、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。 23ページ ■このシステム、学校で使えたらいいのにな 松谷 知直 /小学 5 年  僕は、DO-IT Japan 2012 小学生プログラムに参加しました。  iPad でテストをしたとき、ものすごく楽でした。なぜなら、読み上げてくれたので、楽でした。あと、書くのも楽でした。すごい楽でした。このシステム、学校で使えたらいいのにな。  あと、地図機能を使って食堂に行ったり、博物館に行ったりしました。ほかにも、メールの書き方、iPad で探検したり、楽しかったです。  いっぱい勉強しました。楽しかったです。いっぱい友達もできました。同じホテルに泊まったお友達と夜一緒に遊びました。みんなで電車のなかで話したりしました。またみんなに会うのが、楽しみです。 ■松谷 正弘(保護者)  DO-IT に参加させていただいて一番の収穫は、中邑先生を始めとして、多くの先生方、スカラーの保護者の皆さんなど「障害を持つ子どもたちが希望を持って勉強・就労ができる社会に変えていこう」と口だけでなく、心からそう願い、様々な方法で尽力されている方々と多く知り合えたことです。すべての障害を持った子どもたちが、健常の子どもたちと同じように、困り感を持たずに勉強に就労に取り組める時代はすぐには来ないと思います。だからこそ、私達はジュニアスカラーに選ばれた息子には、自分がリーダーになって、そんな社会を変えていかなければならない、と常々話しています。後に続くであろう、障害を持っていても、夢や希望を持っている子どもたちのためにも「時代が変わるのを待つ」のではなく、「自ら時代を変えていく」心意気で、親子共々、頑張っていきたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 24ページ ##BDO-IT Japan 秋季プログラム 秋季プログラムでは、過去に夏季プログラムを体験したスカラーや、すでに大学に進学している大学生リーダーたちが、協力企業へ訪問して実際に職業に関連した体験を積み、また専門的職業のトップランナーとして活躍しておられる方々と交流します。これらの経験を通じて、スカラーや大学生リーダーが社会の中での自分自身についての将来像を描き、準備を進める機会としています。 #企業訪問@ 富士通株式会社 9:40集合・受付 10:00公開講座「多様な人々の社会参加を支えるテクノロジー活用:DO-IT の経験から」 〜 How Technology can Help People with Diverse Abilities Fully Particoate in Socirty:Experiences from DO-IT 〜 米国 DO-IT の創立者である SherylBurgstahler 先生から、米国の障害のある人々は、これまでの米国の歴史においてどのように自立に向かっていったのか?高等教育での取り組みは?テクノロジーの活用のあり方は?といった話題について、DO-IT の 20 年に及ぶ経験に基づいたお話しを聞きました。 写真 Sheryl Burgstahler Ph.D. University of Washington/DO-IT Center 写真 森 淳一 富士通株式会社 統合マーケティン グ本部 総合デザインセンター 部長 写真 上田 義弘 富士通デザイン株式会社 代表取締役 社長 12:00ランチミーティング 大学生リーダー、スカラー、富士通社の方々、Burgstahler 先生、それに米国モンタナ大学の障害学生支援室でコーディネーターとして活躍しておられる渡部美香さんをお招きして、大学生リーダーやスカラーたちが関心を持っている話題について意見交換しながら楽しくランチを取りました。 25ページ 14:00多様性理解ワークショップ 東京大学先端科学技術研究センターと東京大学教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センターが共同開発している多様性理解プログラムに、スカラーおよび大学生リーダーが富士通社の方々とともに参加しました。 