DO-IT Japan 2014 Report Disabilities, Opportunities, Internetworking, and Technology Japan 【見出し記号の凡例】 見出しレベルの大きいものから小さいものの順に、次の記号を使用しています。 ## 見出しレベル1 #  見出しレベル2 ■ 見出しレベル3 □ 見出しレベル4 【見出し記号の凡例 終わり】 1ページ 表紙 DO-IT Japan 2014 2ページ ##DO-IT Japan 2014 レポート Diversity, Opportunities, Internetworking, and Technology 「洗濯と選択」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・03 @小学生・中学生向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・04 夏季プログラムを終えて・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・08 A高校生・高卒者向けプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 夏季プログラムを終えて・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 B2 年次以降スカラーの活動 ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 CDO-IT School ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 D海外研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 E一般公開シンポジウム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 FDO-IT Japan の概要と未来への展望 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 3ページ ##「洗濯と選択」  今年も新しいメンバーが駒場に集まり、様々な経験をして全国各地へ帰って行った。報告書を読めばスムーズに流れる会のように見えるが、夏のセミナー期間中は様々な事件が起こる。これまで「障害があるのに頑張っているね」と褒められ頑張ってきたが生徒たちが、DO-IT に来ると「自分で決めて動きなさい」と指示されるのだから当然である。途方に暮れ動けなくなる学生、自分の思いを伝えられず涙する学生など様々である。受験があるから子どもはそれに集中すればいいと思っている人も多い。DO-IT は何もやってくれないのかと親からクレームも届く。それに対して1つ1つ丁寧に説明しているスタッフには頭が下がる。多くを指示しないのが DO-IT 流。その中で自己決定する楽しさに初めて気付く生徒も多い。親や友人との関係の不自然さに気付く者もいる。こういった変化が生まれるのも、DO-IT の主旨を理解して、ゆっくり参加者に付き添うスタッフの力であるに違いない。  8 回目の DO-IT を終えて何が変わったのか、我々の活動がどんな役割を果たしたか少し考えてみると、テクノロジーの活用方法の提案や、授業や試験における合理的配慮という考え方の整理は DO-IT が社会をリードし、発信してきたのではないかと自負している。小学校のうちからこういった保障が出来たなら、学習にもっと積極的に参加出来ていた子どもたちもいるに違いない。インクルーシブ教育システムが推進される中、DO-IT のこの部分の役割はさらに大きくなると予想している。一方、子どもたちの自己決定や自立生活の支援という意味では、DO-IT は社会にあまり大きなインパクトを生んでいない。他者依存的なのは DO-IT に参加する障害のある学生たちだけでなく、受験生全てに当てはまる事かもしれないが、障害がある故にその問題が増幅している。30 年前と比較し、障害のある人たちが外出するハードルは、障害に対する見方の変化、街のバリアフリー化、社会制度改革によって大きく改善した。これは良い事であるが、成長の過程において困難に直面する経験が、30 年前の子どもたちに比べて今の子どもたちでは圧倒的に減っている。DO-IT のスカラー達が、段差のある建物には近づかない、読めないメニューは読まないといった行動にそれは反映している。  社会からバリアが消え去ることはない。そのバリアに対してどのように対処するかを子どもたちが考える機会を、常に家や学校で意図的に設定する必要性がある。「自分で洗濯してる?」とスカラーに尋ねると例外なく「いいえ」と返事が返ってくる。高校までは子どもであり、大学に入ってから大人へ向けて自立して行けばいいという社会全体の風潮が、子どもの自立を妨げている。自己選択と洗濯が関係していることに多くの人は気付いていない。目標を高等教育機関入学に置いてきた DO-ITの活動の限界を感じている。日常生活の中に踏み込んで仕掛けて行かねば、恐らく自立心は芽生えにくいのではないかと考える。  2015 年から新しい DO-IT がスタートする。小中学生へのテクノロジーを活用した学習支援、中学生・高校生への入学試験配慮申請支援、大学生・社会人への生活支援といった新しい機能を持つ DO-IT に期待していただきたい。 DO-IT Japan ディレクター 中邑 賢龍 4ページ ##@小学生・中学生向けプログラム  小・中学生向けプログラムも今年で 4 年目となり、ジュニアスカラーは総勢 27 名となりました。多様なジュニアスカラーの課題や目標に合わせて、今年は「アドバンス」「ビギナー」「チャレンジ」の 3 つのクラスを設け、それぞれのクラスでテクノロジーを活用した学習方法を学んだり、困っていることの解決方法を話し合ったりしました。 挿絵 11 ジュニアスカラーの渡邉幸音さんがデザインしたDO-IT 小・中学生プログラムの公式キャラクター A DO-IT Advance アドバンスクラス すでに学校の授業で iPad などの機器を使っており、テストでのテクノロジー利用や受験での合理的配慮を得る事を目指すクラス B DO-IT Beginner ビギナークラス これから学校の授業で iPad などの機器を活用したり、家庭での勉強や生活にテクノロジーをもっと活用できることを目指すクラス C DO-IT Challenge チャレンジクラス テクノロジーを利用しながら勉強し、さらに自分の興味を伸ばしながら新しいことにチャレンジする方法を活動を通して学んでいくクラス #2014 年 8 月 5 日 (火) ■C チャレンジクラス 13:30 テクノロジーと頭で謎解きに挑戦 突然与えられた、「日本一のハンバーガーを作ろう!」というテーマ…でも最初に与えられたミッションは、包丁研ぎとパテ(お肉)の素早い解凍!?切れない包丁を研ぐとどんなことが起こるのか、包丁の刃先や切った野菜の変化をよく観察します。アルミや銅板など複数の金属の上にパテを置くと、解ける速さが全然違う!やっとハンバーガーが完成したら、今度は俳句作り。「ハンバーガー」を通して色々なことが学べました。 まとめ Sponsored by ソフトバンクグループ 音読や手書きの苦手な子どもが学ぶためには、使いやすいテクノロジーが必要です。小・中学生スカラーの読み書きを補うタブレット端末を、ご提供いただいています。また夏季プログラム中の円滑なやり取りに携帯電話もお貸しいただきました。 5ページ #2014 年 8 月 6 日 (水) ■B ビギナークラス オリエンテーション 10:00 DO-IT がどんなプログラムなのか説明を受けました。スタッフの自己紹介とともに、便利なテクノロジーを紹介してもらいました。人数が多い教室でも、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンや FM 補聴器があれば先生の声がよく聞こえます。 11:00 iPad を使ってみよう! iPad を使えば、苦手な読み書きもこんなに楽になる!黒板をカメラで撮影したり、音声読み上げを使ったり、どんな場面でどんな機能が役に立つのかを学び、使い方を練習していきました。 ランチ&自己紹介 13:30 iPad を魔法のふでばこにしよう 午前中に学んだ iPad の使い方を、実際の勉強と似た状況の中でさらに練習していきます。勉強に役立つ色々なアプリの使い方も学びました。 おやつ・まとめ Sponsored by フォナック・ジャパン株式会社 ざわついた環境での聞こえを改善する FM システムを、夏季プログラム期間に無償でお貸しいただきました。マイクでひろった先生の声を耳元で聞ける受信機や、教室の後ろでもクリアに聞こえるスピーカーを、全スカラーの授業に使わせていただきました。 ■A アドバンスクラス 配慮なしでテストを受ける 配慮ありでテストを受ける 「配慮なしテスト」はいつもの紙とえんぴつで受けるテスト、「配慮ありテスト」は iPad(小学生)やパソコン(中学生)で受けるテスト。「配慮ありテスト」では、自分の読みたい部分を音声読み上げさせ、答えはタイピングやタッチパネルで記入します。テクノロジーを使ってテストを受けると、点数が上がるスカラーが何人もいました。 おやつ・まとめ 6ページ #2014 年 8 月 7 日 (木) ■C チャレンジクラス 10:00 料理を教科書にする!? 凸シェフから与えられたミッションをクリアして、「交流ランチ」の準備をしよう。ガーデンから野菜の収穫、英語のレシピの解読、机に飾る花の準備、それらをまとめる係、それぞれのスカラーが自分の役割を果たし、ランチの準備が整いました。 ■B ビギナークラス 10:00 iPad をノートに!授業体験 脳性麻痺の当事者で小児科医でもある熊谷先生を講師に迎え、「自分の困りごと」について話し合いました。iPad のマッピングソフトを使って自分の困りごとを整理したり、仲間の発表を聞いてマップを広げたりしていきました。マッピングソフトを使う事で考えを整理したり、意見が言いやすくなりました。 ■A アドバンスクラス 10:00 高校生プログラムに参加 『討論会!』 すでに勉強にテクノロジーを取り入れているアドバンスクラスは、高校生プログラムの討論会に参加しました。どうすれば今使っているテクノロジーを入試で使えるのか、意見を言い合い、交渉にチャレンジしました。 