DO-IT Japan 2013 Report Disabilities, Opportunities, Internetworking, and Technology Japan 【見出し記号の凡例】 見出しレベルの大きいものから小さいものの順に、次の記号を使用しています。 ## 見出しレベル1 #  見出しレベル2 ■ 見出しレベル3 □ 見出しレベル4 【見出し記号の凡例 終わり】 1ページ 表紙 DO-IT 2013 2ページ ##DO-IT Japan 2013 レポート Diversity, Opportunities, Internetworking, and Technology #目次 DO-IT Japan がリーダーに期待するもの ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 @ 小学生・中学生向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4   夏季プログラムを終えて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 A 高校生・高卒者向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14   夏季プログラムを終えて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 B キネクト OAK プログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 C 秋季プログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 D 一般公開シンポジウム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 E DO-IT Japan の概要と未来への展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 3ページ ##DO-IT Japan がリーダーに期待するもの  DO-IT は高等教育機関への進学を支援し、障害のあるリーダーを育成するプログラムとしてスタートした。そのために、スカラーたちはいわゆる勉強のできる子どもたちが多い。そのスカラー達はこれまで様々な障害間の交流を通じて多様性の理解を深めてきており、自分の障害の事だけを強く主張するのではなく、様々な障害間で起こるコンフリクトの存在を知り、新しいバリアフリー社会とは何かについて日頃から議論しあっている。その一方で、スカラーたちと同じ障害を有していても知的障害を合併する子どもたちは残念ながら DO-IT には参加出来ていない。そのためか DO-IT は勉強のできる子どもたちの活動ですねと誤解されることも多い。それはとても残念な事である。我々としては知的障害も含めすべての困難に直面する人たちにとって学び・生活しやすい社会をこのスカラーたちと一緒に考えている。  今年、障害者差別解消法が成立し、合理的配慮の提供が義務付けられるなど、障害者の権利擁護の面では大きな前進があった。スカラーとの議論の中では知的障害を合併する人たちの権利擁護についても話題がのぼる。DO-IT に今は参加できていない人たちの代弁者になるべくスカラーたちが育ってきているのを感じる。  一方、DO-IT スカラーの中には大学入学という目標を達成し、あるいは、就職して一般企業で働くようになると DO-IT と疎遠になる者も多い。スカラーすべてが DO-IT や障害者のリーダーである必要はなく、いつか彼らが会社や社会のリーダーとして、その組織の中で困難を抱えるスタッフを思いやり、引っ張っていけばいいと思っている。  DO-IT は強固な集団ではなく、生き方も参加の仕方も多様な緩やかな集合体である。そういった視点が与えられ議論が湧きおこる場として今後もあり続けていきたい。1つの方向に向かって旗を振ることなく、様々な人の考えを受けとめ思考することのできる新しいリーダーを育てる場でありたい。 DO-IT Japan ディレクター 中邑 賢龍 4ページ ##@小学生・中学生向けプログラム  2011 年からスタートした小学生プログラムは、スカラーの成長に伴って今年から「小中学生プログラム」となりました。読み書きが苦手なだけで「学びたいのに学びにくい」子どもたちに対して、テクノロジーを活用した学習方法を学ぶための様々なプログラムが展開されました。子どもの能力とテクノロジーの力とのハイブリッドで、子どもたちはどのように変わっていくのでしょうか? 挿絵 11 ジュニアスカラー渡邊幸音さんがデザインした DO-IT 小・中学生プログラムの公式キャラクター。 名前はSuper スネイク、Rcast ラビット、DO-IT ドラゴンです。 #プログラム1日目8月5日 月曜 10:20 ガイダンス DO-IT ディレクターの中邑先生から DO-ITがどんなプログラムなのか説明をしてもらい、さっそくテクノロジーを体験しました。人数の多いざわざわした教室でも、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンや FM 補聴器があれば先生の声がよく聞こえます。 自分の興味を形にしよう(ラビットスカラー、ドラゴンスカラー) 11:00 未来の授業体験 勉強に役立つ、色々なテクノロジーを体験しました。タブレット端末を使えば、苦手な読み書きもこんなに楽になる!どんな場面でどんな機能が役に立つのか学び、使い方を練習していきました。 12:00 お昼休み 自己紹介タイム! お昼ご飯を食べてから、これから一緒に活動する仲間たちの自己紹介をしました。タブレット端末でプレゼンテーションをしたり、事前に録画したビデオを流したりと、思い思いの方法で自分をアピールしてくれました。 13:30 テストの答えにくいところってどんなところ? いつもの紙と鉛筆でテストを受けました。テストのどんなところが答えにくいのかがわかると、どんなテクノロジーがあれば答えやすいのかがわかってきます。今日の結果をもとに、翌日のタブレット端末を使ったテストが用意されます。 14:30 ハイパープレゼンテーション in DO-IT Japan ジュニアスカラー 6 名が、「面白いし使える!アプリ 3 連発」、「DO-IT 公式キャラクター」、「昆虫標本の作り方」、「アメリカ旅行について」、「太巻き」、「インコ」など独自のテーマでプレゼンテーションをしました。するどい質問もたくさん出て、大いに盛り上がりました。 Sponsored by フォナック・ジャパン株式会社 (FM 送信機、FM 受信機、線音源スピーカー) ざわついた環境での聞こえを改善する FM システムを、夏季プログラム期間に無償でお貸しいただきました。マイクでひろった先生の声を耳元で聞ける受信機や、教室の後ろでもクリアに聞こえるスピーカーを、小学生・高校生スカラーの授業に使わせていただきました。 15:00 中学生スカラー マイクロソフト訪問 中学生は高校生と一緒にマイクロソフト社に訪問。タブレット端末で地図を開いたり、電車の乗継を調べたりとテクノロジーを駆使して子ども達だけの力で移動することができました。マイクロソフト社では、パソコンを使って、やるべきことを管理する技術を学びました。 講義1「やるべきことを管理する技術を学ぶ」 講義2「IT が拓く未来の生活」 5ページ #プログラム2 日目8月6日 火曜 9:40 大学生の授業を受けてみよう!「宇宙利用を変える電気推進ロケット技術」 高校生と一緒に大学の先生の講義体験に参加しました。タブレット端末とICレコーダーを使えば、メモも上手にとれます。あの人工衛星「はやぶさ」の帰還に大きく関わったロケット技術のお話しに、みんな興味津々。積極的に質問もできました。 大学の授業のふりかえり 大事なことをおさえよう 12:00 食堂でお昼休み 先端研内の食堂で、職員や研究員の方にまじってお昼を食べました。 13:10 自分の力を全部出せるテスト 昨日のテストの結果を受けて、それぞれのスカラーがタブレット端末で問題を読み上げられたり、キーボードで答えを入力できたりするテストを体験しました。テクノロジーを使うと点数が高くなるスカラーが何人もいました。 14:20 先端研クエスト! 先端研内で巨大なたまごを発見したという情報が!?しかし、そのたまごは行方不明になってしまったのです。ジュニアスカラー達はこれまで学んだテクノロジーを駆使して、たまごを探しに出かけます。先端研に散りばめられたヒントを手掛かりに、録音、マッピングソフト、写真など習った機能を上手に使って、たまごを探し出すことに成功!巨大なたまごは、実は大きなダチョウのたまごでした。お味は明日のお楽しみ…! Sponsored by ソフトバンクグループ (iPad, 携帯電話) 音読や手書きの苦手な子どもが学ぶためには、使いやすいテクノロジーが必要です。小学生スカラーの読み書きを補うタブレット端末を、ご提供いただいています。また夏季プログラム中の円滑なやり取りに携帯電話もお貸しいただきました。 Sponsored by オリンパス株式会社 (IC レコーダー) スカラー全員に IC レコーダーをご提供いただきました。手書きすることに抵抗のある小学生スカラーや肢体不自由のある高校生スカラーが活用しています。ノート替わりの録音や、日常のメモなど学習や生活に幅広く利用させていただいています。 6ページ #プログラム3日目8月7日 水曜 10:00 自分の苦手と向きあおう 先端研特任講師の熊谷晋一郎先生による当事者研究の授業を受けました。苦手なことについて話すのは大変なことですが、一人が「実は…」と話し始めると、「ぼくも」「わたしも」という声がたくさんあがりました。「自分だけじゃなかったんだ」とわかったことが、スカラー達の大きな収穫になったようです。 11:00 高校生プログラムに合流 討論会「アドボケイト!〜自己の権利を擁護せよ〜」 高校生プログラムに合流して、入試の時に受けたい配慮について提案しました。ジュニアスカラーからも、高校生スカラーに負けないくらい鋭い意見が挙げられました。 12:00 昼食「たまごパーティー」 「先端研クエスト」で無事発見したたまごを使ってたまごパーティー!クレープにパンケーキ、オムレツに巨大ゆでたまご。みんなで力を合わせて探し出したたまごの味は格別です。 13:15 頭と道具の使い方ワークショップ プロダクトデザイナーで先端研の特任助教である神原秀夫先生のワークショップです。出されたお題は、「定規を使わないでものの長さを測る」というもの。用意されたのは、パスタやまるい磁石、鉛筆やアルミホイルなど身の回りにあるふつうのものばかりです。これを使ってどうやって長さをはかるのか…自分の頭もフル回転させると、テクノロジーの力が活かされます。 写真 神原 秀夫 プロダクトデザイナー 15:20 修了証授与式 3日間の夏季プログラムもいよいよ終了です。DO-IT を支えてくださるたくさんの方の前でご挨拶して、それぞれに修了証が授与されました。 16:00 まとめ・懇親会 7ページ #夏季プログラムを終えて ■DO-IT が学校だったらいいと思いました。甲斐 潤樹 /小学 3 年  ぼくは、夏休みに DO-IT に参加しました。ドキドキしたけど、すぐに大丈夫だと思いました。なぜなら、先生が教室の外からでも先生の声が聞こえるイヤホン(アイセンス)とノイズキャンセリングヘッドフォンをすぐに貸してくれたからです。部屋に入れなくても聞こえるので、安心しました。  ぼくは苦手なことがたくさんあって、嫌になることがあったけど、大丈夫だとわかりました。助けてくれる方法がたくさんあるからです。iPad は読めない時に読み上げてくるし、わからないことは辞書で自分で調べられます。カメラを使えば、黒板も写せます。  それに、IC レコーダーはメモする時や、聞き取れない時に何回も聞けます。ノイズキャンセリングヘッドフォンとアイセンスを使えば、中の人と同じ話が聞けます。カメレコを使えば、お母さんと勉強しなくても一人でできるので、嬉しいです。お母さんも嬉しいです。それから、ぼくは字を大きくした方がわかりやすいと気づきました。 みんなとダチョウの卵を見つけて食べたのも、楽しかったです。ダチョウの卵を見つける時、大きいお兄さんが iPad を上手に使ってすごいと思いました。僕もあんな風になりたいです。ダチョウの卵をゆで卵にしたけど、僕ならうずらの目玉焼きの隣で目玉焼きにすると思います。  DO-IT が学校だったらいいと思いました。なぜなら僕もみんなと一緒にできるからです。それに、DO-IT は、僕のことをわかってくれるお友達がいました。うれしかったです。 ■甲斐 真澄(保護者)  好奇心旺盛で知りたがり、興味を持てばどこまでも探究する…学ぶことの大好きな潤樹ですが、学年が上がるにつれ努力だけでは乗り越えることの難しい壁を感じるようになってきました。  今回 DO-IT に参加させていただけると決まった時、嬉しい反面、初めてのことに強い不安感を示し、自分から行動することが苦手な潤樹にジュニアスカラーが務まるのか不安もありました。