多様性理解プログラムとは: これからの社会では、様々な特性や背景を持った人々が十分に能力を発揮できるインクルーシヴな環境を構築することが重要な課題です。企業においても、あらゆる人々の能力を活かすことのできる公正で活力のある職場環境を実現することが求められています。では、多様性を互いに認め合い、その中から新たな価値を創出していくために、私たちには何が必要になるのでしょうか?いくつかのゲームに参加することを通して、参加者とともに多様性とは何かについての気づきを深めていくためのプログラムです。 16:00障害理解ミニセミナー 東京大学先端科学技術研究センター:近藤武夫、熊谷晋一郎 東京大学教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センター:星加良司、飯野由里子 東京大学で障害を取り巻く困難さについて、様々な視点から研究や実践を行っている研究者 4 名の対談を軸として、「障害とは何か」についての理解と議論を深めました。 写真 塩野 典子 富士通株式会社 ダイバーシティ推進室 室長 写真 豊田 建 富士通株式会社 人材採用センター センター長 17:00クロージング・解散 #DO-IT Japan 海外研修  DO-IT Japan では、文化やライフスタイルを含めた海外の多様な価値観や社会制度、障害のある人々への支援のあり方を実際に体感する経験を得るため、若干名の大学生リーダーを対象とした海外研修プログラムを行っています。2012 年の海外研修プログラムでは、山ア康彬さんが選ばれ、米国カリフォルニア州ロサンゼルスおよびサンディエゴに 2 月 27 日から 3 月 4 日まで滞在しました。  ロサンゼルスやサンディエゴ市街、テーマパーク等でのアクセシビリティ調査、南カリフォルニア大学の障害学生支援室の訪問、カリフォルニア大学ノースリッジ校で行われる CSUN カンファレンスへの参加など、国際的に歴史や状況の異なる国での障害のある人々の暮らしについて学びと考えを深め、また障害当事者や支援に関わる人々との交流を広げました。 26ページ #企業訪問A 株式会社資生堂 ライフクオリティービューティーセンター 化粧の持つ力と、社会的な自己表現 人間の歴史の中で、現代に至るまでの化粧という行為の文化的な意味づけの変遷や、化粧することが個人に対して与える特別な力、そして化粧に関わる資生堂社の現在の広範な取り組みを学びました。さらに、化粧について卓越した技術を持つプロフェッショナルの方々から、実際に化粧と身だしなみについての指導を受けることで、身だしなみを整えることが持っている意味や、社会の中での自分自身を表現していくことについて考えを深めました。 写真 浅田 寛信 株式会社資生堂 CSR 部 参与 #企業訪問A 株式会社マガジンハウス 自分だけの経験を得て、意思を貫く 西田さんが若き日から現在に至るまでに、ブルータスという雑誌編集の仕事を通じて出会って来られた、自らチャレンジし果敢に出かけていくことだけでしか得ることができない知識と経験、失敗や成功について、その豊かなご経験をフランクにお話しいただきました。そうした経験から得られたこだわりや信念を、雑誌という多数の人々へ向けた表現の形へまとめ上げていく過程とその実際についても、詳細に教えていただきました。 写真 西田 善太 株式会社マガジンハウス BRUTUS 誌 編集長 27ページ #重度重複障害児向けプログラム 障害の重い子どもたちがテクノロジーを用いてアクティビティを体験する  10 月 5 日〜 10 月 7 日までの 3 日間、キッザニア東京にて「重度肢体不自由・重複障害のある子どものための ICT 活動体験プログラム」を行いました。プログラムには、脳性まひや脊髄性筋萎縮症などの障害を持つ、3 歳から 15 歳までの子どもたち16 名とその家族(合計 64 名)が参加し、子どもたちが実際にOAK(Observation and Access with Kinect)を使ってわずかな指や顔の動きなどで、扇風機やライトの操作に挑戦しました。  OAK とは、日本マイクロソフト株式会社の入力デバイス「キネクト for ウインドウズ」を応用して、東京大学先端科学技術研究センターと日本マイクロソフト株式会社が開発した、身振りや音声などで家電などの機器を操作できる支援ソフトです。