7ページ ■A アドバンスクラス B ビギナークラス C チャレンジクラス 12:00 交流ランチ 凸シェフとチャレンジクラスのスカラーが準備した、カレーパーティー!ライス・カレー・サラダの盛り付けは各自で工夫して、盛り付けコンテストも行いました。すべてのクラスのスカラーとスタッフが集まり、大いに盛り上がりました。 13:30 ハイパープレゼンテーション 2014 今年は 7 名のスカラーが、「ロボット」「戦車」「生き物」「イラスト」など、多岐にわたるテーマでプレゼンテーションしてくれました。先輩スカラー達の得意な分野の発表を聞いて、今年入った新しいスカラーはいい刺激を受けたようです。 おやつ・まとめ 16:30 DO-IT Japan 修了式 夏のプログラムもすべて終了です。DO-IT を支えてくださるたくさんの方の前で一人ずつご挨拶し、それぞれに修了証が授与されました。今年のプレゼンターは、元陸上選手の為末大さんでした。 写真 為末 大 特任研究員 8ページ #夏季プログラムを終えて ■もっと、自分の好きなことをやっていいんだ。石塚 瑚雪 /栃木県・小学 5 年  DO-IT で一番おもしろかったアプリは Map です。3D にできたり、ズームして細かいところまで見たりすることができます。エッフェル塔や凱旋門など、世界の有名な所も見ることができました。学校の社会は苦手だけど、世界旅行できたみたいで楽しかったです。 熊谷先生と困りごとリストについて話し合いました。私が困っていることを話したら、みんなも同じ事で困っていたみたいで、いろんな解決案が出ました。とてもうれしかったです。それから熊谷先生が東日本大震災のときに困っていたら、仕事仲間が助けに来てくれた話をしてくれました。自分も大変なのに他の人を助けに行くなんてすごいと思いました。 何でも機械に頼ったらダメだと思います。自分でやれることは自分でやった方がいいと思います。なぜかというと、できるのにやらないとできなくなってしまうからです。だから、自分の出来ることは自分でやって、出来ないことは誰かに少し手伝ってもらうといいと思います。私は読み書きが苦手なので、勉強を iPad に手伝ってもらうことにしました。 学校では出来ないことが多いし、いやな気持ちになることがありました。でも、iPad があれば楽しく勉強ができると思います。DO-IT Japan の先生たちが、自分のことを分かってくれる先生だったので、うれしかったです。もっと、自分の好きなことをやっていいんだなと思いました。本当の自分を見つけられたと思います。「ありのままの?」自分になれました。 ■石塚 陽子(保護者)  「私の漢字のドアは閉じてしまいました。もう開かないかもしれません。でも、大丈夫。私にはまだ図工の力があるから。私はこの道で生きていく…。」ディスレクシアの診断を受けた去年の四月、瑚雪は暗い部屋で独りベッドに横になり、そう決意するように歌っていました。涙を流していました。それから様々な学習方法を試してきましたが、勉強すればするほど娘は二次障害に悩まされるようになりました。  しかし、DO-IT での娘は違いました。DO-IT に参加している娘は、心から授業を楽しんでいるように見えました。自分の困難さを正しく理解してくれる先生方や仲間と出会い、自分の困難さと正面から向き合うことができました。そして、学校の先生や親の支援をただ待っているのではなく、自分で工夫して自分の困難さを補えばいいということに気づかせてもらいました。「魔法の筆箱(iPad)」があれば、読みたいものを自由に読み、知りたいことを自由に知り、思うところを自由に書くことができる。今まで読み書きのせいで失っていた人生の選択権を取り戻せたような気がしました。  DO-IT からの帰り道「もう、ママがいなくても自分で調べるから大丈夫だよ!」との頼もしい台詞に、娘のこれからの成長が楽しみになりました。ありがとうございました。 9ページ ■DO-IT に参加出来てよかった。海邉 飛鳥 /高知県・小学 6 年  僕は DO-IT に参加して、良かったと思います。何故かと言うと、自分は DO-IT があることも知らなかったし、応募する時も自信が無かったからです。だから、DO-ITに参加出来てよかったです。  最初にオリエンテーションがありました。DO-IT に関係がある人を紹介してもらって、最後の賢龍先生の紹介の時、賢龍先生が 3D プリンターを起動させていました。その後、賢龍先生に、「これ、なんだと思う?」と言われたので、僕はまさかだけど、「3D プリンター」と言いました。でも、それは本当に 3D プリンターでした。  その後、11 時から一時間程度、iPad の機能の使い方を習いました。次に、昼ご飯を食べた後に自己紹介をしました。みんな、iPad を使って自己紹介をしていました。同じ趣味がある人もいました。その次に 1 時半から一時間半くらい、「iPad を魔法の筆箱にしよう」という授業を受けました。その授業では、iPad にプリントを取り込んで、iPad でそのプリントをやるというものでした。手書きより iPad を使ってやる方が早いと思いました。3 時からおやつを食べました。おやつは、五種類のアイスと鹿児島のスカラーの人が持ってきた鹿児島のお土産でした。そして、最後のまとめをしました。そのまとめ中に、3D プリンターで作っていたものが出来ました。その後 3D プリンターの仕組みや、家庭用のもあるのか聞きました。そして、一日目が終わりました。  次の日の 10 時から二時間くらい、「iPad をノートに、授業体験」をしました。その時の先生が、車椅子で生活をしている人でした。その後、12 時から昼ご飯を食べて、その後、1 時半からハイパープレゼンテーションをしました。中には、面白く発表する人もいました。次におやつを食べました。そのおやつがとてもすごいものでした。おやつを食べ終わってから、隣のエネオスホールという所で DO-IT の修了式がありました。その時にスカラー認定証を渡してくれた人が、世界の陸上大会の銅メダルをとった人でした。でも、その人がどれだけ凄いか自分は分からなかったけど、終わってから聞いてみると、凄い人だとわかってびっくりしました。だから、DO-IT に参加出来てよかったです。 ■海邉 香織(保護者)  小 2 の時に広汎性発達障害の診断を受けました。当時の本人は特に困難を感じている様子もありませんでしたが、学年が上がるにつれ少しずつ勉強も難しくなり宿題も増え、特に漢字の書取りは、1 ページ 104文字と毎日 1 〜 3 時間も格闘し、必死に頑張った結果が学期末のほぼ白紙の漢字テスト。これでは何のための宿題なのか解りません。  学校では連絡帳を書いてこないため忘れ物が多く、作文に至っては完全放棄。このままでいいのか悩んでいたところに、毎月通っている療育福祉センターの言語聴覚士の先生から DO-IT の活動を紹介されました。確かにパソコンやタブレットは正確に使いこなしていたので、これが学校の勉強に結びつけば何かが変わるのかもしれないと応募しました。  皆と同じを求められる学校では、どうしても注意されることが多く「どうせ無理」と何ごともすぐに諦めてばかりですが、DO-IT では「違っていていい」が大前提。少しずつ自分らしさを発揮するようになった夏期プログラムは、とても話の合う仲間との出会いがあり貴重な経験となったことと思います。プログラム後もメッセージで相談事や趣味の話しをしたりと交流が続いています。  これから飛鳥が飛鳥らしく成長していけるように、タブレットやパソコンをどう活用すればよいのか、色々な可能性を考えていきたいと思います。 10ページ ■美味しい思い出。刈込 陽登 /千葉県・小学4年  DO-IT では、いろいろなアプリを教えてもらいました。これから僕は、iPad のアプリを使って、次のことをしたいと思います。「自分で調べる」「予定を管理する」「考えをまとめて文章にする」です。調べるのには、Googleを使っています。ググるのは好きです。カレンダー機能では、スケジュール管理ができ、アラームで知らせてくれます。考えをまとめるには、マインドマップが必要です。でも僕は、マインドマップが苦手なので、誰かうまいやり方を教えて欲しいです。  DO-IT Japan では、たくさんのスカラーに会いました。僕は、緊張して Keynote を使えなかったけれど、みんなの自己紹介やプレゼンテーションで、できる人がいました。物理や科学の話が出来るスカラーもいて、話が出来て楽しかったです。  凸シェフが、初日に作ったハンバーガーは、とても美味しかったです。最終日にみんなで食べたカレーライスも、すごく美味しかったです。ピザ、アイスなど美味しい思い出です。  難読漢字は、読み方がわからないから調べるのにすごく時間がかかったけれど、難しいことがわかった時は、とても嬉しかったです。熱伝導の実験では、大体の予想が当たって、嬉しかったけど、いずれにしろ普通に作った方が早いと思いました。俳句は、季語を入れたり文字の数が決まっていたりして難しかったです。季何さんの俳句は、おもしろかったです。僕も俳句に挑戦しました。 「東大で 母を待つ間に 蚊に刺され」  初日に、ほんの 5 分ほどの間に 30 カ所以上も蚊に刺されてしまって、足が真っ赤になって、痒くてたまらず泣きそうになった。かゆみ止めをもらって助かったことを読んだ俳句です。  包丁研ぎをやりたかったけど、他のスカラーがやることになり、僕は家でやってみることにしました。DO-ITで、研ぎによってトマトの味が違うことを確認して、僕が家の包丁を研いで切れるようになったので、またやりたいと思います。僕が DO-ITへ行くのに応援してくれた学校の先生方にお礼を言いたいです。 ■刈込 加代子(保護者)  まず、DO-IT の先生方、学校の先生方、医療関係の先生方など、たくさんの方々にご支援いただき、参加させていただくことができました。誠にありがとうございました。  プログラム中は、子供達が楽しさを感じながら「なるほど!」と気付く仕掛けがたくさん有りました。他のお子さん達が検索をした画面等を見せてくれ、その画面がみんなバラバラだったので、各自が頑張っているんだなーと感心しました。  愚息に「お母さんが、参加したかったな」というと「大人は駄目だよ!」と楽しそうに取り組んでいたのが印象的でした。今後の課題は、日常的に、iPad の助けを借りて、自立すること、自分の考えをまとめることだと考えております。まだまだ不慣れで、名称のわからない物や事柄について、「どうやって調べたら良いんだろう?」と悩んだり、リマインダーに登録したのに iPad を近くに置いていなくて忘れたり、マインドマップを前に「・・・・」と悩む姿が見られますが、今回の感想文を苦労しながらも完成させたことは、彼にとってすばらしい成果です。  