しかし、DO-IT での3日間の彼は、キラキラ目を輝かせてプログラムに参加し、とても頼もしく、大きく成長することができました。同じように困難を持ちながらも明るく前向きに楽しむジュニアスカラーに刺激され多くのことを学び、苦手なことはできる方法で補えばよい、助けてくれる道具や人はたくさんだということを知り、「僕はできる。大丈夫。」と、自信満々の笑顔を見せました。また、熱心な先生方や同じような思いの保護者の皆様とお話しする中で、私自身も何か殻を破るきっかけができた気がします。  楽しい3日間を本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。 8ページ ■今までの作文は 3 行しか書けなかったのに作文用紙 3 枚くらい書けました菊田 有すけ/小学 5 年  DO-IT に始めて参加してすごく良かったと思います。  はじめは、不安で教室の中に入れなくてフード付きバスタオルをかぶって外にいました。教室の外にいても中の話しが聞こえる小さな機械を付けてもらいました。教室の外で先生の話しを聞いているうちに不安じゃなくなってすぐに教室の中に入ることが出来ました。中に入ってみるとすごく楽しくてわくわくしました。  その日は IC レコーダーと iPad の使い方を習いました。僕の一番楽しかったことは、先端研クエストでの機械とのだるまさんが転んだと食堂での食事です。食堂での食事ではみんなと困っていることを相談し合ったり、勉強に役立つアプリを教えてもらいました。  DO-IT が終わってすぐに DO-IT で習ったことが役に立ちました。作文を書くときにマインドマップを書いてから iPad で下書きを書きます。それを見ながら書くと、今までの作文は 3 行しか書けなかったのに作文用紙 3 枚くらい書けました。 ■菊田 史子(保護者)  アスペルガー症候群で書字に大きな困難を抱え苦悩する息子の姿を傍らで毎日見続けてきました。学校は胸いっぱいに夢を育む場所だと思ってきました。でも現行の教育制度の中で、書けない息子は潰れてしまう。好きな物理や数学を口頭のみで個別指導してもらうようにすると、彼の興味はますます大学へと広がりました。海外の学校を考えるべきか。藁をも掴む思いで DO-IT2013 に応募しました。  DO-IT で息子は 16 人の仲間に出会いました。同じ困難を抱え、日々不安感と戦い、そして全員が“空気読めない!”を自認する。突出した個性が煌く素晴らしき仲間たちです!  iPad で作文を書くことを覚えた息子は生まれて初めて作文用紙 3 枚の感想文を書きました。いつも思考が行き詰まって作文ができなかったのは手で書いていたからだと気づきました。  修了式では高校生スカラーの深い思考に胸を打たれました。神様が与えた試練に挑む日々が彼らの思考をこれほど深く磨いてきたかと思うと胸が詰まりました。同時に前進しようとする彼らの意志の力強さに眩しい光を感じました。DO-ITは自力で途を切り拓く術を学ぶところ。この国に生きる大人の責任として彼らを全力で応援していきたいと思います。 9ページ ■自分と同じ様な苦手さを持った友達がいっぱいいるとわかってとても嬉しかった 嵯峨 日向子 /小学 6 年  プログラム参加中テストを受けました。タブレットを使わないでやるテストとタブレットを使ってやるテストとでは、タブレットを使ってやるテストのほうがやりやすかったです。プログラムには、先端研クエストというものもありました。大きなダチョウの卵を割ったり出来てとても面白かったです。でも、ライトで、割る部分を探しながらやったり、からを中に入れない用にやらなくてはならなかったのでとても大変でした。  1番楽しかったのは、未来の授業体験でした。理由は、いろんな道具を使ったり、見たりできたからです。初めて知った事は、自分と同じ様な苦手さを持った友達がいっぱいいるということで、それがわかってとても嬉しかったです。アプリの中には、声で録音す るアプリもあるのでその様なアプリを使って、学習に役立てられる様に、頑張りたいと思います。 ■嵯峨 聡子(保護者)  いつも元気でおしゃべりな娘が、学年が上がるにつれ、学校で「あれが出来ない、これも出来ない」と言われるようになりました。字も上手く書けず、絵や工作も運動も苦手。教室ではすぐ思いつくまま発言してしまう。彼女のノートには、先生から「読めるように書きましょう。」と何度も赤字で書かれていました。どうしてあげるのが良いのか何年も悩み続け、なんとなく後ろ向きに進んでいくような気がしました。  この夏 DO-IT に参加させていただき、iPad をはじめ、色々なツールが学習の手助けをしてくれることを教えていただきました。そしてなによりも娘自身が、同じように大変さを感じている仲間がたくさんいることにとても「ほっ」とできた事が、私は大変嬉しく、素敵な出会いをいただけたと思っております。進学にあたり、これからいくつもの壁にぶつかる事を覚悟しておりますが、「わたしはこんな事できるんだよ!」と、そしてこれから続くみんなに「こんな事もできるよ!」と自信をもって伝えていけるスカラーに成長していって欲しいと思います。  先生方、保護者の皆様、これからもお力をお借りするかと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 10ページ ■学校でも iPad を使う授業があったら楽しいと思います 笹木 瑞希 /小学 3 年  夏季プログラムに参加して良かったことは、同じ参加者の日向子ちゃんと友達になれたことです。今もメールでやりとりが続いています。  DO-IT で iPad の使い方を教えてもらったので、お家でも iPad を使って字を調べたり、遊んだりしています。学校でも iPad を使う授業があったら楽しいと思います。  DO-IT では勉強の時間だけでなく、ダチョウの卵を探すゲームをしたり、皆でピザパーティーもしてすごく楽しかったです。卵に穴を開けるのが大変でしたが。  DO-IT は本当に本当に楽しくて、できたら来年も再来年も行きたいです。 ■笹木 睦子(保護者)  娘は読み書きに凹はありますが、内容理解は年齢相当にできる能力を持っています。しかし、現在娘は国・算は支援級で授業を受けており、学ぶこと自体が困難な読み書きをメインに授業が行われています。『学び方が違う』と言うだけで、本来必要な本質理解の為の学びが在籍校ではできていない状態です。  夏季プログラム中の娘の様子は本当に生き生きとしていました。プログラムの中で、iPad の読み上げソフトを使用して学年相当のテストが行われました。娘は小学校に入学してから初めて、『テストできたと思うよ』と笑顔で話してくれました。ディスレクシアの子どもたちが凹を補うための機器を、学校で、家庭で、必要な場面で当たり前のように使用してその子の能力に見合った内容を学べる環境が整ったら、どんなに良いだろう、と感じました。  焦らず、あきらめず、将来への見通しを持ちながら、娘が自ら学び、自立へと繋がるようにフォローしていきたいと考えています。そのためには本人も、保護者も行動をしなければならない、と言うことも今回学ばせて頂きました。  スカラーに選んで頂き、本当にありがとうございました。先生方、保護者の皆様、今後もどうぞよろしくお願い致します 11ページ ■iPad を利用して授業を受けてみたら、ものすごく難しいはずの授業なのに内容がよく理解できて驚きました 武井 一星 /中学 1 年  DO-IT のプログラムに参加できて、とても嬉しいです。  iPad で、テストをしてみたら、いつものテストよりものすごく楽でした。なぜなら、いつも時間のかかる読みを読み上げ機能で読んでくれたり、いつも大変な書きをタイピングでできたので、とても楽でした。  先端研クエストで、ものすごく小さな字を写真に撮って拡大して文章を読もうとしたりしました。この機能を学校で使えたらいいなと思いました。それから、マイクロソフト社に行って、計画の立て方を学んだりもしました。他にもアプリの使い方を教わったり、ダチョウの卵を割ったりして楽しかったです。「自分の苦手と向き合おう」という当事者研究の授業では、自分と向き合ってみて、自分の苦手なことを理解したりもしました。大学の授業体験では、iPad を利用して授業を受けてみたら、ものすごく難しいはずの授業なのに内容がよく理解できて、たくさん質問もできて、自分でも驚きました。  これからの生活で、買い物をする時に小さな文字を写真に撮って拡大して文字を読んだり、勉強では漢字のときに筆順辞典を使って調べたりしていきたいです。それに、友達もたくさんできて、とても嬉しかったです。また来年がとても楽しみです。 ■武井 夏野(保護者)  読み書きがままならず、中学校でも悩むことが多くなってきました。がんばるだけでは乗り越えられず、困っているけど何の方策も見いだせないまま、途方に暮れる毎日でした。そんな折、DO-IT に参加させて頂けるチャンスを頂き、一筋の光が差し込んだ気持ちでいます。  これまで、親としても、どこまでしてあげることが必要な支援なのか、判断が難しかったのですが、ICT の力を借りると、子供の自立へのサポートも明確になりました。子供も「ipad があれば、皆と同じようにできるんだ!」という自信を得たことで、力強く歩んでいける気持ちになったようです。自立への大きな足掛かりを手にしたことで、息子に輝きが戻ってきています。夏季プログラムでは、考え抜かれた素晴らしい体験の数々に、毎日がワクワクの連続でした。消えかけていた学ぶ意欲に火がついたかのように、生き生きとしていく息子の姿を見ることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。子供達と熱心に関わって下さる先生方のひたむきな思いに触れ、心を打たれることも多く、私も力が湧いてきました。  「DO-IT のような学校があればいいのに。」息子が何度も口にしていた言葉です。ジュニアスカラーとしての機会を無駄にすることなく、希望の道筋を描いて行けるように、自分の力で、未来を変えていってもらいたいと願っています。すべては、始まったばかりですが、Do-it の活動が、息子にとって、大きな一歩であることは、まちがいありません。 12ページ ■自分の弱い部分を周りの人に伝えるのは、勇気がいることです 谷島 昂 /小学 6 年  最初は、友達ができるか心配で、数日前から少しゆううつでした。  1日目はまず、iPad を使いこなすようにレクチャーがありました。音声読み上げや先生の声を離れた場所でも聞けるイヤホンマイクは、ぼくにはあまり聞きやすくありませんでした。でも、筆順のアプリやキーノートの使い方が参考になりました。録音機は使えそうだったので、学校に持って行きたいなと思いました。  その後ハイパープレゼンテーションで虫のことを発表しました。虫の写真を見せて、虫網の値段を聞いたりしてうまくいったと思いました。みんなの発表は、いろいろ面白いアプリばかり紹介していてすごいと思いました。2 日目は、はやぶさのイオンエンジンを開発した小泉宏之先生の話を聞きました。プラズマを使おうとしたことが、すごいと思いました。  先端研クエストでは、グループごとにミッションに挑みました。ダチョウの卵は石のように固かったです。きれいに中身を取り出すようにと言われて、ライトで中を透かしてトンカチでたたいて穴を開け、うまくいきました。  最後の日は、熊谷先生の「自分の苦手と向き合う」という内容のプログラムでした。先生の苦手は、自分ひとりではトイレが難しく誰かの手助けが必要とのことで、いろいろ感じました。ぼくは書くことが苦手ですが、クラスのみんなには、まだそのことを大っぴらに話したくないという気持ちが強いです。なぜなら、同情されたくないからです。去年、クラスのみんなに話したら、みんなが突然助けてあげようという態度になって困りました。ぼくは、構われるのではなく、見守ってほしいのです。自分の弱い部分を周りの人に伝えるのは、勇気がいることです。  3 日間の感想としては、座っている時間が多く、正直テストなどつらい時間もありました。でも、みんなと知り合い、面白いアプリを教えてもらって、よかったです。ここに集まってきたみんなは、読み書きが苦手という共通点を持ちますが、困っていることはそれぞれに違うとわかったのがとてもよかったです。 ■谷島 由佳(保護者)  昂は、字は読めますし、書きもできますが、正確に読み込んで、正確に写し取ることに困難さが伴います。そのため、なかなか周囲に理解されないことが多く、本人も自分で認めたがらないところがありました。  DO-IT の合宿 3 日目に熊谷普一郎先生による「自分の苦手と向き合う」というプログラムがあり、同じ読み書き困難の仲間たちと、どんなところに困っていて、どんな難しさがあるのかを午前中いっぱい、話し合う機会がありました。母親の私から見て、この時間を経て、息子にずいぶん多くの変化があったと思います。 どんなにIT 機器のツールを教えていただいても、自分のハンディさを認めないうちには使いこなすことはできません。子どもたちに、いろんな「気づき」を促すプログラムが用意されていることに感激しましたし、息子も日ごろ、避けがちな自分の苦手さと向き合う良い機会になったと思います。