重度の障害を持つ人では任意で動かせる部位がとても限られている場合があるため、これまでの技術では動きを検出することが難しく、本人の意思で機械やパソコンを操作することも難しいという問題がありました。キネクトに搭載したカメラは微細な動きを検知できるので、口の開閉や手の動きなどを検出して操作することができるようになります。  また、参加者に対し、重度障害児とのコミュニケーションに関するセミナーや個別相談も行いました。体験の前後には、家族でキッザニア東京内でお仕事体験をし、楽しみました。  DO-IT Japan ではこのプログラムを通して、今までスイッチ遊びなどがうまくいかなかった子ども達に、OAK を使って子どもたちが自らの意思でスイッチの ON/OFF することで、自立して遊びを体験してもらうこと、また、このようなツールを使うことによって、娯楽やコミュニケーションの可能性を広げてもらうことを目指しています。 #プログラムを体験して ■保護者 1  素晴らしい機会に触れることができ、とても未来へ期待ができました。自分たちの憶測が頼りないもので、しかし一体キネクトでワンスイッチ以上はどんなことが出来るのだ?移動中や移動先といったことにも対応できるのか?という点が分かりませんでした。  今回そのあたりを感想に書きましたが、重度重複障害で動かせれないスイッチがゆえに意思発信の機会が奪われていた方たちにとってほんとうに革新的な技術開発だと感じています。どうか、これからもこうした末端に追いやられがちな障害ある方が、IT で武装し堂々と社会の中央へ入っていけるようお力添えをよろしくお願いいたします。 ■保護者 2 こうしたシステムや機器がより使いやすく、身近になってくれる事は障害をもつ子供達にとって、確実に大きな助けになっていくだろうと言う期待が持てました。  私どもの娘のように、まだまだ意思疎通や因果関係の把握などができていない子どもにとってはやはり、もっとじっくりと時間をかけて体験していく事が必要ですね・・・。体験させて頂いたエアースイッチは、従来の『もの』として存在するスイッチの不便さを解消してくれますが、同時に、実際には見えず、触れられないもの(場所)をスイッチとして理解しなければならず、体験の際には、子どもの興味や状態を考慮する必要があると感じました。また、モーションヒストリーも興味深く拝見しました。娘は、最近、手足や頭、顔など、いろいろな部位の動きが大きくなってきているように思えるので、時間をかけて試したら、新たな発見もあるかも知れません。  是非、今後も機会があれば、体験会などに参加させて頂きたいと思います。ありがとうございました。 28ページ ##C一般公開シンポジウム 一般公開シンポジウムでは、毎年、その一年での日本国内の障害学生支援に関する取り組みの現状に関する情報共有と、DO-IT Japan がスカラーと共に、その取り組みの中でこれから進めていこうとしている、今後の障害のある子どもたちの社会進出にとって重要となるテーマについて聴衆と共有し、議論を深めることを目的として開催されています。 #テーマT【高等教育における障害学生支援の最新情報 2012】 「全国の高等教育機関における障害学生に関する実態調査・結果報告」  障害学生の高等教育進学の実態に関して、日本学生支援機構により、毎年国内のすべての高等教育機関を対象に障害学生の実態調査が行われています。田中久仁彦課長から、2011 年に行われた調査の詳細な結果が発表されました。今年の大きな話題として、いよいよ日本の障害のある学生数が 1 万人を超えたことが挙げられます。障害学生の大学進学は 1 つのマイルストーンに至りました。しかし、障害学生の全学生に対する比率で考えると、米国の約 10%に対して、約 0.3%と、未だ低い比率に留まっています。また、日本の障害学生のうち、支援を受けている学生は 6 割程度です。障害学生数は毎年千人単位で増えているように見えますが、それらは発達障害(そのうち特に高機能自閉症等のある学生)により占められています。国連の権利条約批准へ向けて、高等教育機関での障害学生に対する合理的配慮が今後進む中、この統計結果はどのように変わっていくでしょうか。 