今後も、今回得た仲間と一緒に、なりたい自分になるチャレンジを継続して欲しいです。ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。 11ページ ■テストだけでなく普通に他の授業でも使えるようになったら。川勝 元喜 /神奈川県・小学 6 年  僕は、前から書くのが遅くて困っていました。書くのが遅れるために、黒板の文字を全部書ききれないことがよくありました。全て書ききれないので、テストの予習などの時に見れなかったり、あまり書いていないので次の日に前の日のことを踏まえて考えることができなかったのです。そのため字を書く事が嫌になり、自信がなくなり不登校になってしまいました。 そんなときに iPad を知りました。初めて使った iPadは使いやすかったです。黒板の字が写しきれないときがあったら写真で取ったり、タイピングをすれば書かずにメモが簡単にできるのでいいと思いました。僕は、メモをする時にこの4つのメモ機能を使います。タイピングメモ・録音メモ・写真メモ・カメレコメモの4つです。これを使い分ければメモするのが楽になります。僕は人の名前を覚えられないので、カメレコがとても便利だと思いました。ほかにも僕の苦手な勉強を手助けしてくれたり、今僕が夢中になっているコマ撮り映像を作ったりほかにもいろいろなことができます。  教室では、タブレットのほかにもいろいろな支援ツールを紹介してもらいましたが、その中でもいつも雑音に気をとられてしまう僕には、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンがとても合っていてずっと借りていました。DO-IT では、自己紹介でみんなの特技やこれからやりたい事、目指していることなどを教えてもらい、僕も勉強になりました。それから、国語で手書きとタブレットを使うテストを受けました。最初の手書きはすごくやりにくくて時間がかかりましたが、タブレットでやったときはすごくやりやすく時間も早く終わることができました。書くときにタブレットでタイピングをするので書くよりも早いからです。今後学校でも、テストだけでなく普通に他の授業でも使えるようになったらいいと思います。先輩たちのハイパープレゼンテーションでは、かっこいいプレゼンを見て、来年は僕も頑張ってやってみたいと思いました。  僕はスカラーになれたことを誇りに思い、それを胸に今後も DO-IT に参加していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。 ■川勝 桂子(保護者)  息子は4年生後半に、頭痛や嘔吐が続き、学校に行かない状態が続くようになりました。専門機関で調べた結果、彼は書くことに困難さがあって、“理解力”とのギャップに苦しんでいたというのです。書くのが遅く、漢字が書けないことを厳しく叱ってしまったこともありました。原因は分かったのですが、今後も“書くこと”でしか勉強は判断されません。どうしたものかと途方にくれていたときに DO-ITJapan の活動を知りました。  タブレットについては、少し前から DO-IT Japan 関連の機関で履修させていただく機会があり、「これがあれば、できる!」と自信を取り戻すことができていました。そして今回は、同じ悩みを持つ仲間と時間と経験を共有することによって、ツールは、使いこなした上で自分の考えを表現していくことが大切だと感じ、更にやる気が湧いたようです。また、中邑先生の最初のご挨拶にあった「ここでは何でもあり」宣言が特に印象深かったようで“自分は自分のままでいいんだ”と、気持ちが楽になったそうです。  今後もこの広がりを大きくして、同様な悩みを持つ子どもが差別されることなく、自分の力を思う存分発揮できる応援をしていきたいと思いました。 12ページ ■勉強というものがこんなに楽しいものなのだと実感しました。佐多 乙哉 /三重県・小学 5 年  DO-IT プログラムに行く前は、字を書いたり読んだりするのが苦手な友達がいませんでした。自分一人だけ字を書くのが苦手だと、学校に行くのが嫌でした。  僕は、サマープログラムに行く前、とても緊張していました。例えば、なれない言葉づかいで話ができるのか?とか、気のあった友達ができるのか?とか、ものすごく心配でした。でも、プログラムが始まってからどんどん緊張はほぐれて、楽しくなっていきました。なぜなら、僕と同じように、字を書いたり読んだりするのが苦手な子が集って一緒に行動するから、世の中には僕と同じような人がたくさんいるんだなと思って、心が軽くなりました。  そして、タブレットの勉強は難しいことばかりでしたが、楽しかったです。僕がプログラムで習って、一番便利だと思ったアプリを紹介します。そのアプリは、「UPAD」です。どこが便利かというと、プリントなどを写真に撮って、画面の中で拡大して書いたりできます。僕は、小さいマスに字を書くのが苦手なので、拡大して書くと楽に書けます。プログラムを終えて、今も家で、「UPAD」を使っています。  タブレットの勉強以外のことで、一番心に残ったことは、ハイパープレゼンテーションです。その中でも、水上陽太郎さんのプレゼンが心に残りました。その理由は、面白い戦車を発表していたからです。例えば、車体が無駄に大きくて橋を壊してしまったり、車体が長くてバランスが悪かったり、潜水艦用のスクリューが 5 つか 6 つぐらい付いてたり、色々な戦車があることを知り、興味を持てました。  次に心に残ったことは、中邑賢龍先生のことです。その中でも、3D プリンターを教えようとする時の強引さに、魅力を感じました。そして、できた 3D 作品が、ニワトリ型の鍋のフタの取っ手だったので、「それ、取っ手なんかい?」と、ツッコミたくなりました。  プログラムの全体に、とにかく楽しく勉強するというのが伝わってきたので、僕は、勉強というものがこんなに楽しいものなのだと実感しました ■佐多 晴美(保護者)  夏季プログラムの帰途、電車の中で息子にプログラムの感想を聞いてみました。笑顔と共に、「希望を感じた!」と元気な声が返ってきました。息子は、読み書きの困難さ故に、「将来どうしたらよいか?」という不安と、「僕1人だけ書けない。」という疎外感に、押しつぶされていました。DO-IT に参加して、自分と同じ様な友達がいることを知り、実用的な読み書きの対応方法を教えてもらいました。また支援してくださる方の存在を知り、夢に向かって進んでいる先輩のプレゼンに心を躍らせました。息子は、受講前に比べ心の弾力性が強くなり、やる気が出たようです。親としても嬉しい限りです。  今年の6月、息子が授業中に国語辞典をビリビリに破いてしまいました。文字の羅列から目的の言葉を探し出し、小さな文字を読むのは息子にとっては難題だったのです。さらに語句を見つけた後、書き写そうとノートに目を移すと、辞典の文字を見失ってしまうのだそうです。 私の中で迷宮入りと思われた“国語辞典ビリビリ事件”は、DO-IT に参加でき、iPad を使用したきっかけで、解決できました。おそらく、これからも“未解決事件が解決できる”もしくは“未然防止できる”と思います。DO-IT に参加できたこと、本当に感謝しています。 13ページ ■頭の中でゴチャゴチャしていたものをすっきりさせてくれました。鈴木 群青 /茨城県・小学 5 年  ぼくは文章を書くのが苦手です。頭の中で考えや気持ちがバラバラになっていて、それを文字で表すのが苦しいです。思いついたことを文でつなげながら画面が作れる「シンプルマインド」というアプリを知りました。頭にうかんだことを全部アウトプットしやすいです。それを使っても、気持ちを文字にしたり、つなげる言葉を考えるのはつらいし時間もかかります。  便利な機械があると、今までの苦しかったことがなくなり普通の人と同じようになったのだと誤解する人がいます。機械は助けてくれるけれど、障害を治してくれるわけではありません。前よりは楽になりました。自分の言いたいこともなんとか形になります。  iPad は面白いです。好きな考古学の本も読み方や意味がすぐに調べられます。自分でとった昆虫を写真で記録したり判定してくれます。興味がどんどん増えても全部保存してくれます。面白い映像や音声を合成することもはまっています。  DO-IT は、ぼくの頭の中でゴチャゴチャしていたものをすっきりさせてくれました。興味深い先生たちに会えていろいろ話せたこと、がんばって生きている人がいること、新しい経験ができて良かったです。  前より元気に楽しく過ごせるようになりました。ありがとうございました。 ■鈴木 優子(保護者)  今までの息子は、書字や感覚過敏などの自分の困りごとに対して、沈黙することで周囲の波風を立てずに済むと思い、自分の心に蓋をしてじっとしていました。小学二年生の頃、「今の教育では日本は潰れる。ドリルで強いる暗記ばかりでは駄目なんだ。皆考えることをしなくなっている。」と呟きながら息子は潰れていきました。笑顔も生きる気力も失っていく息子を傍で見ていて、とても辛い毎日でした。  プログラム初日前夜に、緊張と不安でパニックを起こしましたが、寝不足で迎えた朝には腹を括った様子で元気に参加できました。プログラムが始まり、息子の目がどんどん輝いていくのが分かりました。石をポケットに詰め込み虫を追いかけて生き生きとしていた幼少のころの息子が蘇ったように感じました。プログラムを終えた現在、iPad を片手に毎日クリエイティブに過ごしています。  難しい本を読んで頭が良いふりをしているとからかわれ、いじめられたトラウマから読書をやめてしまっていましたが、おかげさまで大好きな考古学の読書が始まりました。少しずつ読んではiBooksの機能を使って興奮しています。  出口のない長いトンネルを息子と手を繋いで歩んできましたが、遠くに薄らと光が見えたような気がします。息子が私の手を放して先に進んで行けるのではないかという微かな希望を感じました。 14ページ ■DO-IT の友達と話していると、言葉が次々と出てきて自分でも本当にビックリしました。壽本 勇魚 /宮崎県・中学1年  DO-IT に参加して嬉しいことが二つありました。  一つ目は、iPad を使えるようになったことです。私は、文字が乱雑で、自分でも読み返した時に、読めない事がたくさんあります。学校の先生にも毎回のように注意され、自分なりに一生懸命書いているのですが、上手く書けません。その度に落ち込んでいました。しかし、DO-IT に参加している私以外の人も、それぞれに学校で困っている事があるようで、自分だけの悩みではないという事がわかり、心強くなりました。  