また、こういう精神面でのフォローが小学校の現場でもなされるべきだと実感しました。まだまだ乗り越える壁は高いですが、DO-IT で学んだことを学校にフィードバックするなど、同じ困難さを抱えているご家族に伝えていきたいと思っています。 13ページ ■自分のダメな所をニコニコしながら話せるようになりたい 山口 幸強 /小学 6 年  はじめの自己紹介が辛かったです。僕は人前で話しをするのが嫌いだからです。でも、二学期の決意は、人前で上がらないようにするのが目標にしました。  友だちがいじめられた話とか、嫌な思いをした話とか聞いて、そういう子がいるんだなと思いました。ずっとたえてる人たちは、すごいと思いました。  ちゃんと自分の事をわかって、熊谷先生が言っていたみたいに自分のダメな所をニコニコしながら話せるようになりたいです。熊谷先生の話のなかで「強い」という意味がそういう事なんだと思って強くなりたいと思いました。  大学の授業は、けっこう難しかったです。言っている言葉がわからないことがありました。でも、はやぶさのエンジンについての話が面白かったし、前に使われていたエンジンとの違いが知れてよかったです。  友だちのプレゼンテーションで、iPad を使って学校の宿題のやり方を知って僕もこれからの勉強に役立てたいです。  このプログラムで自分と同じような友だちと会えた事、ダチョウの卵を見つけたりダチョウの卵の料理を食べられた事が嬉しかったです。 ■山口 美香(保護者)  息子は、7才の時に広汎性発達障害と診断され以来、改善薬ではなく今を乗り切る為の薬を服用。不安や疑問を抱えたまま、年を重ねるごとに周囲との差が更に開いて行く現実。本人は寝る間も惜しんで人一倍頑張っているにも関わらず追い付かない日々。一方で息子が、目を輝かせ将来の夢や希望を無邪気に話す姿を見て、この先どうして良いのかと悩み苦しんでいた頃、書店で中邑先生の本と出会いました。そして、幸運な事にジュニアスカラーに選んで頂き深海に沈む思いの中、一筋の光が差し込み救われた思いで参加させて頂きました。息子は、何をするにも遅く人の何倍も時間がかかるという大きな特徴があり、今回のプログラムも新しい環境に慣れず終始、緊張している間に過ぎてしまいましたが、内心は…感激!感動!喜び!驚き!励み!…と心が沢山揺れ動いていたようです。先生方やスカラー仲間の言葉に影響を受け、日常生活でも自ら苦手な所を克服しようと目標を掲げたりと前向きな嬉しい変化がありました。  今後とも皆様方のお力を拝借させて頂きながらまた、私達に何が出来るのか探し遂行して行ければと思っております。どうぞ末永く宜しくお願い致します。 14ページ ##@高校生・高卒者向けプログラム  夏季プログラム参加に先立ち、スカラーは 7 月の毎週金・土曜日にインターネットを通じた事前オンライン会議へと参加!仲間と共に「様々なテクノロジーやインターネットの活用方法」、「周囲への自分自身の障害と配慮に関する説明の準備」、「高等教育機関での障害者への配慮の現状」、「移動方法、体調管理方法」等について学びました。そして、いよいよ夏季プログラムがスタート!それぞれの思いを胸に東大先端研に集合しました(中学生1名はこのプログラムに参加)。 #プロフラム1日目 8月 4日 日曜 集合 10:00 オリエンテーション/自己紹介 参加者全員が、初めて顔を合わせる最初のプログラム!DO-IT Japanの目指す未来の社会、また DO-IT Japan は一人ひとりが将来の社会のリーダーとなることを目指すプログラムであることを、DO-IT ディレクターの中邑からエールを込めたメッセージが。その後、それぞれが自己紹介をしました。 ガイダンス 昼食 13:30 ディスカッション 「配慮の求め方を考える:合理的配慮とは」 「自分自身の障害と配慮に関する説明」について、Microsoft PowerPoint を使って資料を作成してきたスカラーたちが、参加者の前で発表!大学進学後に周囲にどのように支援を求めていくかについて、議論を行いました。プログラムに参加している先輩スカラーや専門家からの経験に基づいた助言が、議論を膨らませました。 15:20 講義「制度の利用と自立を考える」 生活を支えてくれる制度を身近に感じ学べるよう、障害者総合支援法(補装具や日常生活用具、居宅介助)や障害基礎年金のことなどについて議論。制度を申請を活用している先輩スカラーから具体的な体験が語られました。発達障害などで今役立つ制度がない場合には、サービスを作って行く視点についても話し合われました。 16:30 ホテルへ移動 状況に応じて自ら移動できることは、自立の第一歩!宿泊するホテルまで、乗る時間帯 路線選び、次の予定などを考慮して、自ら考えたプランで移動を行い、公共交通機関の使い方や周囲に支援を依頼する経験を積みました。また、支援ニーズや移動ペースが違う仲間や先輩たちとの移動は、自らの困難や社会サービスの在り方について気づくきっかけとなりました。 19:00 BYO(Bring Your Own) Party! Sponsored by 沖電気工業株式会社 夏季プログラム期間、参加者全員に配布するスケジュール等の資料や、授業や講演等の案内図や配布資料等、大量に印刷を行います。その印刷用に、プリンターを複数台ご貸与いただきました。 Sponsored by 株式会社トヨタレンタリース東京 夏季プログラム期間に、リフト付き車両を無償でお貸しいただきました。自力での移動が体力的に難しいスカラーや、体調を崩したスカラーの移動に使用させていただきました。スカラーにとって、移動方法の選択と決定を考える機会となっています。 Sponsored by 株式会社京王プラザホテル 夏季プログラム期間に、スイートルームを含む宿泊プランをご提供いただきました。国際色豊かな人が行き交う一流のホテルでのサービスを受ける経験は、スカラーが場に即した立ち振る舞いに気づく機会となりました。 15ページ #プログラム2 日目 8月5日 月曜 【企業訪問】日本マイクロソフト株式会社 品川本社  テクノロジーは、現代人にとって便利で使いやすく、身近な存在に。障害のある人々の進学や就労、自立生活など、社会参加に不可欠な存在です。夏季プログラム 2日目は、日本マイクロソフト株式会社を訪問し、最新の教育やビジネスの現場で使用されているテクノロジーの利用方法を学び、実体験を通じて自らの学習や生活にいかす方法を身につけました。 写真 加治佐 俊一 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者 写真 大島 友子 日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 集合/受付 10:00 講義T 「生活に IT を活用する」 Windows には障害のある人の利用を支援する「アクセシビリティ機能」が標準機能として備わっています。また、Microsoft OneNote は、障害のある人がノートをつける際にとても便利なソフトウェアです。大島友子さんのガイドで、Windows の便利な機能とその設定方法や、生活を便利するソフトウェアの利用方法を学びました。 昼食 12:45 講義U 「思考を整理する方法を学ぶ」 肢体不自由や書字障害があるため鉛筆を使って書くことが難しい、記憶や認知面の障害があるため思考や概念をまとめあげることが難しいといった困難がある人々がいます。考えを視覚的にまとめる手助けとなるソフトウェア MicrosoftVisio を活用しながら、自分の思考を整理する体験をしました。また既に Visio を使いこなしている先輩スカラーが自らの実践例を紹介しました。 14:35 講義V 「やるべきことを管理する技術を学ぶ」 やるべきことを上手に把握し、適切に達成する方法を知ることは大切なスキルです。認知面の困難から先を見通すことに苦手さがあったり、リハビリや通院など日々のやるべきことに時間を取られたりしがちな障害のある人にも、自らの生活を主体的に進める手助けとなります。Visio やOneNote を使って頭の中に散乱するやるべきことを整理し、遂行していく方法を実践しました。 16:00 講義W 「IT が拓く未来の生活」 テクノロジーの発展は、障害のある人を含めた現代人の生活スタイルを大きく変えてきました。そう遠くない未来、私たちを取り巻く環境はどのように変化するのでしょうか。加治佐俊一さんのガイドで、未来予想を通じて描き出される未来の人々の生活スタイルと、それに伴って変化する学びや仕事、暮らしのスタイルを学びました。 日本マイクロソフト品川本社・社内見学 移動/夕食 Sponsored by 日本マイクロソフト株式会社 障害のあるスカラーたちの持つ強みを生かし、自立を促すためには、便利なソフトウェアが不可欠です。日本マイクロソフト株式会社からは、学習や生活を豊かにする最新のソフトウェアの数々(Microsoft Office, Microsoft Visio)を 2013 年度のスカラー全員にご提供いただきました。 Sponsored by 株式会社アドバンスト・メディア 文字をペンで書けない、キーボードを使うのが難しいことは、必ずしも文字をつづれないことを意味しません。音声で発話するだけで文字を入力することができる音声認識ソフトウェア「Ami Voice SP2」をご提供いただきました。 16ページ #プログラム3 日目 8月6日 火曜 集合 9:40 大学講義T 「宇宙利用を変える電気推進ロケット技術」 DO-IT 学生スタッフ向け講義「納得のプロセス」 早稲田大学の畠山卓朗先生を講師としてお招きした講義に学生スタッフが参加。障害のある人の支援に関わる上で、どのような視点や姿勢を持って関わることができるのかについて、長年の支援の経験に基づくお話を伺いました。 写真 畠山 卓朗 早稲田大学 DO-IT アドバイザー 11:00 大学講義U 「社会はどうやって『できる』のか、どうしたら『変わる』のか 〜イスラーム思想史と『アラブの春』〜」 東京大学で世界先端の研究を行っておられる先生方を講師としてお招きした講義にスカラーが参加し、進学後の学習環境を体験しました。また、自分が学ぶために必要な配慮を講師に説明したり、授業中に支援機器を使用するなど、大学進学後の学習に必要になることについて、実体験を通じて学びました。 写真 小泉 宏之 東京大学 先端科学技術研究センター准教授 写真 池内 恵 東京大学 先端科学技術研究センター准教授 12:00 DO-IT 学生スタッフ企画プログラム 大学生活では、学習場面だけでなく生活場面でも、自分自身で意思決定することが求められるようになります。時間の使い方や体力の考慮、生活方法や友人との関係作りなど、進学後の学生生活には期待と不安が入り交じります。学生スタッフとして参加した先輩スカラーの企画により、障害のある先輩や仲間たちの実際の生活を知るプログラムが行われました。参加したスカラーは、未来の大学生活のリアリティを膨らませました。 DO-IT 学生スタッフ(五十音順):粟井優衣さん/蔵本紗希さん/小林春彦さん/齊藤真拓くん/関根彩香さん/永野椎奈さん/山ア康彬さん/横山羽依さん 12:00 セミナー 「自立について」 医師・研究者として活躍し、肢体不自由の当事者でもある DO-IT スタッフの熊谷晋一郎から「自立」についての話題提供。様々な工夫を行い、周囲の配慮を得ながら活躍する熊谷の実体験を聞き、大学生活における自立の意味について考えを深めました。 12:30 キャンパス内にて昼食 「昼食を取る」といっても、大学生活での昼食の取り方は様々あります。個人で食べたり、仲間と食べたり。また、お弁当を買ったり、学食や最寄りのレストランに行ったり…。次の予定を考えながら、先端研キャンパス内で各自で選んだ昼食の時間を過ごしました。 14:45 テーマT「留年、休学」 自分自身が行っている「計画的に留年・休学すること」について学生スタッフから話題提供。周囲に合わせるだけでなく、自分の体力や必要となる時間、費用を考えながら、大学生活をカスタマイズする可能性について議論しました。 16:00 テーマU「一人暮らし」 学生スタッフが自分たちの一人暮らしの生活を紹介。介助制度の利用や、生活中に起きた様々なエピソードについて話題提供がありました。特に、自分でやることと人に頼むことの線引きをどう考えるかについて、熱い議論が盛り上がりました。 17:00 テーマV「私の人との付き合い方」 自分の友人や家族との関係について、学生スタッフが経験談を語りました。その後、ホテルへ移動。小グループで夕食を共にしながら、周囲との関係性の現在とこれからについて、ゆっくりと話し合いました。 ホテルへ移動、その後フリートーク Sponsored by 富士通株式会社 障害のある学生たちにとって、パソコンを使いこなすことは、自らの困難を代替する手段となり、将来社会の中で学び、働く上で不可欠な道具となります。富士通株式会社からは、2013 年度のスカラー全員に貸出する最新のノートパソコンをご提供いただきました。 17ページ #プログラム4 日目 8月7日 水曜 集合 9:40 討論会「アドボケイト!〜自己の権利を擁護せよ〜」 ディスカッション「どのように説明するか」 発表/まとめ「対面と説明」 自分自身の困難と必要な配慮について、論理的な説明に基づいて配慮を求めることを学んだ 3 日間。