写真 田中 久仁彦 独立行政法人日本学生支援機構 学生生活部 特別支援課 課長 「大学入試センター試験における障害者特別措置の現状と今後」  近年の大学入試センター試験における障害者への特別措置における大きな変革は、発達障害(LD やADHD、自閉症スペクトラムを含む)のある受験生に対する特別措置がつくられたことです。別室受験や試験時間の延長など、いくつかの措置(配慮)が提供されるようになりました。また、そうした配慮は、しっかりとした専門家による障害の説明や、高校までに実際に支援を受けており、それがセンター試験での配慮と一貫性があることといった根拠を明示することを求められます。上野特任教授から、特別措置申請の実際について解説されました。また、今年の特別措置全体での大きな進展として、これまで 12 月に受験生に届けられていた措置決定通知が、早期に申し込んだ人に限り、9 月初旬に届けられるようになりました。障害のある受験生は配慮内容がぎりぎりまで未定のまま不安に過ごしていましたが、今年からそれが早期に決まることで、受験準備にこれまでより多くの時間をかけることができるようになりました。 写真 上野 一彦 独立行政法人大学入試センター 特任教授 29ページ #テーマU【試験の本質を考える:書字障害の生徒に漢字の書き取りの出題は適切か?】 「国語における学習指導要領が達成を求める教育目標の本質とは」  障害のある生徒への支援や配慮を考えるとき、障害があるため他の子どもたちと同じ方法では参加が難しい部分に、どの程度の配慮を行うかは大きなポイントになります。その際、学習指導要領に達成すべきと書かれていることを理解し、本質的でない部分は柔軟に判断して配慮を行う必要があります。例えば、障害のため漢字の書けないディスレクシアのある生徒に、漢字を書き順やとめはねなど、間違いなく書く練習にこだわることがどこまで重要なのでしょうか。西辻視学官からは、学校現場では読み書き評価が厳しすぎる傾向があり、学習指導要領や文化庁の基準と異なっていることなどが示されました(ある一画の文字の角度や他の画とのバランスから、テストで×をつける先生がおられる、など)。指導と評価を分け、本質的な理解ができていると考えられる解答に対しては、柔軟に評価を行うことの必要性について、豊かな実例を元に示されました。会場からは、そのような理念に基づいて指導要領が作られていることと教育現場とのギャップに驚きの声と、このことを知ることができたことに快哉の拍手が送られました。 写真 西辻 正副 文部科学省 初等中等教育局 視学官 「さまざまな障害のある学生における読み書きの困難と代替手段」  障害学生が実際にテクノロジー利用などの配慮を受けて試験を受けたくても、それが認められない現状があります。その理由としては、「漢字変換プログラムなどのテクノロジーが不正に利用されているかもしれず、そうではないことが他の受験生に説明できない」といったものがあります。障害のある受験生が、正々堂々と不正がない状況でテクノロジーを用いて受験できるよう、パソコン利用中の漢字変換を含むすべての記録を自動的に取り、不正がないことを大学側に示すことのできる「Lime」というソフトウェアを東大先端研 DO-IT Japan と日本マイクロソフト株式会社が「学習における合理的配慮研究アライアンス DO-ITRaRa」というプロジェクトの下に共同開発し、無償公開しました。このソフトの利用の実際について、受験時にワープロなどのテクノロジーを使ったことのあるスカラーの経験談とともに、情報提供されました。 #テーマV【産学官連携でつくる配慮ある社会】 「配慮ある社会への取り組み」  DO-IT Japan の活動はさまざまな人々の支援と、社会の多様性を広げることに向けた思いに支えられています。日本マイクロソフト株式会社、富士通株式会社の皆さんからは、DO-IT Japan の設立時から共催企業として継続的にご支援をいただき、2008 年からはソフトバンクグループの皆さんに新たな共催企業としてバックアップしていただき、そして今年も新たに KCJ GROUP 株式会社(キッザニアを運営)の皆さんに共催企業にご参加いただきました。