また、今までは自由研究などの文章やデザインは、デスクトップ型 iMac で作っていました。しかし、私は思いついた時に直ぐに文章にしないと忘れてしまうので、持ち運びが出来ない iMac では上手くいかないことがたびたびありました。今では、常に iPad を持ち、私の筆箱とノートのように使っています。思いついた時にメモ出来るので、とても便利です。  二つ目は、友達が出来た事です。私は学校生活の中で、気の合う友達が今まで一人もいませんでした。話しかけられても、どう答えていいのか分からないし、自分から話しかける事なんて、とても苦手でした。しかし、DO-IT で初めて友達が出来ました。DO-IT の友達と話していると、言葉が次々と出てきて自分でも本当にビックリしました。  私は、今まで自分に自信がなく、将来の事など考えると不安で仕方がありませんでした。でも、DO-IT に参加する事が出来た事で、これから少しずつ自分で夢に向かって頑張ろうと勇気が湧いてきました。DO-IT の先生方やDO-IT の仲間と、頑張り続けたいです。 ■壽本 真紀子(保護者)  書字の困難に加え、精神的にも色々な障害を抱えている息子は、学年が上がるにつれ、「毎日生きていくのがつらい…」「生きていくのが嫌だ」と、話すようになりました。 初めての場所や人の中がとても苦手ですが、DO-IT のプログラムでは、そんな息子の気持ちを吹き飛ばすほどの楽しいプログラムがあったようでした。途中頑張りすぎたようでパニックを起しましたが、持ち直して最後まで参加することが出来ました。  プログラムの最後にシンポジウムの会場で、修了証書を頂くことになったのですが、今まで人前に出ることを極端に嫌がり絶対に避けていた息子でした。(入学式・卒業式等出席したことはありませんでした。)「いさな君の落ち着くスタイルでいいよ」と、先生方が声をかけて下さったのがうれしかったようで、ヘッドホンを着け帽子を深々と被った不思議な格好で、無事に受け取ることが出来ました。私は壇上に上がった息子を見て、涙が止まりませんでした。  交流会では、息子念願の物理学が大好きな友達が出来たようです。全てにおいて、忘れられない、素敵な夏休みになったことはいうまでもありません。何事にも変化が苦手な息子ですが、DO-IT に参加出来た事で、少しずつですが、変化を受け入れていけそうです。 15ページ ■自分のできることを増やして道を切り拓きたい。野中 宏太郎 /千葉県・中学 1 年  ずっと僕は混乱していた。僕は学ぶことが好きだし、友達も作りたい。だが、先生にはやる気がないと言われたり、授業権の侵害だと言われたり、責められることが多かった。教室の中で、クラスメイトの視線は冷たく、話し相手もなく、僕はいつも独りだった。実際に僕は学校を飛び出したり、テストを破いたり、椅子を投げつけたりした。鉛筆で手を刺して自分を傷つけることもあった。  自分がアスペルガーだと認識し、自己分析を始めてわかったことがある。頭の中がいつも落ち着かないこと、字が下手なこと、会話が苦手なことや奇妙な手遊びが周囲に変な印象を与えること。きっとこれだけじゃない。それを改善できずに中学生になった。途方に暮れ、自分が何をすべきかわからない時に DO-IT に参加することが決まった。  正直なところ DO-IT に大きな期待はなかった。先端技術やお国の将来像を学べたとしても、それを実際に僕が通う学校や勉強に利用できるとは思っていなかったからだ。プログラムの中で印象的だったのは「他の人と違っていい」と言われたことだ。学校では『Be a good student』でいることを求められていたが、ここでは『Do it as you like』でいて良いことにまず驚いた。  次に、様々な支援のアプリは、僕の困難を軽減することに驚いた。僕は iPad と Mac をこれまでも使ってきて、生きることが楽になるのを感じていた。例えば、学校でのトラブルを口で説明できなくても文章化することで先生に伝えることができた。作文を字で書くのは非常につらい作業だが、PC を使えば楽に構想を練ることができた。ただそれを書き写すのに時間がかかったり、普段ノートテーキングできないことで態度面の評価に C がつくこともある。学校の定期テストと違って、高校受験で僕の字を判別してもらえるのか不安だ。  DO-IT は、僕にテクノロジーを利用して勉強し、パイオニアになる目標と希望を与えてくれた。自分のできることを増やして道を切り拓きたい。そして僕の抱える問題を少しでも多くの人に伝えたいと思う。 ■野中 美穂(保護者)  「宏太郎君は切れやすい。こういう子供が将来犯罪者になります」小学校に入学して間もなく、校長室で言われた一言を忘れることができません。社会を憎み、子供と死を覚悟したこともあります。母としての資質に絶望し、息子を追い詰めてきました。そんな私に力を与えてくれたのは息子でした。奇跡の星に生まれた、奇跡のヒトという生き物について、目をキラキラさせながら話す息子は、確かに多くの問題を抱えています。字が書けないとか、忘れ物が多いとか、学校や社会で問題視される彼の困難は、ICT の力で補うことができる。自分のできることを学び伸ばすことができれば、彼の居場所はきっと見つかる。DO-IT はその一歩を踏み出すきっかけをくださいました。  親の最期について話した時、息子は言いました。「ぼくは無理に駆けつけない。海外にいるかもしれないし。FaceTime や skype で 1 分 1 秒でも長く話す方が効率的だ。その頃には温もりさえ伝えられるようになるよ」 私はもう彼の将来を案じ、養うために長生きする必要はないのかもしれません。彼は困難を抱えていても未来を生きる力を持って生まれ、もう一人で歩き始めています。ただ彼がつくる未来を少しでも長く生きて見てみたい。今はそう感じています。 16ページ ■こんなに役立つんだ、凄いし面白いし楽しい。濱谷 真ノ介 /北海道・小学 4 年  僕は、DO-IT には受からないと思っていたけど、受かってすごく嬉しかったです。僕の住んでいる所は北海道なので、東京の夜がすごく暑くて眠れなかったし、人が多くてびっくりしました。ギリギリ迷子にならなくてすみました。  DO-IT の初日は教室に普通に入ったようにしていたけど、本当は僕がいて大丈夫なのかな?何をするのかな?と不安でいっぱいでした。でも話を聞いて安心しました。ここはすごく居心地が良かったです。DO-ITの先生はユニークな先生が多くて、学校の先生より授業を受けてて楽しかったです。特に、目が後ろにある先生がツボりました。僕の席は、先生がナナメ後ろにいたのでニヤニヤしていたのが見えました。僕たちをだまそうとしていたのが、はっきりくっきり見えました。でも興味がわいてきました。この人不思議だなと、目がはなせませんでした。あとは、3Dプリンターの授業で、一番高い値段を聞いてぶったまげました。凄く難しくて大変だったけれど、楽しかったです。  僕は自分でイヤーマフを持ってきてたんですが、それよりも雑音だけが聞こえてこないノイズキャンセリング・ヘッドフォンの方が話し声を聞きやすく、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンの方が僕には合います。アイセンスはよく聞こえるように耳の奥まで入れていくから、耳が痛くなるのでイヤホンみたいに耳にフィットするのがあると僕は楽です。大勢の人がいる時に使いたいです。今は、ノイズキャンセリング・ヘッドホンを DO-IT から貸してもらっていて学校の授業中や、うるさい所で使っています。テストの時に使うと集中できて楽です。  iPad は書く作業がないから疲れないし、字が汚いと言われないし、ダンゼン楽なんだけど、まだ iPad に慣れていなくて字を打つスピードが遅いから早くiPad に慣れたいです。音声認識が僕の声を読み取ってくれないので、打つしかないからすごく悲しいです。自由研究にICレコーダーやカメレコを使いました。iPadの機能を教えてもらったので自由研究がスラスラできて、こんなに役立つんだ、凄いし面白いし楽しいと思いました。来年、僕はラビットスカラーがやったダチョウの卵探しをやりたいです。 ■濱谷 理恵(保護者)  真ノ介は、文字を読むことも書くこともできます。漢字のテストで100点を採ることもあります。それが日常生活に生かされてないことに私が気づいたのは、賢龍先生が面接に来たときでした。  「板書をやりたくない」と泣いて訴えてきた日も、国語のノートに文字ではなく○が沢山書かれていたことも、猛練習した漢字が一週間経つとあやふやなんてこともありました。でもそれが、ふざけているのか困難故なのかわからずに、私を含めた周りの大人は「しんちゃんはやればできる」と困難さに寄り添うことすらしていなっかたように思います。  DO-IT から戻ると自分を理解してくれる人に出会えた自信でしょうか、字を書くのが苦手なことを友人に伝え「メモはとれないけど録音ができる」と皆とやり方が違がっても恥ずかしがることなく自分の困難な部分に向き合い、大きく前進したように感じます。「漢字は覚えてなくても調べれたらオッケーなんだって」と iPad を使用することで学習意欲もでてきました。  まだまだ「私も字が汚いけど昔はそんなのなかったから頑張ってできるようになった」「たんなる甘やかし」と理解も支援も十分とは言えない中、自らの力で前進した息子を誇りにおもいます。また、そのきっかけを作ってくださった DO-IT のスタッフの皆様に深く感謝致します。 17ページ ■僕はもともと学ぶことは好きなんだ。藤原 誉盛 /鹿児島県・小学 6 年  僕は、DO-IT Japan に参加して「自分自身とても変わった」と思っている。なぜなら iPad を使って、色々なアプリを活用することで、僕が今までつらくて大変だと思っていたことが、意外にも簡単にどんどん楽しく学習出来るようになったからだ。  いつも色々な人達から「自分の良いところを伸ばしなさい」と言われても、どうしたらいいのか、方法がわからず困っていたけれど、今回は「自分の得意なところを伸ばせるようになれるかも」と安心することができ、初めて心に響いた。  読む事に時間がかかって音読が上手に出来ないことは、僕自身悲しく、毎日が大変で、僕の「科学者になって世界の平和を守る発明をする」という夢は本当に実現することができるのかな?と、だんだん不安で自信がなくなってきていた。けれど、DO-ITJapan で、同じように少し困っているんだけど、自分の得意な分野を伸ばしたり、自分の力でできる事をできる限りの工夫をして、精一杯頑張っている仲間や先輩達に出会えたことで「僕も大丈夫」と希望を持てるようになり、元気になることが出来た。