最終日は、DO-IT ディレクターの中邑が大学理事の立場に、サブディレクターの近藤が事務長の立場に扮して登場。様々な困難のあるスカラーからの配慮の申請について率直なコメントを返します。この経験は、自分たちが実際に配慮を求めるための準備となりました。 昼食 13:30 一般公開シンポジウム 「合理的配慮が実現するとき・これから私たちは何をすべきか」  2013 年 6 月「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、通称「障害者差別解消法」が成立しました。法的に「合理的配慮の不提供の禁止」が定められた今、DO-IT の活動を通じて合理的配慮の必要性を訴えてきた私たちが何をすべきかについて振り返りました。 →D一般公開シンポジウム(p.28)参照 13:30 シンポジウム【話題提供】 「高校・大学入試と大学での学びにおける合理的配慮」 「小学校・中学生の授業やテストでの合理的配慮」 DO-IT Japan 2013 ジュニアスカラー・修了証授与式 15:40 シンポジウム【ディスカッション】 「未来の学びの環境と合理的配慮」 16:30 DO-IT Japan2013 スカラー・修了証授与式 2013 年度のスカラーへ、夏季プログラム修了を記念して、修了証が授与されました。スカラーたちは 4 日間に渡る濃密なスケジュールを振り返り、自分自身が学んだことを来場者の方々に伝えました。 17:30 公開シンポジウム・DO-IT Japan 参加者の交流会 18ページ #夏季プログラムを終えて ■「一人で」の経験を通して困難を乗り越える術を身に付けたい 伊藤 華奈子 /長野県・高校2年  この夏季プログラムへの参加は、様々な現実的問題について自分なりに考え、色々な方の意見を聴き、視野を広げることができて、非常に貴重な経験となりました。  その中から印象に残ったことを書いていきます。まず一つは公共交通機関の利用です。私は、今までほとんど公共交通機関を経験してこなかったので、プログラムに参加するまで大変不安でした。なので、事前に経路を確認しに東京まで行きましたが、人の多さや複雑な地図などに悩まされました。しかし「雑踏に惑わされず、自分の進むべき道を明確にしておかなければ」「緊張するけれど駅員の方に伝わる声で介助のお願いをしよう」など、を意識することを決め、夏季プログラムに挑みました。期間中では、特に初日は緊張しましたが、しっかり目的地につけたという達成感が日ごとに得られると、自信をもって前に進めるようになったので、ほんの少し、自分がたくましくなったように思えました。  二つ目に、合理的配慮のディスカッションです。「大学入試、進学後に求める合理的配慮」のプレゼンテーションを、私が一番に行いました。内容は主に、移動が困難な時に他の学生に手伝ってもらうような人的支援と、可能な範囲での環境におけるバリアフリーを必要としていることを伝えました。私の発表が終わった後、皆さんからどんな反応が返ってくるのかドキドキしながら待っていると、先輩方や先生方から、人的支援は合理的ではないという意見が多く出ました。よく考えてみると、大学に金銭的・人的に負担のかかることを依頼したとしても、実現可能とは言い難いですし、本当に必要な配慮だと説明できる要素が少なかったので、合理的とは言えないな、と最初の考えを改めさせられました。「合理的」の意味を分かっていたつもりで分かっていなかったです。私の求めたいことを説明するには、もっと自分の障害とニーズについて正しく知ることが重要であることに気づきました。なので、実際の生活上の困難に直面したとき、どう対処すべきかが私のこれからの課題となってきました。そのために、これからは外に出掛ける機会を増やし、「一人で」の経験を通して困難を乗り越える術を身に付けたいです。  三つ目は、マイクロソフト社に訪問した際に学んだ、生活の負担を軽減させるためにテクノロジー活用の手段があるということです。今回教えてもらったものに、自分がすべきことを整理する方法として、Visio というソフトを使う時間がありました。今回、整理したいテーマを中央に書き、その周りに問題点や改善策など、思いついたことを次々に書いていき、枝分かれ式にまとめなおして、おのずと答えを導き出すという使い方をしました。私はこの作業をしていくうちに、今まで思いつきもしなかったユニークな答えが出ていることに気づきました。しかもそれは、すぐに実行できそうなものばかりだということ に気づきました。見事に思考が整理されたのを目にして驚き、感動しました。課題からすぐ答えを出そうとするのではなく、それにたどり着くまでの細かな過程が答えにつながることを実感しました。  四つ目に、大学の講義を受けた時のことです。夏季プログラムの前に行われたプリプログラムで、大学の講義はただ聞くだけではなく、質問や自分の考えをその場で出すことによって内容を膨らませ、学生自身が作るものだと教えられました。実際に講義を受けた時も、それを意識していましたが、同じ場で講義を聴いていた DO-IT ジュニアスカラーのほうが何でも興味を持ち、積極的に発言していた姿を見て圧倒されてしまいました。このように、何でも疑問に思い、知りたいという意欲がスキルアップになるのだろうな、と DO-IT ジュニアスカラーの皆さんから学びました。  そして、五つ目は全国からの色々な方とお話ができたことです。私にとっては色々な方と話をすることは不安のうちの一つでしたが、気さくに話しかけてくださる方が沢山おられてとても嬉しく思いました。県民性をアピールしたり、自分の経験、趣味、性格などを一から話したりできるのは、こういう機会ならではだと感じました。ただ、私が心残りなのは、夜のプログラムにあったフリートークに出席しなかったことです。疲れたという自分の気持ちを優先させてしまい、皆さんと話題を共有できるチャンスを逃してしまったことを、とても後悔しています。疲れと上手く付き合う方法を習得するためにも議論を深め、社会で実践する力を養うためにも、次回はぜひフリートークに参加したいと思います。  最後に、会期中に学び取ったこと全ては、社会を生きる上で大切で、また基本的な事柄でした。今までもその事柄の意識は持っていましたが、具体的な 対策があやふやでした。今回、この場面ではこうすれば良いのだな、と色々な手段を学び、自分の中で納得できたことが、習得だったと思います。あとは、私自身が、経験したことを、これからの生活の中でどう生かすかです。そして他の全ての経験も、どこかで必ず自分のエネルギーなることを信じて恐れず、これからますます多くのことに挑戦していきたいです。 ■伊藤 久美子(保護者)  DO-IT Japan 夏季プログラム 2013 の応募にあたり担任の先生から勧められ幸運にも参加することができました。大変お世話になりました。さっそく事前準備が通知され Windows8 で@メールの読み書きA Skypeでのオンライン会議参加が課せられました。親にとっても経験のないことでしたので心配でしたが本人は一生懸命お借りしたパソコンに向き合いプリプログラムに取組んでいました。その甲斐あって本プログラムと終了後のオンライン会議での単独操作が会得できた様子です。  プログラム日程はもちろんですが出発からホテル泊、会場移動など単独行動のすべてが初体験でしたので途中棄権も覚悟で送り出したのですが最終日の終了証授与式で胸を張って自分の意思を発表する姿は我が子かと目を疑うほどでした。  おかげさまで他人に頼らず自分で解決しようとする姿勢に目覚めた姿にたくましさが感じられました。四日間でしたが同じ障がいを抱えながら夢を叶えようと頑張る仲間の姿に共感しながら過ごせた事とそれを保障してくれる社会の仕組みをご教示・応援していただいた主催者、共催者の皆様に感謝申し上げます。  娘が宣言するように今後身近で起こる「進学・就労活動」において「合理的配慮」を訴える姿を精一杯見守りたいと思います。 19ページ ■自らの行動を自らの意思で選択することの大切さも感じました 射場 桃子 /大阪府・高校3年  私は、面接に来てくださった近藤先生の「僕たちは、転ばぬ先の杖は用意しません。」というスレートな言葉に、とても衝撃を受けました。これまで、ほとんど自分が言わなくても「転ばぬ先の杖」が用意されている環境に甘えていたからです。そして、DO-IT に対する期待と絶対に参加したい!自分を試してみたい!という思いが、興奮とともに沸々と高まっていったのを覚えています。しかし、面接での自分の発言など、緊張していて何を言ったのか覚えていないぐらいで、正直自信が全くなかったので、参加できると知らせをいただいたときは、とても驚き嬉しかったです。そして、自分自身の力でアクションを起こし、楽しんでやり遂げてやるのだというエネルギーが湧いてきました。  私にとって、夏季プログラムの 4 日間は、もちろん濃密な時間でしたが、準備段階や東京に着くまでも、とても濃いものでした。このような一人旅はしたことがなく、今までは学校の先生や両親が予め私に必要な旅の情報収集を行い、不便なく出掛けていました。今回、初めて自分自身で飛行機の手配から、目的地までの経路の確認、エレベーターや車いすトイレの位置情報など、インターネットで調べたり、電話をしたり、知っている人から情報を得たりしました。このようなことを 1 人で進めていく中で大変さや有難さを実感し、改めて感謝の気持ちが深まりました。また、飛行機内で座席シートに移乗した際、首の位置が悪く声が出せず、体勢を整えてほしいのに伝えることが出来ないハプニングに少し焦りましたが、落ち着いて考え、膝の上に置いていたスマートフォンに文字入力し CA にやっと伝えることができました。この時ほどスマートフォンを持っていて良かったと感じたことはありません ( 笑 )。時間や手間がかかるのに私の意思を尊重し、丁寧に対応してくださった関係者の方々の温かさは本当に嬉しかったです。  DO-IT では、本当にたくさんの方々に出会いました。その中でも一番印象的だったのは、全盲の大河内さんとサポートをされている天野さんの関係です。お互いを尊重し信頼し合っておられるように感じ、素敵だと思いました。私も、サポートをお願いするときには相手に快く助けてもらえるように自分も相手を思いやる気持ちを大切にしていきたいです。また、自分を理解してもらいやすいように伝え、自分も相手を理解し互いに認め合えるような配慮を求めて行きたいと思っています。また今回、一緒に参加したスカラーのみなさんの自分の意見を明確に論理的に伝える姿にも、とても刺激を受けました。自分の苦手の再認識となったとともに、私のこれからにとても重要な力だと感じ、私も頑張らなければならないと思いました。  DO-IT に参加することは、私にとって大きなチャレンジでした。なにより参加できたことは貴重で、様々な障害をもった人、様々な考えをもった人に出会えたことは私のフィールドを大きく広げました。また、私たちのように、他者からの支援を必要とする者が自分らしく生きるためにも、常に問題意識をもち続ける必要があることを学びました。そして、自らの行動を自らの意思で選択することの大切さも感じました。  私は、大学に進学し、心理学を学びたいと思っています。専門知識、技術を学び、様々な人と関わり、たくさんの経験を重ねていきたいです。さらに思考力を磨き、主体的に取り組むことを心掛けたいと思っています。そして、大学で得たものと広い視野、ユーモアと柔軟な発想で DO-IT に貢献できるように頑張りたいです。  最後に本当にDO-ITに参加できてよかったです。忘れられない夏になりました。快適で充実した東京での 5 日間をサポートしてくださった方々、素敵な経験をさせてくださった先生方、ありがとうございました。13 スカラーのみなさんに出会えたことは、私のこれからの力になると思います。大変なことでも大きく変われるチャンスだと思って、どんなときでも決して諦めず何事も挑戦していきたいと思います。そして、笑顔をわすれずに…。 ■射場 絹代(保護者)  「ここからが始まり。自分らしく、自分の翼で翔ぶ。」夏期プログラムの最後のスライドで流れた娘の言葉です。私達から離れて過ごした 4 日間に様々な方と出会い、貴重な経験をし、たくさんのことを得たことで自信をつけたのだろうと胸が熱くなりました。  DO-IT に参加し、病気や障がいを含め自分自身と真剣に向き合い、また多様な特性を有する人との出会いや学びは大きく、生き方に対する視点が増え、視野が広がったのではないかと思います.  娘は、大学で心理学を学ぶ事を目指しています。そして、大学で学んだ事や経験した事を、たくさんの刺激をくれた DO-IT へどのように表現していくことができるかも探っていくそうです。娘は、出来ない事もたくさんありますが、娘だからこそ出来る事もあるのではないかと思います。これからも自分らしく何事も諦めず、チャレンジしていって欲しいと思います。悩んでも迷ってもいい、自己決定で切り開いて欲しいと願っています。最後にスライドに映し出されたスカラーみんなの表情はイキイキと輝いており、ともに充実した時間を過ごしたのだろうと感じました。そのように導いて下さった先生方を始め、DO-IT Japan の関係者の皆様に心から感謝申し上げます。 