DO-IT Japan はすべての共催企業と、DO-IT の活動を中心に、障害のある子どもたちや大学生の社会参加を広げる様々な取り組みを、年間を通じて継続的に行ってきました。また、今年 6 月、文科省高等教育局ではじめて「障害」と名の付いた委員会が生まれ、障害学生への合理的配慮についての検討が始まり、そのメンバーとして DO-IT Japan も参加することになり、今後の高等教育での合理的配慮の具体的なあり方について、高等教育局の皆さんともともに検討を始めました。  2007 年から 2011 年までの 5 年間をともに駆け抜け、6 年目からの新たなステージに向かう DO-IT Japan とその共催企業・団体の皆さんにお集まりいただき、これからの多様性に開かれた、配慮ある社会への取り組みについて、力強いメッセージをいただきました。 写真 加治佐 俊一 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 写真 加藤 晋平 ソフトバンクグループ 株式会社エデュアス取締役 写真 油井 元太郎 KCJ GROUP 株式会社 関連事業本部 教育開発部長 写真 板東 久美子 文部科学省高等教育局 局長 写真 M田 純一 東京大学 総長 写真 藤田 正美 富士通株式会社 副社長 写真 中野 義昭 東京大学 先端科学技術研究センター所長 30ページ ##DDO-IT Japan の概要と未来への展望 DO-IT Japan は、障害や病気による困難を抱えている若者たちを支援します。 DO-IT Japan では、2007 年度から、大学進学を目指している、障害や病気による困難を抱える高校生・高卒者に、パソコンとそれぞれの困難に応じた支援機器・ソフトを提供し、大学進学を支援してきました。さらに 2010 年からは大学生向けプログラムが、2011 年からは読み書き障害をもつ小学生向けプログラムが新たに始まりました。 DO-IT は、障害や病気による困難を抱える若者のライフコースに沿ってプログラムを用意し、ICT 活用や大学体験、社会体験等を通じて、次世代の社会を担うリーダーを育成していきます。 #障害のある若者の大学進学をめぐる状況  障害学生支援の進んだアメリカと比較すると、大学などの高等教育機関における日本の障害学生数は非常に少ないといえます(図 1)。現在のところ、日本では障害をもった若者たちが大学などへの進学を希望していても、適切な配慮が得られずに進学が阻まれる「入口の壁」の存在があると考えられます。  入試の壁のひとつが、受験における配慮申請です。DO-IT Japan では 2007 年から、大学受験における配慮申請について、その合理性を示すエビデンスを準備する活動を障害学生と共に行なってきました。そして活動当初に比べ少しずつ大学の門戸が広がってきました。図 2 は 2011 年度、2012年度の DO-IT Japan での配慮申請の実例を示しています。  しかし、現状では合理性に関する議論は十分に行われないまま、前例がないという理由で申請が却下されるケースも存在します。DO-IT Japan は若者たちと共に合理性に対するエビデンスを示すことで、今後も既存の大学入試制度に挑んでいきます。 図 1:アメリカと日本における    全学生に対する障害学生の割合アメリカの障害学生 11% アメリカの障害学生 [出典]米国会計検査院(2009) 0.32% 日本の障害学生 [出典]日本学生支援機構(2012) #図 2:発達障害の学生の配慮申請の実例 発達障害(書字障害)により紙とペンでの小論文執筆が困難なため、ワープロでの作成と印刷での提出を申請。 ↓ 志望大学より、大学側が用意したワープロとプリンタによる試験会場での答案作成と印字による提出が認められ、無事合格。 高校入試で発達障害(読み書き障害)により、代読と代筆の配慮があれば試験で良い点数を取れるが、紙の試験では読んで解答することが難しいため、代読・代筆の配慮を申請。↓ 中学校ですでに代読の配慮が行われていたことなどを根拠として代読が認められ、無事合格。 #DO-IT Japan が描く未来 DO-IT Japan の活動を通じた事例とエビデンスの収集 障害者雇用の上昇 ウェブサイトおよびセミナーを通じた学生への情報発信と支援 2006年 障害学生在籍率/0.16% 約5000人 2007年 DO-ITスカラー参加人数 12 2008年 DO-ITスカラー参加人数 23 2009年 DO-ITスカラー参加人数 32 2010年 DO-ITスカラー参加人数 46 2011年 DO-ITスカラー参加人数 62 2012年 DO-ITスカラー参加人数 75 障害学生在籍率 0.32% 約 1万人 2015年 DO-IT スカラー 約 100 人 障害学生在籍率 0.5% 約 1万 5千人 2020年 DO-IT スカラー 約 150 人 障害学生在籍率 2.0% 約 6 万人 障害支援学の体系化 障害者雇用の上昇 バリアフリー社会の実現 31ページ #DO-IT Japan 2012 年度データ ■参加者の障害内訳 盲ろう 1 人 肢体不自由 33 人 発達障害 27 人 視覚障害 5 人 聴覚障害 6 人 高次脳機能障害 3 人 ■参加者の出身地 2012年度 青森,千葉, 埼玉, 東京, 奈良,広島,島根,愛媛,香川, 佐賀, 沖縄 2007年〜2011年度北海道, 岩手, 宮城, 山形,福島,埼玉, 群馬,長野, 茨城,静岡,愛知,石川,福井,滋賀,京都,和歌山,兵庫,岡山,鳥取,山口,福岡, 熊本 ■参加者における大学進学者総数 2007年度 参加者総数 12 大学進学者総数 0 2008年度 参加者総数 23 大学進学者総数 3 2009年度 参加者総数 32 大学進学者総数 9 2010年度 参加者総数 46 大学進学者総数 20 2011年度 参加者総数 62 大学進学者総数 30 2012年度 参加者総数 75 大学進学者総数 36 ■メディア掲載 ・読売新聞(2012/2/8) ・朝日新聞 夕刊(2012/2/27) ・日本経済新聞 夕刊(2012/3/30) ・教育家庭新聞(2012/3/5、5/7、9/3、11/5) .... その他多数 #DO-IT Japan への参加の流れ ■2月頃 スカラー(高校生・高卒者)、 ジュニアスカラー(小学生)募集発表 DO-IT Japan ウェブサイト(http://doit-japan.org/) やチラシ等で募集発表します。参加希望者はウェブサイトから応募書類をダウンロードしてください。 ■4月下旬〜5月上旬 スカラー・ジュニアスカラー応募期間 作成した応募書類を DO-IT Japan 事務局へ郵送してください。 ■5月上旬 第一次選考(書類選考) 応募書類に基づき、審査委員会によって参加候補者を選考します。 ■5月中旬〜6月上旬 第二次選考(面接) 第一次選考を通過した参加者と面接を行い、参加最終選考します。 ■6月上旬〜 参加準備オンラインミーティング パソコンや IC レコーダー等の機材と、それぞれの障害にあわせた支援機器を自宅へお送りします。その後、インターネットを通じ、夏季プログラムへ参加するための準備ミーティングを行います。 ■8月上旬 夏期プログラムへの参加 ■8月中旬以降 オンラインメンタリングへの参加 年間を通じて、メールやチャットミーティングを通じて様々なテーマについて専門家に相談したり、仲間と議論したりします 32ページ 裏表紙 DO-IT2012 #主催 DO-IT Japan,東京大学先端科学技術研究センター #共催 KCJ GROUP 株式会社, ソフトバンクグループ(株式会社エデュアス,ソフトバンクモバイル株式会社),日本マイクロソフト株式会社,富士通株式会社 #協力 アジアがんフォーラム, 沖電気工業株式会社,オリンパス株式会社,株式会社京王プラザホテル,株式会社資生堂, 株式会社トヨタレンタリース東京,株式会社マガジンハウス,日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan), フォナック・ジャパン株式会社 #後援 厚生労働省,文部科学省(五十音順) #お問い合わせ DO-IT Japan事務局 153-8904 東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 03-5452-5064(TEL&FAX) info@doit-japan.org http://doit-japan.org/ 以上