なんだかとってもうれしい気持ちだ。  iPad で勉強していると、母が「操作が上手だね!」とほめてくれるのがとてもうれしい。生活面でも、色々な機能を使って忘れないように注意出来るので、これまたほめてもらえてすごく嬉しい。そして何よりうれしいのは、自分で調べたい事がすぐに調べられて面白いこと。iPad だと勉強することが楽しくなるから不思議だ。いや、僕はもともと学ぶことは好きなんだ。ただ、読むことがつらいんだ。  これから DO-IT で色々な事を教えてもらって、iPad をもっと使いこなせるようになって、もっともっと知識を増やしたいと思う。そして、いつか自分の事は自分で出来るようになり、夢の科学者になって、世界中の人達が平和に暮らせるような研究をしたいと思う。  僕は、DO-IT に参加できて良かったと思う。 ■藤原 由紀子(保護者)  息子は一昔前であれば、物知りで好奇心旺盛、人とは違った面白い発想をする将来の楽しみな子供だと、伸び伸び育てられた筈です。しかし、世の中は IT 化で激変したというのに、受験は相変わらず暗記力と問題処理能力の速さを問うもが多く、読み書き速度に困難を抱えるゆっくりペースの息子にとっては、非常に生き辛い今の世です。 学びの本質、楽しさに辿り着く前の段階で何時も疲れ果てている息子を見て「私さえ諦めたら、我が子はもっと楽になるんじゃなかろうか?しかし、今、諦めてしまったら どうなるの?」と自問自答し途方に暮れる毎日でした。そんな中で念願の DO-IT への参加が叶い、一縷の望みを託して親子で学ばせて頂きました。  息子は安心出来る仲間や居場所が出来たことが大変嬉しかったようで、「DO-IT が学校だったら良かったのにな」と、帰宅後も学んで来たことを、忘れないようにこつこつ実践しております。正直凄い成長で、親としては本当に有難く、嬉しいかぎりです。何時か必ず、困り感を抱えた子供達がもっと笑顔で生きやすい世の中になることを願い、信じて。今、自分達に出来る事を精一杯努力し親子で頑張っていきたいと思っています。これからもどうぞご指導の程、宜しくお願い申し上げます。 18ページ ##A高校生・高卒者向けプログラム  7 月の毎週金・土曜日にインターネットを介してオンラインの事前学習プログラム(プリプログラム)に参加。夏季プログラム参加に先立ち、14 スカラーは、テクノロジーやインターネットの基本的な操作、高等教育機関における障害者への配慮の現状を学び、自分自身の困難と必要な配慮を周囲に伝える説明を考えました。8 月、それぞれの思いを胸に東大先端研へ集合!DO-IT Japan スカラーとしてスタートを切りました。 #プログラム1日目 2014 年 8 月 3 日 (日) 10:00 オリエンテーション/自己紹介 参加者全員が集合する最初のプログラム。ディレクターの中邑より、先輩スカラーたちがこれまで行ってきたチャレンジや、協力企業の紹介があり、DO-IT Japan が目指す未来の社会について、エールを込めたメッセージが送られました。 ガイダンス 昼食 13:30 ディスカッション 「自己のニーズと必要な配慮を考える」 プリプログラムでMicrosoft PowerPointを使って作成した、自分自身の困難と必要な配慮についてをまとめた資料を手に、参加者に向けてプレゼンを行い、大学進学後に周囲にどのように支援を求めていくかについて議論を行いました。大学に進学した先輩スカラーや大学生チューター、アドバイザーからの意見が議論を膨らませました。 16:00 ホテルへ移動/夕食用意 高校卒業後の生活では、自分でスケジュールを立案・確認し、行動する機会が増えます。次の予定は、ホテルでの楽しいパーティ。存分に楽しめるように余裕を持ちたいものです。公共交通機関をうまく利用したり、周囲に支援を依頼をしたり、身近なテクノロジーを活用したり ・・・ 先の予定を考慮し、自ら考えたプランで移動しました。また、支援ニーズや移動ペースが違う仲間との移動は、自らの困難や社会サービスのあり方について気づくきっかけとなりました。 18:30 BYO(Bring Your Own)Party! Sponsored by 沖電気工業株式会社 たくさんの印刷物を用意する必要がある夏季プログラムでは、印刷スピードとクオリティを兼ね備えた高性能なプリンターが欠かせません。配布資料や講演等の案内図の印刷用に、プリンターを複数台ご貸与いただきました。鮮やかな講義資料がスカラーたちの学びを支えてくれました。 Sponsored by 株式会社トヨタレンタリース東京 体温調整が難しい人や体調に変化が起こりやすい人にとって、夏の暑い時期にスムーズな移動方法を考えることはとても重要です。自力での移動が難しいスカラーや、体調を崩したスカラーの移動用に、リフト付き車両を複数台お貸しいただきました。スカラーが自ら移動方法を選択したり、リフト付き車両の持つサポート機能を知る機会になりました。 Sponsored by 株式会社ライフデザイン 一人暮らしをする際、上手に社会のリソースを活用することは、生活の質を上げることにつながります。今回、身体介助が必要なスカラーの介助サービスを提供していただきました。家族や身近な人ではない人に、適切に自分のニーズを伝える経験となりました。 Sponsored by 株式会社京王プラザホテル 親元を離れて一人暮らしを体験する夏季プログラムは、スカラーにとってはワクワクとドキドキが入り交じる経験です。今回、スイートルームを含む宿泊プランをご提供いただきました。一流のホテルでサービスを受けることや、さまざまな機能をもつユニバーサルルームを使用することは、スカラーが将来の自分の振る舞いを考える機会になりました。 19ページ #プログラム2 日目 2014 年 8 月 4 日 (月) ■【企業訪問】日本マイクロソフト株式会社 品川本社 今やごく身近な存在となったパソコン等のテクノロジーは、日常生活でいつも私たちを助けてくれる大切なパートナーとなっています。2 日目は、DO-IT Japan 共催企業である日本マイクロソフト株式会社を訪問。教育やビジネスの現場で使用されている最新のテクノロジーの利用方法を知り、自らの学習や生活に活用する方法を学びました。 集合/受付 10:00 講義T 「自分に最適な IT 環境を構築する」 障害によりキーボードを打つことが難しい人や、画面を見ることができない人は、市販されている普通のパソコンを使うことは難しいのでしょうか。先輩スカラーたちのパソコンの活用方法を介しながら、障害のある人がパソコンを操作する際に便利な Windows の標準機能「アクセシビリティ機能」を設定したり、いろんな種類のスイッチ・マウスを試用し、自分にとって最適なパソコンのセッティングを行いました。 昼食 13:00 講義U 「IT でライフをハック!(スケジュール編)」 自分でスケジュールを管理する機会が増えていく大学生活。先の見通しをつけながら予定を立てることは、誰にとってもなかなか難しいことです。それに書くことが苦手な人や、注意や記憶に障害がある人では、予定の管理にも工夫が必要です。予定を整理する際に便利なソフトウェアや、いろんな媒体で見ることができるカレンダーアプリを実際に使用し、自分の予定をスケジューリングする体験をしました。 14:20 講義V 「IT でライフをハック!(OneNote、ToDo& マインドマップ編)」 せっかくスケジュールを立てたとしても、他の予定が入って手がつけられなかったり、時間がかかって予定通りに終わることができなかったり。そんなとき、やるべきことを上手に把握し、適切に達成する方法を知ることは、大学進学後の大切なスキルになります。Microsoft OneNote を活用したノートの取り方や、思考を整理する方法の 1つ「マインドマップ」を活用し、見通しをもって行動する方法について学びました。 16:00 講義W 「IT が拓く未来の生活」 テクノロジーの発展はさらに進み、私たちの生活スタイルを日々変えていっています。加治佐俊一さんのガイドで、これからやってくる未来の人々の暮らしをちょっと先取りして学びました。テクノロジーの発展により変化する学びや仕事、暮らしのスタイルを学びながら、将来の自分たちができることについて意見を出し合いました。 日本マイクロソフト品川本社・社内見学 移動/夕食 ミーティング 「明日の自由時間の過ごし方について」 写真 加治佐 俊一 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者 写真 大島 友子 日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 Sponsored by 日本マイクロソフト株式会社 便利なソフトウェアは、自分のやりたいことを実行する際の良きパートナーとなってくれます。学習や生活を豊かにする最新のソフトウェア(Microsoft Office)や、便利なオンラインストレージ(Microsoft OneDrive)のご提供と活用方法の紹介は、今すぐ行える自分の困難を代替する手段として、スカラーたちの力となりました。 ■中学生スカラーマイクロソフト訪問 読むことや書くことに困難があったり、肢体不自由など、障害により学習するうえで困難がある場合、学習能力を評価するテストで自分の持っている力を発揮しきれていない子がいます。パソコンで問題文を読み上げさせたり、ワープロで解答をしたりするなど、困難を補えるように環境調整すると、どんなことが起きるのでしょうか。スカラーたちは、テクノロジーを活用して環境調整を行った状態で勉強する経験をした後、本質的な学びについて話し合いました。 20ページ #プログラム3 日目 2014 年 8 月 5 日 (火) 9:40 大学講義T 「震災の記録はどう編集されるのか? ―記憶の記録のケース・スタディ」 11:00 大学講義U 「異常気象:その仕組みと地球温暖化との関係」 大学講義について 東京大学先端科学技術研究センターで世界最先端の研究をされている先生方を講師としてお招きし、実際に大学の授業を体験しました。その際、自分が学ぶために必要な配慮を講師に説明したり、授業中に支援機器を活用したりするなど、大学進学後の学習に必要になることを実体験を通じて学びました。 写真 牧原 出 東京大学 先端科学技術研究センター教授 写真 中村 尚 東京大学 先端科学技術研究センター教授 Sponsored by 富士通株式会社 便利なソフトウェアを最大限に活用するためには、パフォーマンスの高いパソコンの存在は欠かせません。