20ページ ■はっきりと自分の得たい配慮を明示して交渉することの大切さを知りました 植田 健人 /大分県・高校2年  私はこのプログラムに参加して、身の回りの全てが変化したような気になります。第一に、自分の困難を知りました。第二に、他の人々の困難を知りました。第三に、助けを求めた時、答えてくれる人々を知りました。第四に、困難に抗う術を知りました。第五に、困難に耐える必要は必ずしもないということを知りました。  第一の件ですが、私はアスペルガー症候群の診断を受けています。自分の障害について、去年ぐらいまで私は何も知らされていませんでした。尤も、気づいていなかったわけではないのですが、それまで自分の抱える困難について、ただ耐えるしかありませんでした。昔は大きな音が苦手だったり、今もスケジュールの管理や人混みや地図を読んだりすることが非常に苦手です。  また、私は小学校の頃から漢字の書き取りや作文に非常に時間がかかり、どうしてこんなことをしなくてはならないんだと思いながら書き取りをしていました。そして、DO-IT に参加して、ディスレクシアという障害の存在を知り、自分もこれではないかと思うようになりました。ただ単に書くのが苦手だ、と思っていた現象に個別の医学的診断名がつくのだろうと思います。ただし、同期スカラーの田中佑典くんが見せてくれた進研模試の答案を見るに、私がそうだとしてもごく軽度だろうと思います。ただし、おそらく素の滑舌は田中くんよりもずっと悪いので、話す文には私のほうがやりにくいのではないかと思います(長広舌をかまずに言えても、速すぎて聞き取ってもらえないこともあります)。  第二の件ですが、他の方の障害に関しては、他のスカラー及び先輩方の感想文に詳しく書いてありますのでここには書きませんが、特に障害の中でも車椅子の人や視覚・聴覚障害のことについても知らないことは多かったと思います。  第三の、助けを求めた時に答えてくれる人というのは、DO-IT の皆さんや、そこに参加するまでに手助けしてくれた人のことです。ここに辿り着く前に、私はすでにたくさんの人々の支えを受けています。私はこのプログラムに参加するまで大学で受けられる支援についてよく知らず、東京は喧騒が多いから京都に行こうかなどと思っていました。実際に DO-IT にも参加し、東京大学のオープンキャンパスに参加し、バリアフリー支援室を訪 れたのですが、東京大学の支援機構は日本の最高学府だけあって非常にしっかりしているので、今では明確な意志を持って第一志望となる東京大学に行きたいと思っています。最後まで見捨てないと言って頂いたからには、それを最大限活用して、自分の第一志望に通ってやろうと思います。そこから数学者の夢を追いかけたいと思っています。  第四の困難に抗う術というのは、「人と交渉する」ということです。参加前の自分は先生に何か言われたらそれまで、という人間だったのですが、DO-IT で自分の困難を表明し、はっきりと自分の得たい配慮を明示して交渉することの大切さを知りました。そのため、夏休み終了後、自分の読書感想文をワープロ打ちにして持って行き、自分で交渉をすることにしました。その際、自力で起こした行動だけでどうにかなったかと言われればどうにもならず、結局は人の手を借りましたが、またそれも DO-IT の基本的理念の一つですので、それは一向に構わなかったと思っています。今回、私がワープロで提出した読書感想文は 2000 文字で、この DO-IT の感想文と同等の長さです。もしこれを書き写していたら 4 時間はかかっていたでしょう。その時間は、価値ある時間とは私には到底思えません。  第五の困難に耐える必要はないというのは、いろいろな支援機器のことです。私の場合はパソコンということになりますが、それを使うことでいろいろな困難を解消できることがわかりました。作文のワープロ打ちはもちろんのこと、Visio でのブレインストーミングや OneNote でのノートテイクなど、文明の利器は非常に偉大だということがよくわかります。これが実際の教育現場でまだ認められていないというのは、ただ単に新しいものに対するアレルギーに他ならないでしょう。未だに紙媒体に頼り続けるのは自動車を否定して徒歩を強要することにも似ています。障害のある学生の数におけるアメリカと日本の差も、日本の保守性をよく表しています。といっても私はまだパソコンを学校に持ち込む必要性があるというほど困難を感じてはいないのですが。  この 4 日間で DO-IT が終ったなどということはありません。これからも支えられる側としても支える側としてもおそらく一生関わり続けることになるでしょう。続くからこそこのプログラムは素晴らしい。来年も再来年も私たちの同志がますます増えることを非常に期待しています。  最後に、私を支えてくれた人たち、特に DO-ITの皆さんに感謝を表明したいと思います。ありがとう。 ■植田 志乃(保護者)  息子には小学生の頃から、数学者になる夢がありました。けれど私は叶わぬ夢だと思っていました。書字障がいに加えてアスペルガー症候群によるコミュニケーションでの困難を抱える彼には大都会での一人暮らしは難しいと思っていたからです。  小・中学校では、親が学校に配慮を求めてきましたが、障がいへの「理解」は得られませんでした。高校に入ってからは彼自身が、学校に理解を求めることを諦めていました。その彼が夏期セミナーを終えて最初にしたのは、ワープロの読書感想文を学校に認めてもらうことでした。何度も却下されながら「交渉の実践練習だと思って、認めてもらうまで何度でも来ます。」と言っていたことを担任から聞き、彼の成長を感じました。また、その間全国のスカラー仲間に相談してアドバイスや激励をもらっていました。息子が自分の障がいと向き合い、合理的配慮を求めていることが本当に嬉しかったのですが、全国の仲間が息子を支えてくれていることが何よりも嬉しく、心強く、胸がいっぱいになりました。DO-IT の関係者の方々に心から感謝します。有難うございました。 21ページ ■私にとってのエンピツ、消しゴムはPC だという事 河高 素子 /東京都・中学 3 年  私は DO-IT 夏季プログラム期間中、沢山の体験をさせていただきました。  1 日目に 13 スカラーはプリプログラムで自分のスライドを見ながら説明しました。私はプログラムに参加するまで PowerPoint でスライドを作ったことが無かったのですが、自己紹介や合理的配慮のスライドを作る上で、自分の考えを再確認しまとめる事で自分の考えをすっきりまとめる事が出来ました。これからも、変化し増えていくであろう自分の考えを時々スライドにまとめてみようかなと思っています。  2 日目にマイクロソフトで Visio を始めて使い、すごい、これを使いこなせれば私が何故それとこれをつなげたのか、どことどこがくっついてこの答えになったのかなど、自分が何故こう考えたのかという事を人に説明しやすくなると思いました。  3 日目の大学の講義を受けて私は、大学に行きたい、と強く思いました。3 コマ受けてどれもいろいろなことを学んだのですが特に印象に残ったのは熊谷先生の『自立』についての講義です。いろいろな所に少しずつ依存する事が自立だと知った時、始めは驚きました。しかし、よく考えたら、大人になったら、親子、学校の友達以外にも人と関係が出来て信頼できる人には、自分の事も話すし、悩みも聞いてもらう、それを全部一人に預けてしまえば依存になるけれど沢山の人に預ければ、それは親友、友達と呼べる人が沢山いる事になる。一人に全部預けてしまうか、沢山の人にいろいろ預けるか,それだけの違いで,それはとても大切な事だと思いました。  4 日目の一般公開シンポジウムを聞き合理的とはなにか、学校にとっての合理的と私たち、障害を持つ人たちの合理的をどこで折り合いをつけるか配慮を受けていくうえで大切な事は適切な配慮を受ける事はもちろんですがどこで折り合いをつけるかというのも大切だと思いました。  私は DO-IT Japan プログラムに参加して、発見したことが大きく分けて 3 つあります。1 つ目は、私は、授業中にノートを取る、先生の声を聴くという事が自分にとってどれだけ大変な事なのか自分では理解しているつもりでしたが、実際に DO-IT で受けた授業を PC でノートを取る事や FM 受信機を使う事で、あれ?ノートを取る事ってこんなに楽しい事なのか?授業ってこんなにクリアに聞こえるのか?これなら授業を聞ける !! と思いました。そして改めて自分が、ノートを取る事や先生の声を拾う事に沢山の体力を使っていた事が分かり、とても驚きました。驚いた理由は私の中に、私は本当に障害を持っているのだろうか、ただ私が怠けているだけではないのだろうかという気持ちが少なからずあったからだと思います。  2 つ目は、出来る事は自分でやるという事は必要なことだけれどそれと同時に、代わりの物を使う事も必要であるという事が発見でした。私は、書字障害があります。DO-IT に参加するまでは作文の宿題などは、PC で書いたものを手書きで作文用紙に写していました。しかし、書き写すだけで 2 日かかり、周りから後れをとっていて、悔しく思っていました。また、授業中に作文を書くときは、手書きで書いていましたが書きたい事の 3 分の 1ぐらいしか書けなくて文章も短くなってしまいまた書けなかった、と思っていました。しかし、DO-IT に参加して、自分のエンピツ、消しゴムは PC なのだと自信を持って言えるようになりました。そして、2 学期から、作文は PC で作成した物を印刷して提出しています。また、高校の説明会の時に高校の先生に自分に書字障害がある事を話し、作文受験をPC での受験を希望したところ、OK を頂きました。  3 つ目に発見したことは、出来る事でも、無理をしすぎる事は頼むという事です。1 日目に受けた講義や、大学生リーダーの人が企画してくださったプログラムの中で無理をし過ぎない、無理し過ぎになる事は、日々の生活に響くから、人に頼むや機会に任せるという事が日常の生活を送っていくうえでとても大切な事なのだと知りました。それまで、多少の無理ならと思って無理をし過ぎて次の日からの生活に響く、ということがよくあったので、これからはまず、無理し過ぎになるのかどうか、もし無理し過ぎなら人に頼む事を考えるなど、よく考えてから行動したいと思います。  DO-IT 夏季プログラムで、私は、自分に自信が付きました。私は、書く事に困難を抱えている。しかし、PC を使えば普通の人が出している力と同じ割合の力が出せる。それは、私にとってのエンピツ、消しゴムは PC だという事、授業中に沢山の音の中から先生の声を拾うのはとてもエネルギーを使う、その事をハッキリ言えるようになりました。 ■河高 康子(保護者)  高校受験まであと半年という時期に DO-ITJapan に参加できたことはとても幸運でした。  オンライン環境で行われた事前プログラムの中でパソコンを使って課題をつくり、期限内に提出できたこと。そのくりかえしにより、娘はメキメキと自信を取り戻していきました。学校生活において、提出物など期限内に出せないことがもたらす絶望感を積み重ねてきたということでもありました。私は母親として娘の困難を理解しているつもりでいましたが、このときはじめて、娘が学校へいけなくなった本当の理由がわかったような気がしました。  そして何よりも嬉しかったことは、娘が心から信頼できる仲間や先生たちと出会い、その中で自らの困難を言葉にして表現をし、困難をもつ仲間の表現を聞くことにより、自らの困難に気づいたり認めたりする経験ができたこと。その経験は、娘が志望校の先生とお会いして、自らの困難を説明し配慮を申し出るという力強い行動にむすびつきました。  たくさんのことを学び、次々と行動していく娘の姿をみたとき、私自身が娘を思うときに感じていた不安から開放され、「学校」という場所に通い始めてから「支援員と生徒」のようになっていた親子関係が、やっと母娘に戻れたような…そんな嬉しさがありました。本当にありがとうございました。 22ページ ■「カッコイイ」他の障害を持つ仲間たちと関わり、自分の見えている世界がガラリと変わった 愼 允翼 /千葉県・高校 2 年  僕がはじめて DO-IT の存在を知ったのは、中学 3年の時に父が DO-IT の広告の紙を見せてくれた時だった。その時父は DO-IT にチャレンジしている当時の先輩スカラーたちの写真をやたらと「カッコイイ」と言っていたのだが、僕は単純に「ヘボい」と思ってしまった。それまで僕はいわゆる普通学級に通ってきて、自分が必要とする合理的配慮を家族に支えられながら「自分の力」で全て獲得してきた自負があった。だから他の障害を持つ仲間たちを僕自身が軽視していたのだ。つまり、障害者が健常者と対等に生きるためには健常者の世界で勝負すればいいのであって、「弱い」障害者と関わる必要性なんてないと考えていたわけだ。しかし高校入学後、周囲の友人が僕と同じぐらいの学力を持っていたことで、僕は自分の考え方に疑問を持った。というのは、いくら勉強ができる健常者であっても、社会やルールの矛盾に気付いて声をあげて戦うような勇気や気概にあふれる人は、自分が思っていたほど多くいないことが、周囲の高校生を見てようやくわかったからだ。そんなとき DO-IT プログラムの存在を思い出し、社会を変えようとする他の障害を持つ仲間たちと関わることにわずかな期待が生まれた。そんな理由で高校 2 年生になって DO-IT プログラムへ参加した。  僕はこのプログラムに参加し、社会を変えようとする「カッコイイ」他の障害を持つ仲間たちと関わり、自分の見えている世界がガラリと変わった。そして主に 3 つのことを獲得した。  1 つ目は、テクノロジーの獲得である。僕は脊髄性筋萎縮症という障害を持っていて、何をするにも独力で行動することができない。それゆえ家で勉強する時は Microsoft Office での OneNote を使って自作ノートを作ったり、誰かに代筆してもらったりすることが多い。しかし、貧弱な腕の筋肉を長時間酷使するのには苦痛が伴う。それが DO-IT に参加したことで OAK システムという新たなテクノロジーと出会い、その苦痛から解放される展望が見えてきた。今後、自分の思うように OAK システムを操作できるように練習したい。  2 つ目は、自立する方法の獲得である。3 泊 4 日のプログラム期間中、僕は自分で用意したヘルパーと DO-IT の学生ボランティアに助けてもらって過ごした。小学校や中学校の修学旅行を除いては、親なしでどこかに泊まりがけで出かけるということがなかった僕にとって、これは大変なチャレンジだった。しかし、このチャレンジは将来僕がひとり暮らしをしていくことの試金石になったし、「やれば何でもできる !」という自信にもつながった。そして僕が安心して身体を任せられる人を一人でも多く作っていくことの重要性を、身をもって感じることができた。実際に DO-IT プログラムを通して知り合った学生ボランティアに今後助けてもらう機会があれば、ますます自立することができるように思う。  3 つ目は、他の障害を持つ仲間たちと語り合って得た、多様性への視点の獲得である。DO-IT プログラムの様々なチャレンジ企画の中で圧倒的に時間が多かったのは、ディスカッションの時間だった。そこでは合理的配慮や自立の問題について、色々な具体的テーマから切り込む討論が行われた。それは参加しているスカラ―全員が違う視点で自分の意見を主張しあう白熱した時間だった。特に印象深く学んだのは、僕みたいに目で見てわかりやすい肢体不自由の障害者よりも、見た目では分かりにくい発達障害を持っている人の方が今の社会では生きにくいということだ。先日日本で法律的に認められた合理的配慮も結局は発達障害を持っている人を、社会の「くくり」から締め出しているのであって、誰もが自己実現できる社会を構築するためには「くくり」を乗り越えて多様性を愛する視点こそ求められていることが、全体の討論を通してわかった。これはディレクターの中邑先生が最後の公開シンポジウムで扱っていた話を通しても、より鮮明に自分の中で見えてきた結論である。  以上が僕の DO-IT における獲得である。とくに 3つ目の経験を通して、健常者の狭い世界の中で窮屈に生きていたときにはハッキリ見えなかった、将来僕が政治哲学の研究者になったときに挑むべき課題が明らかになってきた。それは障害を持つ人たちが困難を日々乗り越えて生きていることで、普通の人が気付かないような社会の矛盾に一つ一つ別個に気付いてはいるのに、それら全てに共通の真理である「社会を変えるためには何が必要なのか ?」という問いには行きつけない、ある種の「洞窟」から、僕の心が解放されたことを意味する。しかし、もちろん洞窟を抜けた所には真理の大きな山が遥かにそびえたっていた。これから自分が一生をかけて攻略すべきこの山を、DO-IT で知り合った仲間たちと、社会を変えようとしている全ての人たちと一緒に越えて行きたいと思う。そしてその道の向こうに、誰もが自己実現できる社会や多様な人たちが共存しあえる社会があることを強く信じる。 ■愼 蒼健(保護者)  この夏のプログラムに参加した息子は、少し「大人」の顔になって帰ってきました。私と妻は、息子が幼い頃から「棄民政策」を実施しているため、学校・社会生活では親が介助しないという原則を貫いています。「残念な」親を持ち、上肢、下肢、体幹に重度の機能障害を抱え、ほぼ横になった状態で電動車いすを操作する息子にとって、親以外の介助者の存在は生命線です。しかし何をするにしても、介助者の手配問題が大きく立ち塞がります。今回、息子はその場で初めて出会った人たちの力を借りて、想定外のいくつもの難局に対応したはずで、そうした小さな成功経験の蓄積が、「自立」への自信を深めさせたと思っています。  しかし、より重要な変化は、彼が多くのスカラーと交流することで、障害の多様性に目が開き、「障害」という言葉を自分の障害を中心に語る段階から、他の障害へ少し開かれた言葉として使えるようになったことです。障害や社会を内と外から見る視点と言葉を持つ者が「大人」であるとすれば、彼は「大人」の入口に辿りついたのかもしれません。息子いわく、物事を内と外の両側から見られるのが「大人」であるならば、大多数の健常者は「大人」ではない。お見それしました。 23ページ ■自分の能力を最大限に発揮できる方法で勝負することが公平なのだということを学びました 田中 佑典 /北海道・高校 1 年  今回 DO-IT に参加したきっかけは、小学校のころまで遡ります。そのころから勉強にパソコンを使いたいなと思っていましたが、どう現実化すればよいかということがわかりませんでした。そんな矢先、偶然インターネット上にこの DO-IT についての記事が載っていて、「これだ!」と思いました。  これまで、学校の先生に PC 利用の交渉をしたことは、小・中学校で 1 回ずつしたことはありました。しかし、自分でも具体的にどう活用していくかというイメージが湧かず、学校にもただ「PCで板書をさせてもらったり、試験を受けさせてもらったりしたい。」としか言えなかったため、学校の先生には「字は書けるから、書いた方が自分自身のためにもいい。」と言われてきました。自分は肩が凝ってしまう、手が疲れてしまうなど苦しくなる一方で、板書や試験の解答にかかる時間も人より長くなって、時間が足りなくなってしまうことが多々ありました。  しかしプリプログラムや会期中のディスカッションなどを通して、周りと同じ方法で勝負することが公平なのではなくて、自分の能力を最大限に発揮できる方法で勝負することが公平なのだということを学びました。また、たくさんのディスカッションで、自分の言っていることを理解してもらえないという苦手意識もなくなり、今では合理的配慮までの道のりはまだ長いものの、学校の先生とも合理的配慮について交渉することができるようになりました。  また、今回初めての一人旅で、東京の街というよりも、出身地である北海道の外を歩くのも初めてでした。僕は、同じ道を何度も歩かなければ道を覚えることができないという特性があります。しかし、携帯電話のナビ機能を使うことによって、自分の乗るべき電車の路線、進むべき道順を順序立てて知ることができ、会期中はほぼスムーズに移動することができました。そして PC についても、OneNote や Visio などのアプリケーションを使うことによって文章やノートなどを見やすくすることだけではなく、これまた自分の性質である聴覚優位を利用して学習を進めていく事ができること、また、しないければならないことや頭の中で混乱している物事を簡単に整理することが、これらのアプリケーションを使うことによってできるという大発見もありました。  また僕は、大学に入学してから、どう生活していけばいいかということは具体的には全くイメージできていませんでした。しかし、先輩スカラーのみなさんの話や熊谷晋一郎先生の「依存先を増やすことが自立につながる」という話を聞いて、頼ることができるものはどんどん頼っていっていいのだと思えるようになりました。そうすれば、大学入学後も自分が学びたいことに専念することができると思いました。  これまで僕は、障害が軽いことで、健常者でもなく障がい者でもなく、それでは自分は一体何者なのかと悩んできました。しかし、今回、自分のことをわかってくれる人にたくさん出会えて、これから健常者の障がい者に対する見方や障がい者同士の見方を自分たちの手で変えていくことができるのではないか、と思えるようになりました。というのは、これから健常者も障がい者も IT 機器などを使うことによって、自分の能力を補完して、自分の能力を最大限に発揮できる社会を創り出すことによって、障害があるかどうかや年齢・性別などに関係なく、お互い快適に過ごせる社会にすることができるのではないかと考えています。そして、そうなれば障害を持っている・持っていない、またその障害が重い・軽いに関係なく、またそれを差別的に見ることもない世界が生まれるのではないか。そして、僕がその先駆者になれればいいなと思います。  僕の将来の夢は、脳科学者になることです。そして、自分のできること・できないことを簡単に、脳からわかるようにしたいです。そうすることによって、誰もがみんな苦手なことも含めて、同じように学校で授業を受けなければならないといったことで辛い思いをせず、またできることを伸ばすことによって他人のできないことを補完し合えるようになって、先に書いたように自分の能力を最大限に発揮できる社会を創り出すことができればいいなと思っています。そのためにも、これから北海道で合理的配慮を求めてもいいのだということを、他のたくさんの障がい者の学生・生徒・児童、そしてもちろん一般の方々にも知ってもらえるように、まずは函館市内で少しずつ広げていきたいなと思います。 ■田中 亜貴子(保護者)  「夢のようだ!」届いたパソコンやソフト等の機材を使い、息子は興奮しました。プレプログラム時から自分の障害と改めて向き合い、また、それについて真剣且つ対等に話し合うことは、息子には初めての経験でした。親友と呼べる仲間が沢山できたと喜んでおりました。  仮死で産まれた息子は、訓練を続けながら地域の学校に通っていましたが、いつの頃からか「自分は障害者でも健常者でもない」と、壁にぶつかっていました。加えて、思春期頃から身体に痛みが出始め、腰椎の骨折を繰り返し、困難に対する不安を口にするようになりました。やっと出会った DO-IT のプログラムは、そんな息子にとって希望の光だったに違いありません。プログラム中、息子が自分らしく居られ、有意義な時だったことは、最終日の息子の様子を見てわかりました。DO-IT の修了証を玄関に飾り、毎朝それを見てプログラムの時の事を胸に登校しています。そして、学校に合理的配慮を求めました。まだまだ難しいようですが、それが当たり前の世の中になるよう願うばかりです。  末筆ながら、プログラムに関わる全ての方々に、心より感謝申し上げます。今後とも宜しくお願いいたします。 24ページ ■「障害」という言葉について話し合うことができたのは、DO-IT でなくては経験できなかった 中尾 優理 /佐賀県・高校3年  自分の記憶をしっかり持って、東京に出たのは初めてでした。わたしの、普段の生活の中で見る人数を遙かに越えた人を見て、匂いと音と、縦横無尽な動きがあって、それは田舎育ちのわたしにとって、また感覚過敏の特性を持つという面から見ても、DO-IT Japan で過ごした日々は、飛び抜けて情報の多い毎日でした。  DO-IT に参加して、それはどれも貴重な経験だったけれど、中でも1つ、実際に「支援機器」を使わせていただいたことは新しい体験でした。それまでのわたしがしてきたことは、自分の特性をいかに「ごまかす」か、ということで、「言葉」が空間を占める中にいても、その言葉の受け取り方を変えよう、と試みることでパニックを避ける、という方法を練習していました。わたしにその訓練は有効ではあったけれど、体力も必要で、時間がかかるものでした。しかし、その方法では周りの言葉が聞こえなくなる訳ではなくて、相変わらず音の多い授業などの場面では、聞き取りづらさを感じていました。「言葉」の問題は薄くすることができても、「音」の多さに対応できる訳ではなかったのです。それが DO-ITの研修の中で、「ノイズキャンセラーヘッドフォン」とマイクの音源を耳につけたイヤホンに飛ばしてもらうことで、格段に声を聞き取りやすくなりました。そこには、わたしが取り組まなければいけないことは 1 つもなくて、ただ機器をつけるだけ、それで、これほどの快適さを手に入れることができるのか、と、とても驚きました。  わたしの抱える困難は、我慢しなくていいことでした。だけれども、しっかり伝える手段をもたなくてはいけない、と強く感じました。実際にプログラムの中で、涙が止まらない、というパニックに突然包まれてしまったとき、わたしはその場で説明することができませんでした。完璧に参加しよう、という目標ではなかったけれど、今、プログラムに参加できなかった時間を考えては、あのときの自分の行動の正しさはどこにあったのだろう、と考えなおします。どんな場面でも、等しくパニックに対応できる、というのを今はとても無理に思えてしまうけれど、将来のわたしが「そんなことはなかったよ」と言うことができるように、少しずつでも前進していきたいと思っています。  また今回、わたしと異なる困難を抱える人と出会い、わたしが何気なく送れている日常の中にも、今まで気づかなかった困難が隠れていることに気づかされました。