今回、スタイリッシュな最新のノートパソコンをご提供いただきました。このノートパソコンは、スカラーにとっては単なるパソコンを超えた、心強い相棒となります。 12:00 自由時間 大学生になると、授業がない日ができたり、次の授業の時間までちょっと時間ができたりと、生活のスタイルが高校生活とかわります。何をするか・しないのかは自分次第!休息をとったり、これまでの活動を振り返ったり、好きなところに出かけたり ・・・3 日目は、プログラム後半に向けて自分で予定を決め、それぞれの時間を過ごしました。 チュータープログラム アドバイザー講義 夏季プログラムにはチューターとして参加する大学生たちがいます。チューターには障害のある学生と初めて活動を共にする大学生も少なくなく,気づきや疑問が生まれることも。今回,信州大学の高橋知音先生,徳島文理大学の多田羅先生から,長年の支援のご経験に基づくお話を伺い,障害のある人の支援について議論を行いました。 写真 高橋 知音 DO-IT アドバイザー 写真 多田羅 勝義 DO-IT アドバイザー ■13スカラープログラム 昨年新規スカラーとしてスタートをきった 13 スカラーが集合。それぞれの地域に戻った後から今日までの1 年間に行ってきたチャレンジを共有し、DO-IT へ参加する前から現在の自分の気持ちの変化について議論を行いました。また、今年は先輩として、後輩たちにどんなことを伝えたいか、相手のことを考えて自分は何をすべきかについて話し合いました。 セミナー/ふりかえり 映画鑑賞 ディスカッション 「IT 社会問題の拡がりを障害を通して考える」 →B2年次以降スカラーの活動(p.30)参照 21ページ #プログラム4 日目 2014 年 8 月 6 日 (水) 9:40 スタッフセミナー「自立と生活の拡がりを知る(1)制度によるエンパワーメント」 14 スカラーと13 スカラーが合流。高校生や大学生であるスカラーでは、障害のある人の生活を支えてくれる制度についてを深く知ったり相談する機会はなかなかありません。制度による支援に支えられながら一人暮らしをしている先輩スカラーの具体的な体験を交えて、障害者基礎年金や障害者総合支援法について学びました。 11:30 ランチョンセッション 「自立と生活の拡がりを知る(2)先輩の事例を通して」 実際に制度を申請し、利用しながら大学生活を送る先輩スカラーの木下昌さんが一週間の生活を紹介。具体的な介助や起きた様々なエピソードについて話題提供がありました。自分でやることと人に頼むことの線引きをどう考えるかについて、議論が白熱しました。 13:30 DO-IT 学生スタッフ企画プログラム 「大学生活と自己決定の拡がり」 未来の大学生活を想像した際、一人暮らしやアルバイトなど楽しみなことが浮かんでくるのと同時に、実際に生活していけるのかなどの不安が入り交じります。障害のある大学生がどのように生活をしているのか、リアルな学生生活を知るプログラムが行われました。東京、茨城、鳥取やアメリカ東海岸(ボストン)で暮らすピアスタッフ(大学生になったスカラーから、夏季プログラムの運営スタッフとして参加した人をこう呼んでいます)は、事前に Skypeでのオンライン会議や OneDrive による資料の共有を活用して入念な打ち合わせを行いました。 DO-IT ピアスタッフ(五十音順):粟井優衣さん / 井上睦美さん / 蔵本紗希さん / 齊藤真拓さん / 横山羽依さん 13:30 セッション1:先輩スカラーの大学生活と自己決定 「毎日、食事は三食とる」など、今の生活の中で望ましいこととされている日課があると思います。日常生活をみんなと同じように送ることが時に大きな負担となる障害のある学生では、その「当たり前」の日課が、果たして自分の生活に「不可欠」なことかを問い直さなくてはならないことがあります。ピアスタッフたちがそれぞれの大学生活の 1 週間を切り取り、そこで何を食べて、どんな生活をしてきたのかを豊富な写真やムービーとともに紹介。それぞれのスカラーにとっての「当たり前」を考え直しました。 15:20 セッション2:海外での暮らしと自由を広げるわざとこつ 授業を受ける,留学したい ・・・ 大学生活ですることとやりたいことはどのように折り合いをつければよいのでしょうか。海外研修派遣事業に参加した先輩スカラー(米国ボストン留学中の蔵本紗希さんが Skype によりオンラインでリアルタイム参加)が,実際に海外で暮らした中で見えてきた時間の使い方や生活の流れ等の情報提供を行い,暮らしの工夫や手段の多様性について考えを深めました。このセッションでは,カナダ・バンクーバーに留学中の 13 スカラー中尾優理さんも Skype 参加して,海外留学で感じていることを参加したスカラーに共有してくれました。 15:50 セッション3:自立と依存を考える 「自立」という言葉をよく耳にしますが、「自立」とは一体なんなのでしょうか。また「自立していない」ことは「依存している」ことになるのでしょうか。医師・研究者として活躍し、肢体不自由の当事者でもあるスタッフの熊谷晋一郎から、自分の生活や仕事における「自立と依存」の話題提供を受け、生活における自立の意味についてゆっくり話し合いました。 16:20 セッション4:ラップアップ 先輩スカラーのリアルな大学生活を知り、多くの先輩や仲間たちの行動スタイルや意見、考え方に触れることで、ロールモデルを得たり、自己や他者、社会に対する視点を拡げる機会となり、自分自身で考え、選択するのに必要な知識と経験を得る機会となりました。 17:20 イブニングセッション & バンケット ホテルへ移動 22ページ #プログラム5 日目 2014 年 8 月 7 日 (木) 9:40 討論会 ! ディスカッション「どのように説明するか」 発表/まとめ「対面と説明」 最終日は、ディレクターの中邑と近藤が大学教員・職員の立場に扮して登場!自分の困難の状況説明や、求めたい具体的な配慮内容など、論理的に配慮を申請する模擬面接にチャレンジ。この 4 日間で学び、議論しあったことを活かして、自分自身が大学へ入学希望をした際の準備となりました。 昼食 13:30 一般公開シンポジウム 「試験の合理的配慮を実現する ICT 活用の具体的モデル」 DO-IT 一般公開シンポジウムに参加。教育機関にとって、「合理的配慮」が法令遵守事項となることが決まった今、その具体的方法のひとつとして、ICT 活用の実例が示されました。障害のある当事者として、学校や大学、周囲とどのように対話していけば良いのかを考えました。 →E一般公開シンポジウム(p.36)参照 13:30 シンポジウム【話題提供】 「高校・大学入試における合理的配慮とテクノロジー利用の実際〜 Windows や Word など一般的 ICT を利用した環境構築の実例を提案〜」 DO-IT Japan 2013 ジュニアスカラー・修了証授与式 15:20 シンポジウム【ディスカッション】 「全国の高校・大学入試での合理的配慮としてのテクノロジー利用の今後」 16:30 DO-IT Japan2014 スカラー・修了証授与式 2014 年度のスカラーへ、夏季プログラム修了を記念して、修了証が授与されました。スカラーたちは 5 日間に渡るスケジュールを振り返り、自分自身が感じたこと、これからに向けての気持ちを来場者に伝えました。 17:30 公開シンポジウム・DO-IT Japan 参加者の交流会 23ページ #夏季プログラムを終えて ■自分と全く違う世界に住んでいた人や、滅多にないような経験をした人が居ました。大庭 太郎 /千葉県・高校 2 年  先輩方からの話が貴重でした。大学での暮らし方や、今までどのような困難に会い、どのように解決したかを知ることができました。自分もいつか同じ事に出会うだろうから、参考になりました。  他人の経験はどれも新鮮で、引き込まれるものでした。自分と全く違う世界に住んでいた人や、滅多にないような経験をした人が居ました。  スケジュールを把握して、他の人たちと共に目的地に間に合う為に考えながら動くのは新鮮なことでした。自分はどちらかというとスケジュールを把握したり、着く方法を考えたりするのを放棄して他人について行く方でした。自分とは違う特性を持った人たちと行動することで、他の目線から交通や移動に関してを見ることができました。  もちろん、ホテル内でも、家具や建物の些細な構造が人によってどれほど不便になり得るのか、それまで全く気付かなかった事ばかりが分かりました。自分で考えてお金を使ったり、目的地を探したりと、自立する様に動くことが多かったです。  自分は大学に入る時に一人暮らしを始めようと思っています。その時に、同じく一人暮らしをしている先輩方の経験や助言を参考にしたいと思っています。私は人の指示をよく忘れたり、物事に集中しにくかったりしたのですが、記述式試験よりマーク式試験の点数が多大に良いなど、問題が緩和されるための手段もあり、それによって高校に無事に入れました。しかし、もともと、自分の障害を明確に定義した事はありませんでした。また、長い時間をかけてじっくり考えたことはおそらく多くはなかったでしょう。  しかし、先輩方は障害と真剣に向き合い、付き合い、自立した生活を送っていました。彼らから自分で決断することについて頻繁に聴きました。自分への負荷を減らすための様々な工夫もしていました。ある人は、非常に疲れやすいので作業をして疲れる前に休息を取るように心掛け、またある人は足が不自由なためにあらじかめ食材を切って保存していました。  また、5 日間では、スケジュールを守るための時間配分を慎重に考えて行動しないと、ものを学ぶことができる時間が多大に失われ、実際にそのようなことがあったので、社会人の重さを痛感しました。多くの先輩方は、時間を厳守し、勉学に励むためにバランスの取れた朝食をほとんど食べません。それは、整った食事と睡眠や他のこととのどちらを優先するかを決断した結果であります。  病院で働いているある方は「人生は失敗してなんぼ」「トライアンドエラーの繰り返し」と、司会者の一人は「恐れずに質問や意見をすると良い。間違っていたらそう言う。それだけのこと」と、あるアドバイザーは「目の前のアドバイザーに聞け」と言いました。決断と失敗から学ぶつもりで挑む積極性とが大事であるのだと考えました。 ■大庭 亜紀(保護者)  高校入試の際に東大の先端研の近藤先生に助言をいただき、無事に第 1 希望の高校へ入学することができました。高校では小論文の課題はパソコンを使用したり、定期テストは別室で取り組み、時間延長も認められました。