そしてその困難は、当事者にとって忘れられてしまってはとても困るものだと感じました。例えば電車乗ること、降りること、そこに駅員さんの存在が必要なんてことは今まで考えたこともなくて、DO-IT で車いすを利用する人と過ごして初めて、気づいたことでした。日常の中に困難はすごく沢山隠れているのかもしれない、程度も種類も違う困難が、DO-IT で過ごす中で、とても多様なことに気づきました。この「多様性」という言葉はキーワードになっている気がしていて、その必要性は様々な場面で現れるのだとも、今回気づいたことです。  わたしの困難は、日常の中で忘れてしまわれやすく、見えないもので、見えないために曖昧なもので、どうやったら伝わるのだろう、といつも考えていました。そして対照的に、いつも目に見えてわかる困難を抱えた人と「障害」という言葉について話し合うことができたのは、DO-IT でなくては経験できなかったことだと感じています。わたしが考え付かないことを、スカラーのみんなはそれぞれに考えていて、それがとても新鮮で、新しくて、それぞれにみんなの体験を通して出てくる、言葉の確かさを感じました。  先輩スカラーの方の企画された発表やグループディスカッションでは、受験生のわたしにとって、大学のことを身近に感じることのできた良い機会となり、大学生になれたときには参考にしたいことばかりでした。  プログラム初日の夜に、サプライズで誕生日ケーキを用意して頂いていたこと、ホテルで先輩スカラーさんと同じ部屋に泊まりながら話したこと、チューターさんに話を聴いていただいたこと、講義体験の中で、DO-IT ジュニアスカラー達の疑問を聴けたこと、講義体験では、ボイスレコーダーとパソコンを使ってハイテクに記録したこと、話し合って決めた出発時間、満員電車での移動 etc……すべてが密度の濃い時間でした。その中でも、わたしが自分の言葉を発したとき、受け取ってくれる人に出会うことができたこと、それが何より嬉しかったです。夏季プログラムが終わってからも続いていくつながりを、とても大切にしていきたいと思っています。  わたしは、高校の先生から教えていただいたDO-IT Japan のプログラムに応募し、13 スカラーとして参加することができて、多くのことを学びました。DO-IT で見つけた新しい発見、初めての体験、その中で戸惑うこともあったけれど、とても感謝の気持ちで一杯です。また、この場所から出発したいと思います。 ■中尾 知佳子(保護者)  高 1 の秋から不登校になった娘が、自閉症スペクトラム障害の診断を受け、発達障害の子どもたちを受け入れる県立高校へ転校。3 年生になったある日、先生からアドバイスをいただき、この DO-IT Japan の夏期プログラムに参加しました。他者からは見えにくい障害と言葉に対して独特の感覚をもつ娘は、プログラム参加中にも混乱して、すべてに参加することができず、残念なところもあったようです。しかし、そのことでまた自分を知ることができました。生きづらさを抱え、悩み、苦しんできた娘は、大きな期待と希望を託して、DO-IT に参加しました。そして今、自らこの障害を解明する研究者になりたいという夢をもって、自身の進路を考え始めています。  この夏に出会ったDO-ITのスカラーの皆様と先生方、スタッフの方々に多くの力と希望、思慮をいただき、これから歩み始める道に、暖かい光が差し始めました。障害を持つが故に開いた新しい扉!障害が人生にとって決してマイナスではなく、新しい扉を開く鍵を与えられたのだと信じて、私たちも娘と共に、この感謝の気持ちを忘れずに歩んでいきたいと思っています。 25ページ ##Bキネクト OAK プログラム 障害の重い子どもたちのコミュニケーションを再考する 2013 年 6 月「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、通称「障害者差別解消法」が成立しました。法的に「合理的配慮の不提供の禁止」が定められた今、DO-IT の活動を通じて合理的配慮の必要性を訴えてき た私たちが何をすべきかについて振り返りました。  11 月 30 日に品川の日本マイクロソフト株式会社にて「キネクト OAKプログラム」を行いました。キネクト OAK プログラムは、わずかな指や顔の動きをスイッチとして取り出すことができる OAK(Observation and Access with Kinect) を使い、重い障害のある子どもたちとのコミュニケーションを確実なものにしていくことを目指しています。このプログラムには脳性まひや脊髄生筋萎縮症などの障害を持つ、5 歳〜 11 歳までの子どもたち 6 名とその家族や担当の先生など合わせて 27 名が参加しました。  OAK とは、日本マイクロソフト株式会社の入力デバイス「キネクトfor ウィンドウズ」を応用して、東京大学先端科学技術研究センターと日本マイクロソフト株式会社が開発した身振りや音声などで家電などの機器を操作できる支援ソフトです。  プログラムではまず重度肢体不自由・重複障害のある子どもたちとのコミュニケーションに関するセミナーを行いました。その後、3 つのグループに分かれ、OAK のモーションヒストリー機能使ってお子さんの動きをモニタリングしたり、エアースイッチでパワーポイントスライドを動かしたり、DVD の再生/停止したりするなどそれぞれの生活に合わせた活動を行いました。  DO-IT Japan ではこのプログラムを通して、運動機能に重い障害を持つ子どもたちの自立を支援していきたいと考えています。 #保護者の方からの感想を一部抜粋してご紹介します ■阿部舜也(9 歳)・阿部真由美(保護者)  短時間の中、初めて体験するエアースイッチでしたが、設定してもらった左右の人指し指をたくさん動かして DVD を再生・停止・スキップ操作していました。自分の意思どおりの操作が出来ずに歯がゆかったかと思いますが、良い経験になったと思います。  テレビを見ている時、見たくないものは「替えて」と言うので、現在は家族がチャンネルを替えています。でも、大好きな戦いもののアニメを自分で選んで見れる日が来るのも近いのかな、と思えた瞬間でした。いつの日か、エアースイッチを使いこなせるようになって一人でできることが増えていけば、もっと楽しい日々の生活が待っている…と、将来に希望を感じました。 ■鈴木一慶(6 歳)・鈴木亜里沙(保護者)  スイッチでは狙って押さないといけない分、どうしても不随意運動がでる中での動きなので大変そうでしたが、エアースイッチの場合は動かすだけでいいので、不随意運動があまり出ることもなく楽に体を動かしていたように見えました。  見えないスイッチを体験するまでは、理解出来るのかな?と半信半疑でしたが、DVD が終わると手を上げていたので私達から見ると理解出来ている様に感じました。 ■滝澤燦(11 歳)・滝澤明浩(保護者)  キネクト OAK をうまく活用しながら日々の中に取り入れて行こうと考えています。その為の「テクノロジー」と「テクニック」を学んだと思っています。まだわからないことがたくさんありますが、彼の QOLを上げるために親としてたくさん汗をかくつもりです。 ■伴拓海(5 歳)・伴武郎(保護者)  今回の講習会を通して、印象に残った言葉があります。それは、「二十歳になった時の息子さんの、生活が想像できますか?」という言葉です。  思えば、息子の障害を告げられた時、先のことばかり考えて落ち込んでしまう毎日を過ごしていました。それが嫌で、あまり先のことは考えずに今まできたような気がします。そして、5 年あまりが過ぎました。息子は、情緒的にも随分成長し、生活もしやすくなってきました。よく笑うようにもなり、笑ってくれるとうれしくてついつい息子の喜ぶことを先回りしてしまう…。そんな風に過ごしてきました。しかし、それでいいのかな?という風に感じ始めているときに、今回の機会を与えていただきました。息子もいつまでの幼いままではありません。自分の意思を周りに伝え、自ら生活を楽しめる大人になってほしい!そう強く感じました。 ■菱田有連(10 歳)・菱田史恵(保護者)  沢山の子供達のコミュニケーションの一助になって、親御さん達や沢山のお友達と意思疎通が簡単にできる、健常者と障がい者の区別なく普通に日常会話ができる、早くそんな世の中になる事を期待しております。  プログラムを通じて、一緒に、有連の新しいコミュニケーションの世界を築きあげて頂ければと思います。 ■地引真生(9 歳)・地引尚史(保護者)  これまでのコミュニケーションの中では、必ずしも彼女自身が選択したものではなく、こちらの思い込みが入り込んでいる可能性もあるのかもしれない、という気付きを得ることができました。今後のキネクト OAK 体験に備えて、彼女自身が選択して決めるという場面をいくつか考えておきたいと思います。 26ページ ##CDO-IT Japan 秋季プログラム 秋季プログラムには、過去に夏季プログラムを体験したスカラーや、すでに大学に進学しているスカラーたちが参加します。協力機関や協力企業とともに、社会に向けた自己表現や、就労を通じた社会での活躍に関するプログラムが行なわれました。これらの経験を通じて、参加したスカラーたちは社会の中での自分自身についての将来像を描きました。 #プログラム1日目 11 月 21 日 木曜 【テーマ:服装を通じて自己表現を考える】  文化服装学院からファッションの専門家を招いて行なわれたプログラム。服装を通じた自己表現と、場面やイベントに応じた服装の持つ社会的な意義、そして自分自身にとってのファッションの意味について、アパレル店でのコーディネート実践を通じて考えました。 写真 鈴木 洋子 文化服装学院 グループ長 写真 黒沢 友美 文化服装学院 専任講師 写真 末吉 史英 文化服装学院 研究員 集合@新宿駅東南口前広場 11:30 本日の服装について 文化服装学院の先生方から出された課題は「自分が最も素敵に見えると考える服装で来てください」…学生たちのチャレンジとそのポイントを最初に共有しました。 12:00 文化服装学院の先生方・学生たちとの合流 ファスト・ファッション店へ出発 新宿のファスト・ファッション店を訪問。店舗のアクセシビリティは?試着はどうする?どんな視点で服装を選ぶ?流行や TPO を意識することの意味は?・・・障害のある学生、チューターを務めるスカラー以外の大学生、文化服装学院で服装について学ぶ学生、みなが意見を交わしながら実際にいくつかの服を選びました。 15:30 活動結果の共有とまとめ 身体障害があり、購入する服の形を制限していて、服選びに苦労していた学生が、ちょっとした着方の工夫で一般的な服を選べるようになったり、これまで自分で服を購入したことがなかった学生が自分で選んでみたり、複数の色を取り入れたコーディネートについてアドバイスを受け、初めて明るい色の組み合わせを選んだり…各自がどのようなチャレンジを行ったのか、全員で共有しました。 17:00 ディスカッション「自己表現について」 自己表現をトピックとした話し合いでは、障害のある自己のイメージと、服装でおしゃれをすることの間で感じていた違和感や、車いすなどの「見える障害」に対して感じる他者の視点についての率直な感想も。一方で、自己表現や流行というより「着たいものを着たい」「どうしてもその服装を着たい」という感覚についても語られました。議論を通じて、服装とは、他者に向けて自分を着飾ることではなく、正直な自分自身を表現し、またそれを楽しむことであるという感覚が共有されました。 27ページ #プログラム2 日目 11 月 22 日 金曜 【テーマ:働くこととセルフ・アドボカシー】  プログラム 2 日目は、富士通社の方々とともに、働くことのリアリティや、多様な人々が社会で活躍し、新しい価値を生むことについて、議論やワークショップを通じて考えを深めました。 写真 森 淳一 富士通株式会社 統合マーケティング本部 総合デザインセンター 部長 写真 高本 康明 富士通株式会社 統合マーケティング本部 総合デザインセンター エキスパート 写真 内田 奈津枝 富士通株式会社 統合マーケティング本部 総合デザインセンター 10:00 ラウンドテーブル・ディスカッション 「社会での活躍:障害がある人たちの就労をリアルに考える」 富士通社で働く障害のある方々と、その同僚である方々をお招きしました。働く場面でのリアルについて、障害のある人々が実際の就労場面でどのように毎日を送っているかについてお話を伺いながら、将来の社会参加について全員で意見交換しました。 12:00 ランチョンセッション 「生活スタイルとワークスタイル」 「ワーク・ライフ・バランス」と呼ばれるように、職場での仕事と家での生活スタイルは、互いに深く影響し合っています。お弁当をとりながら、それぞれの生活スタイルと働き方について先輩の話を聞き、自分自身のリアリティを膨らませました。 13:00 ワークショップ 「働くこととセルフ・アドボカシー」 自分自身が社会で活躍することや、働くことを考えたとき、職場や環境の側に自分を合わせるばかりではなく、自分に必要なことを周囲に求めていくことも大切です。その際、自分の力が発揮できる環境や、働き方の新しいスタイルを考え、伝えていくことも必要です。