そして連絡事項の写メを撮ることはクラスのルールとして OK となりました。  『大学に入ったら 1 人暮らしをする』と DO-ITから戻り突然言い出した!多動が激しかった幼児期、教室を飛び出してしまうため特別支援学級で過ごした 1 年生、漢字や文章を書くことが苦手で平均点を取ることが精一杯だったテスト、日にちや時間の概念がなくスケジュール管理や集団行動が苦手だったりと、太郎が学童期を過ごすことは本当に周りが大変でした。しかしなぜか本人は学校が楽しかったようです。太郎は周りの人たちに恵まれてここまで育ちました。大学に入って 1 人暮らしをしたら、今までの太郎を知っている人はとてもビックリするでしょう。社会に出たら今までお世話になった方々にたくさん恩返しをして下さいね。  DO-IT のスタッフとスカラーの皆さん大変お世話になりました。貴重な体験を本当にありがとうございました。 24ページ ■もっと自分の障害を把握して説明できるようにならなければならないと痛感しました。坂口 智菜 /福岡県・高校 3 年  私は 14 スカラーとしてこのプログラムに参加できると知ったときは、嬉しさと同時にたくさんの不安がありました。しかしこの5日間は初めての経験、先生や先輩方の意見や経験談を聞くことができ、とてもいい時間を過ごせたと思っています。  初日の 3 日はお互いの自己紹介と各自の障害と配慮を発表する時間がありました。私は今まで自分の障害について話す対象は友人や学校の先生などに限られていました。初対面の人ばかりの中で自分の障害を理解してもらい、必要な配慮をもらえるように説明することは初めてでとても難しかったです。夏季プログラム前の一か月間行われたプリプログラム期間中、課題としてパワーポイントで作成する自己紹介を作った時も自分の障害を見つめなおし、短い文章で説明するのが大変でした。なぜなら私が持っている視覚認知障害と高次脳機能障害は、一般的な視覚障害とは少し違い、文字が書いてあるのは分かるのですが、漢字やカタカナなどの弁別が難しいために文字の読み書きが拡大鏡を使ってもできないというようなものだからです。他にもできないことがたくさんあります。まだうまく説明はできないかもしれませんが、もっと自分の障害を把握して説明できるようにならなければならないと痛感しました。  4 日は日本マイクロソフト品川本社で、自分が使いやすいようにパソコンの設定を変更する方法を学びました。音声読み上げソフトもいろんなものがあり、用途によって使い分けることで幅が広がることを知りました。ある時、スタッフの方が「障害者にとってパソコンは単なる機械ではなく、なくてはならない道具」とおっしゃっていたのが印象的でした。私にとってもパソコンは、学習や趣味など生活していくためには必要なものなので、共感できました。  5 日は自分の現状を思い知らされることが起きました。ホテルの部屋移動があり前日までに荷造りをしておかなければならなかったのに、1 日勘違いをしてしまい、出発前にロビーでスタッフさんから「どうする?」と言われてその時やっと気づきました。私は予定の管理が苦手なことは知っていたのですが、一緒の行動グループだったスカラーさん、チューターさん、アテンダントの先生などいろんな方々に迷惑をかけてとても申し訳ないと思いました。このことから困るのは自分だけではないことを学びました。  講義にはなんとか間に合いました。プリプログラムの時から大学の講義は高校までの授業スタイルとは違うことを聞いていたので質問や意見が一つでも言えるように努力しました。大学での学習をイメージすることができとてもよかったです。  6 日は学生スタッフの方々が作られたプログラムで、大学生活、食事、一人暮らしなどいろんな面で話してくださいました。食事の面では時間を確保するためにあえて朝食を食べないことや、家事に関してはヘルパーさんに頼んでいるなど、一人暮らしをするためにいろんな方法をとっていることが分かりました。その中でも印象的だったのが、疲れがたまらないように授業をまったく入れない日を作ったりしている先輩がいたことです。大学では自分で時間割が作れるからこそ身体のことを考えた方法なんだと興味深かったです。  最終日は、障害者に理解のない学長にどのように配慮を求めるかということについて意見交換しました。時間内に自分の意見がまとまらなかったのと、参加者が多かったのもあってこの場では私は何も発言出来ませんでしたが、普段考えたことのないことについて考え、たくさんの人の考えを知るいい機会とのなりました。  このプログラムで得られたものは山のようにありますが、それを生かしていくのはこれからです。また私にとって相談できる人のつながりを持てたことは、これからの人生で大きな物になったと思います。一緒に活動した 14 スカラーのみなさん、先輩スカラーのみなさん、チューターさん、アテンダントの先生方、何よりお世話になった DO-ITJapan のスタッフのみなさん、本当にありがとうございました。 ■坂口 加代(保護者)  DO-IT Japan 夏季プログラム期間中は、酷暑の中スタッフの皆様に大変お世話になりました。おかげさまで他では決して真似のできない貴重な経験を娘に与えていただきました。4 歳の時病気がもとで高次脳機能障害になり、小中高校と進学の際は少ない選択肢の中から最善の学校を娘と話し合い決めてきました。英語に興味があり留学か大学進学を考えていた頃、このプログラムと障害者でも参加できる留学の話しをしたところ、娘は DO-IT に参加して将来のことを考えたいと切望しました。視覚認知にも障害があり学習面にも問題がある中、自ら情報を得て将来を選択していく方法を学んでほしいと私たちも思いました。  そんな娘にとって今回のプログラムは、実際に一人暮らしの体験談や大学での講義、先輩スカラーの話が聞けたことでかなりイメージが具体的に捉えられたようでした。  しかし同じ障害種で同年代の方と意見交換が出来なかったことは残念だったようです。これからが本当に自分の夢を叶えて行くため、自主性を持って開拓していかなければなりません。DO-IT のスタッフ、関係者の方々、同期スカラーの皆様今後ともよろしくお願い申し上げます。 25ページ ■色々な障害を抱えている人達との出会いが、私がこの夏経験した中で一番大きなことです。坂下 陽平 /香川県・高校 2 年  私は、夏季プログラムに参加してたくさんのモノを得ることができました。DO-IT Japan を知ったきっかけは、私が通っている学校の特別支援員の先生が「こんなプロジェクトがあるんだけど…。」と教えてくれたことです。家に帰ってパソコンで調べてみると、これに参加することによって自分を変えられるかもしれない、自分の将来に役立つような考えを知ることができるかもしれないと、参加したくなりました。   最初に行われた DO-IT Japan の面接では、パソコンのスカイプという機能を使い、テレビ電話による面接をしたのですが、近藤先生のズバズバくる質問が今でも忘れられません ( 笑 )。少し緊張してしまい、上手く自分の思いを伝えることができず「落ちてしまったかな」と面接終了直後から合格通知が届くまでずっと考えていたのですが、参加できるという知らせをいただき、とても嬉しかったです。  面接のときに1人で東京までくることを勧められたのですが、今まで1人で県外に行ったことがなく不安な気持ちがあったのですが、これも挑戦だと思い1人で行くことを決心しました。自分自身で東京までの行き方を計画したり、車イスの私でも新幹線に乗れるかなどの確認の連絡をしたり、どれだけ自分が周りの人達に助けられていたかを実感しました。私から行動を起こさなければ何も始まらないこと気づき、これ以上ないぐらい入念に計画を立てました。そのかいあってか、思った以上にスムーズに移動することができました。それに駅員の方たちが、すごく親切にしてくれたおかげだと思います。きっと誰かと一緒に東京まで来ていたら、感じられなかったことを経験できました。  DO-IT Japan での 5 日間は私を変えてくれました。中でも、マイクロソフト社での経験は私の将来の視野を広げたと思います。パソコンを使うことによって、自分の障害をカバーすることができたり、学校生活の中でもパソコンを便利に活用できたりすることを知りました。私は、パソコンが苦手でパソコンと無縁な生活をしていたのですが、ここでの経験でもっと自分の生活に取り入れていこうと感じました。  また、色々な障害を抱えている人達との出会いが、私がこの夏経験した中で一番大きなことです。スカラーの先輩が「障害を抱えたことによって自分の人生を劇的に変えた。」という言葉を言っていて、あっ、そんな考え方もあるのかと考えさせられました。私は事故で障害を負ってしまったのですが、そのことをすごく後悔しています。歩くこと、普通の生活が困難な体、障害者です。不便なことばかりで健常者としての日々に比べ、何もいいことなどないと思っていたのですが、障害を抱えたことによって気付けたことは数えられないほどあることにその言葉を聞いたとき思いました。やはり、一番大切にしたい思いは人の温かさです。父や母は自分のために一生懸命に介護してくれています。友達はいつも優しく接してくれています。学校の先生は親身になって私のことを考えてくれます。この DO-ITJapan に参加していなければ、私の周りの人達の何気ない優しさに気付けず、今も過ごしていたと思います。それに、様々な人達と考えを共有することによって今まで知れなかった世界を知ることができました。  私は、将来、臨床心理士という職業に就きたいと思っています。そのために大学では心理学を学びたいと思っています。この DO-IT Japan での経験を生かして、大学で困難なこと、大きな壁にぶつかったときは、しっかり自分の意見を伝えて配慮を求めるなどしたいです。大学でたくさんの知識を身につけ、夢をかなえたいです。そして、臨床心理士になったときには DO-IT Japan に恩返ししたいです。  最後に、私は DO-IT Japan に参加したいと思った最初の理由の通り、自分を変えること、将来の役に立つ考えを得ることができました。DO-IT Japanでの 5 日間は一生忘れることができないほど、初めての経験ばかりで充実したものでした。このような経験をさせていただいた先生方、14 スカラーのみんな、先輩スカラー、チューターのみなさんには心から感謝の言葉を言いたいです。ありがとうございました。この経験を生かして、これからの日々を前向きに、どんな壁も乗り越えていきたいです。 ■坂下 幸枝(保護者)  交流会時、目を輝かせてたくさんの人達と交流している姿が、印象的だったのを覚えています。