障害のある人にとって、社会で活躍する上での重要なツールとなる ICT の利用の未来をキーワードとして、未来に向けて何を発信すべきかを考えるワークショップを行いました。 16:00 本日の活動まとめ /DO-IT 秋季プログラムに参加しての意見発表 #DO-IT Japan 海外研修  DO-IT Japan では、文化やライフスタイルを含めた海外の多様な価値観や社会制度、障害のある人々への支援のあり方を実際に体感する経験を得るため、若干名の大学生リー ダーを対象とした海外研修プログラムを行っています。2013 年の海外研修プログラムで は、齊藤真拓さんが選ばれ、米国カリフォルニア州ロサンゼルスおよびサンディエゴに、2 月 27 日から 3 月 3 日まで滞在しました。  ロサンゼルスやサンディエゴ市街、ラホヤビーチ等のアクセシビリティ調査、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の障害学生支援室訪問、カリフォルニア大学ノースリッジ校が主催して行われる CSUN カンファレンスへの参加を行いました。米国という日本とは歴史や文化の異なる国で、障害がどう捉えられ、また障害のある人が実際に暮らしているのかについて実体験を通じて学びを深めました。 ※齊藤真拓さんの報告書は、DO-IT Japan ウェブサイトの「海外研修プログラム」のページで公開しています。 28ページ ##D一般公開シンポジウム 「合理的配慮が実現するとき・これから私たちは何をすべきか」  2013 年 6 月「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、通称「障害者差別解消法」が成立しました。法的に「合理的配慮の不提供の禁止」が定められた今、DO-IT の活動を通じて合理的配慮の必要性を訴えてきた私たちが何をすべきかについて振り返りました。 #シンポジウム【話題提供T】 「高校・大学入試と大学での学びにおける合理的配慮」 近藤 武夫 東京大学 先端科学技術研究センター DO-IT Japan 大学生リーダー  国連の障害者権利条約の批准に向け、日本国内版の差別禁止法である障害者差別解消法が成立しました。この法律は 2016 年 4 月に施行されることになっています。教育機関について言えば、施行後は、国公立の小中高、大学には障害者への差別禁止と合理的配慮の提供が義務づけられ、私立校にはそれらに努力義務が課されることになります。障害のある人もない人も、ともに社会参加するための大きな一歩が日本の歴史に刻まれたといってよいでしょう。  DO-IT Japan では、2007 年の創設から、障害のある学生の大学生活や入試選抜で必要な合理的配慮が得られるよう、スカラーとともに求めてきました。法的な意味での「合理的配慮」が日本にも生まれることが決まった今、これまでの活動を振り返り、スカラーたちの高校や大学入試におけるチャレンジとその結果をまとめました。スカラーたちから、これまでのチャレンジで感じたことや、これから彼ら自身が伝えていきたいことについて、彼ら自身の言葉が会場の参加者に伝えられました。 29ページ #シンポジウム【話題提供U】 「小学校・中学校の授業やテストでの合理的配慮」 平林 ルミ 日本学術振興会/東京学芸大学 新谷 清香 東京大学 先端科学技術研究センター  タブレット PC で読み書きを補い、自分の学び方をどんどん身につけているDO-IT 小中学生スカラーたち。中には、学校でもテクノロジーを使って勉強したいという気持ちが強くなってきたスカラーがいます。しかし、学校で配慮を得る際には他の児童・生徒との公平性を担保することが課題となります。DO-ITJapan は、学校と家庭との橋渡しをしながら、スカラーの学びを支援しています。学校の授業やテストでの機器利用について実際の事例を紹介し、初等教育における合理的配慮の現状を会場のみなさんにお伝えしました。 #シンポジウム【ディスカッション】 「未来の学びの環境と合理的配慮」  合理的配慮が認められる将来では、どのように周囲に意見を伝え、また関係者と合意を形作っていくかがスカラーたち全員の現実のテーマとなります。  会場のスカラーから、配慮を求めることについて多くの意見が述べられました。一見してわかる障害にある困難と、外見からは見えにくく、障害と非障害のグレーゾーンにある困難について、それぞれの困難を持つ人々が対立ではなく相互理解していくこと。自分が身近なこととして経験している障害のある人々への偏見を、自らの小さな行動を通して理解のある社会へと変えていくための意思。スカラーたちが将来のリーダーとして活躍するために必要となることがディスカッションを通じて共有されました。自分自身の障害と困難という視点を超えて、多様な人々がともに暮らす未来に向けた情報発信が個々に期待されることになります。  DO-IT Japan をバックアップしてくださっている企業・団体からのゲストの方々からは、多様性を認める社会の実現に向けて、それぞれの皆さんがチャレンジする先端の取り組みの紹介と、スカラーを含めた障害のある若者たちへ向けたエールが送られました。 写真 齋藤 憲一郎 文部科学省 初等中等教育局 特別支援教育課 特別支援企画官 写真 辻 直人 文部科学省 高等教育局 学生・留学生課 課長補佐 写真 加治佐 俊一 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 写真 加藤 公敬 富士通株式会社 デザイン戦略担 当 シニア・バイスプレジデント 写真 加藤 晋平 ソフトバンクグループ/ 株式会社エデュアス 取締役 写真 長谷川 寿一 東京大学 理事・副学長 写真 西村 幸夫 東京大学 先端科学技術 研究センター 所長 30ページ ##EDO-IT Japan の概要と未来への展望  DO-IT Japan は、障害や病気のある若者から未来のリーダーを育てることをミッションとしています。2007 年度の開始当時から、障害のある高校生たちに障害のある人を支援するテクノロジーを提供し、大学進学での配慮を求める上でのセルフ・アドボカシー(自己権利擁護)を支援し、必要な配慮を得た上で高等教育へ進学することを支援してきました。2010 年からは大学生を対象としたプログラムを、2011 年からは読み書き障害のある小学生向けプログラムを開始し、2013 年からは読み書き障害のある中学生も募集を始めました。DO-IT Japan は、障害や病気による困難のある若者のライフコースに沿ったプログラムを用意し、ICT 活用や大学体験、社会体験を通じて、次世代の社会を担うリーダーを育成していきます。 #障害のある児童生徒の進学をめぐる状況  ペンを持てないなど文字を書くことが難しい、紙に印刷された文字が見えない/読むことが難しい、騒がしい環境で集中することが極度に困難、口頭での指示や問題提示が聞こえない/把握しづらいなど、学びにおいて困難を感じている障害学生がいます。試験などの競争的な場面で、そうした障害に対する配慮が得られない場合、試験を受けて高校や大学に進学する潜在的な能力と進学への希望を持っていても、それが叶わないという現状があります。DO-IT Japan では、障害のある生徒が高校や大学に進学する際に出会う入試での困難という「入り口の問題」に 2007 年の開始当初から挑んできました。  2013 年、日本の障害者にとって大きな変化が起こりました。国連障害者権利条約の批准に向けて、日本国内でも、「障害者差別解消法」という障害者差別禁止のための法律が制定されました。施行はまだ数年先の 2016 年 4 月ですが、それ以降は、障害者の差別的取り扱いと、合理的配慮の不提供が禁止されます。これまで、法的なバックアップがないままに、周囲の善意による応援や DO-IT からの支援を受けて、スカラー自身が配慮を得るためのチャレンジと交渉を行ってきました。これからは、配慮を求めることが当然の権利として認められ、大学等もそのための準備を行うことが法令遵守として求められる時代に入っていきます。 図 1 に、1970 年代から障害者差別禁止法がある米国と、現在の日本との障害学生数の比較を示しています。人数だけが問題ではありませんが、障害者の社会参加の状況をはかる指標であるとはいえます。  高等教育への入り口の問題を超えて、次にやってくる就労や社会参加に関する出口の問題、そして社会でより活発に活躍すること、より障害の重い子どもたちの学習や社会参加といった問題が見えてきます。そうした問題に立ち向かう上でのリーダーとなる人材を、障害のある人々の中から育てる支えとなるべく、DO-IT Japan も着実な取り組みを続けていきます。 #図 1:アメリカと日本における全学生に対する障害学生の割合 11% アメリカの障害学生 [出典]米国会計検査院(2009) 0.37% 日本の障害学生 [出典]日本学生支援機構(2013) #DO-IT Japan と障害学生数の将来予測 2006年 障害学生在籍率/0.16% 約5000人 2007年 DO-ITスカラー参加人数 12 2008年 DO-ITスカラー参加人数 23 2009年 DO-ITスカラー参加人数 32 2010年 DO-ITスカラー参加人数 46 2011年 DO-ITスカラー参加人数 62 2012年 DO-ITスカラー参加人数 75 2013年 障害学生在籍率/0.37% 約1万2千人,DO-ITスカラー参加人数 89 2015年 障害学生在籍率/0.5% 約1万5千人,DO-ITスカラー参加人数 120 2020年 障害学生在籍率/2.0% 約6万人,DO-ITスカラー参加人数 175 31ページ #DO-IT Japan 2013 年度データ ■参加者の障害内訳 盲ろう 1 人 肢体不自由 37 人 発達障害 37 人 聴覚障害 6 人 視覚障害 5 人 高次脳機能障害 3 人 ■参加者の出身地 2013年度 北海道, 岩手, 新潟, 長野, 千葉, 東京, 神奈川, 大阪, 大分, 佐賀 2007年から2012年度 青森,宮城, 山形,福島,群馬,埼玉, 茨城,静岡,愛知,石川,福井,滋賀,京都,奈良,和歌山,兵庫,愛媛,香川, 岡山,広島,鳥取,島根,山口,福岡, 熊本,沖縄 ■参加者における大学進学者総数 2007年度 参加者総数 12 大学進学者総数 0 2008年度 参加者総数 23 大学進学者総数 3 2009年度 参加者総数 32 大学進学者総数 9 2010年度 参加者総数 46 大学進学者総数 20 2011年度 参加者総数 62 大学進学者総数 30 2012年度 参加者総数 75 大学進学者総数 36 2013年度 参加者総数 89 大学進学者総数 48 ■メディア掲載(2013 年 12 月現在) ・NHK ハートネット TV(2/20、6/19) ・デーリー東北新聞(2/24) ・朝日新聞(4/16、5/8、5/9、5/10、5/11、5/14、5/15、5/16、5/17、5/18) ・毎日新聞(9/4) ・教育医事新聞(11/25) .... その他多数 #DO-IT Japan への参加の流れ ■4 月上旬頃 ジュニアスカラー(小学生・中学生)、スカラー(高校生・高卒者)募集発表 DO-IT Japan ウェブサイト(http://doit-japan.org/) やチラシ等で募集発表します。参加希望者はウェブサイトから応募書類をダウンロードしてください。 ■4 月中旬〜 5 月上旬頃 ジュニアスカラー、スカラー応募期間 作成した応募書類を DO-IT Japan事務局へ郵送してください。 ■5 月上旬頃 第一次選考(書類選考) 応募書類に基づき、審査委員会によって参加候補者を選考します。 ■5 月中旬〜 6 月上旬頃 第二次選考(面接) 第一次選考を通過した参加者と面接を行い、参加最終選考します。 ■6 月上旬頃〜 参加準備オンラインミーティング パソコンや IC レコーダー等の機材と、それぞれの障害にあわせた支援機器を自宅へお送りします。その後、インターネットを通じ、夏季プログラムへ参加するための準備ミーティングを行います。 ■8 月上旬 夏期プログラムへの参加 ■8 月中旬以降 オンラインメンタリングへの参加 年間を通じて、メールやチャットミーティングを通じて様々なテーマについて専門家に相談したり、仲間と議論したりします。 32ページ 裏表紙 DO-IT2013 #主催 DO-IT Japan,東京大学先端科学技術研究センター #共催 ソフトバンクグループ(株式会社エデュアス,ソフトバンクモバイル株式会社),日本マイクロソフト株式会社,富士通株式会社 #協力 沖電気工業株式会社,オリンパス株式会社,株式会社京王プラザホテル,株式会社トヨタレンタリース東京,相模原療育園,フォナック・ジャパン株式会社,文化服装学院 #後援 厚生労働省,文部科学省(五十音順) #お問い合わせ DO-IT Japan事務局 153-8904 東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 03-5452-5064(TEL&FAX) info@doit-japan.org http://doit-japan.org/ 以上