その姿を見ただけで DO-IT で得たものが大きかったでしょう。高校行事と重なり忙しい中、同時進行でスカイプでの面接、夏季プログラムに向けての準備等、頑張っていました。初めての一人旅、6 時間の長旅、JR の職員の方に親切にしていただき、不安も解消されたと思います。DO-IT での経験が、様々なことを自分の中で明確にし、大きな可能性が広がっていくことでしょう。目的を持ち、一緒に頑張れる友人と過ごす時間を大切にしハードスケジュールを乗り切った達成感により、連帯感や自主性が養われ成長したことでしょう。  今回の DO-IT にあたって関わってくださった皆様に感謝の気持ちで一杯です。この経験をもとに自分の力を信じ、何事にも挑戦し、夢に向かって歩んでもらいたいです。 26ページ ■僕でも一人暮らしができる気がしました。梨 智樹 /神奈川県・高校 1 年  今回 DO-IT Japan2014 に、参加させていただいて、ありがとうございます。先に、僕の自己紹介をします。梨 智樹(タカナシ トモキ)と申します。僕は、今神奈川県の厚木市に住んでいます。僕が通っている高校は、神奈川県立相模向陽館高等学校に通っていて、1年生です。僕の趣味は、いろいろあり、無線、ラジコン(飛ぶもの)、鉄道(少し)、物つくりなどです。最近アマチュア無線の、資格を取りました(コールサインは、JI1FXU です)。もし無線をやっている方がいらっしゃったらお声掛けお願いします。  では、DO-IT Japan に参加させていただいた感想を書きます。大きくは、分けて二つあります。一つ目は、僕が DO-IT Japan に参加して、感じたことです。まず、僕が、東京に泊まって思ったことは、東京は、やっぱり僕には、匂いがだめです。具体的に言うと、駅の近くで、汚水の臭いや異臭などがあり、東京に住むのは「無理かなー」っと思いました。次に、都会での移動のことがあります。都会での移動は、よくするのですが、車いすの方と、移動するのは、初めてだったので、色々なことが、わかりました。一つ目は、小田急線は、対応がよい、と思いました。理由は、対応が早い、駅員ではなく警備員が案内をするので、混んでる時間でもスムーズに案内してくれるので、親切だと思いました。二つ目は、JR は、対応があまりよくないと思いました。理由は、駅にエレベーターがうまく設置できていない。具体的には、1 番線に行きたいのに、2 番線にしかいけないなど、駅の設計に問題があると思います。でも、駅員の対応は、よいと思います。  二つ目は、僕が DO-IT Japan に参加して、勉強になったことです。まず、一人暮らしを、僕でもできそうな感じがしました。なぜかというと、先輩方の方々のお話を聞けたので、僕でも一人暮らしができる気がしました。具体的には、一人暮らしの工夫や、実際の体験談などを聞けたからです。特に、記憶に残っているのは、非常食?のお菓子(簡単に食べられるもの)を、ケースなどに入れて保管しておいて、いざっと言うときに、食べるというアイデアは、僕には、衝撃でした。僕は、いつもやばい時は、カップラーメンなどを食べていましたが、「お菓子という手があったか!」っと思いました。次に、東大の授業を受けて、思ったことがあります。東大の授業は、興味がわく授業ばかりでした。授業の話をする前に、DO-IT Japanで用意されていた授業の設備が、ものすごくよかったです。一番良いと思ったのは、マイクでしゃべっていることを、耳につけたイヤホンで、直接聞けるのが良かったです(フォナック社:FM 受信機)。僕は、いつも学校の体育館などで話を聞くときは、いつも同じようなことをしています(受信機で、周波数を合わせる→傍受する→イヤホンで聞く、と言った具合にやっています)。それを、ものすごくちっちゃい機械でできるのは、僕には、衝撃的でした。  他にも、いっぱいあります。(1)授業や説明を、ボイスレコーダーで録音するというメモの取り方、(2)もし自分が授業を休んでしまったときは、ほかの人に授業をボイスレコーダーで録音してもらい、後で録音を聞き直して、休んでしまった授業の穴埋めをすること、 (3)DO-IT Japan 夏季プログラム最後の日の、公演で話したことを文字にして、スクリーンに上演すること(要約筆記)などです。授業の話に戻ると、中村尚先生がしてくれた自然環境の授業は、前から興味があったので、授業に参加できてよかったです。最近は、空気電池、とか、永久発電とか、いろいろあるので・・・(すいません、話が脱線して、すいません)。  また、夏季プログラムで出会えた、参加した人、関係者の方々は、個性的?で面白い人ばかりで、話して面白い人が特に多くて、楽しかったです。最初の自己紹介で、参加者が、それぞれいろいろな苦労があった話を、してくれました。熊谷先生は、昔は、治るっと思われていた、脳性麻痺の治療?を無理やりにやらせられたり、など、ほかの人からも、色々な話が聞けて、とても参考になったり、勉強になりました。そういう僕は、今現在、学校で、授業内容をボイスレコーダーで、録音しています。ほかには、中間テスト、期末テストを、パソコンで受ける許可をしてもらったり、授業中に、先生を一人僕につけてくれるといった話し合いをしています(現在、順調に話が進んでいます)。  そして、DO-IT Japan に参加して、プラスになったことを書きます。DO-IT Japan に参加して、プラスになったことは、メモの取り方が、変わったこと。今までは、メモを取るときに、アイホンのメモ帳にメモしたり、パソコンのワードにメモしたりしていましたが、今は、マイクロソフト社のオフィスのワンノートで、アイホンでも、パソコンでもメモをできるだけ、取るようにしています。なぜかというと、ワンノートで、メモを取ると、パソコンでも、アイホンでも、メモの内容を見ることができ、わざわざパソコンでメモしたら、パソコンでしか見られないと言うことが、ないためです。アイホンのほうも同じで、アイホンでメモしたことを、パソコンで見ることができるので、面倒くさいこともないので、便利に使っています。今は、家だけではなく、学校でも、友達や先輩にも、「読めないので、ここを読んでください」などを言うときに、よく友達に「なんで?」と、友達や先輩などに、よく聞かれていましたが、最近は、ちゃんと理由を言って、できるだけ理解を求めています。  今回の DO-IT Japan で、本当にいろいろなことが、勉強になりました。また、機会がありましたら是非お声もかけてください。本当にありがとうございました。これからもどうぞ、よろしくお願いします。 ■梨 智樹 ・両親 息子は、小さい時に周期性嘔吐症と診断され、自分の意に反し嘔吐を繰り返し、小学校も 6 年間 1/3しか学校に通うことが出来ず、先生からは「智樹君は、病気で学校を休みがちなことや他の生徒より字が読めない、書けないこともあるので中学校は支援学校に行かれては如何ですか?」と勧められ、勉強が遅れていることと病気もあることから中学校は養護支援学校に進学しました。中学校入学後担任の先生から「智樹君には読み書き障害があるのでは」と話がありました。担任の先生が、DO-IT Japan に参加すれば智樹君にとって将来役に立つのではとお話があり、申込みしたところ運よく参加することが出来ました。毎日のプログラムや新しいお友達が出来たことを喜んでいました。  今までにない学習方法や新しいアプリを教えて頂き、本人も障害が障害と感じることもなく、帰宅後も PC にて電子教科書や新しいアプリを使い勉強に励むようになりました。参加後とても逞しくなりました。現在の高校にも障害を理解して頂き、授業でのPC 利用を認めて頂けました。  先生方やスタッフの皆様から色々と教えて頂きましたことに心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願い致します。 27ページ ■私は障害という理由で自分の夢を諦めたくないと思いました。田中 大悟 /新潟県・高校 2 年  DO-IT Japan 夏季プログラム 2014 は私にとって驚きと発見の連続でした。  まずホテルのエレベーター内では、ボタンの位置が高くて自力では押す事が出来ませんでした。これに始まり、手配されていると思っていた介助者が、依頼していなかったので、不在でした。面接の時に支援が必要な事に関しての聞き取りが有ったので、今までの経験からして介助者が手配されるだろうと思っていた私は、初日から数々の困難や想定外の事に直面して、度肝を抜かれました。それと同時に、「思っていたほど余裕はないかもしれない。」と思いました。私は DO-IT Japanが障害者のためのプログラムである以上、困る事はそれほどないだろうと思っていたのです。  この予感は早速現実のものとなり、まるで綱渡りのように時間が過ぎていきました。 4 日目の自由時間には道に迷ったりと様々な予想外の事が起き、ー時はどうなるかと思ったものの、何とか無事目的地ににたどり着き、帰ってくる事ができました。しかし、時間の関係上、他の参加者達は場所をいくつか回ってきたのに対し、私は当初の目的地の一か所しか回ることができませんでした。そしてこの経験は今までの出来事と合わさって、「ここまでの活動を他の参加者の人たちはきちんとやり遂げているのに、自分は同じようにできないなんて、なんてダメなんだろう。」と失意を覚えたのでした。私は今まで車いすで生活していた事もあり、頻繁に外に出ていた訳ではなかったので、自分が主体の生活のイメージというものが、いまいちつかめずにいました。ですが今回予想外の事だらけの体験をした 5 泊 6 日を通して、自立して生活するとはどういうことなのか、少しわかってきたような気がしました。 そんな私には夢があります。それは自分の得意な英語を活用して社会に貢献することです。  私は幼い頃から英語が大好きで、中学校 3 年には、英検準 1 級に合格して、今は英検1級に挑戦中です。私は英語で話した方が日本語と比べて積極的に話すことが出来ます。その時は楽しさのあまり、自分の障害も普段ほど意識しなくなります。私はそれだけ英語が好きなのです。  ところが、進学した特別支援学校では、多くの人が施設での就労を希望していました。特に夢がなければ自分も同じ様にしていたかもしれませんが、私は障害という理由で自分の夢を諦めたくないと思いました。そして今も卒業後は大学で学びを深めて、英語で何ができるかを探して社会参加への道を見つけたいと思っています。  この DO-IT Japan で私は、上述したような体験を通して、想像以上に厳しい現実を目の当たりにすることとなったのですが、同時に DO-IT Japanは私に 2 つの気づきをもたらしてくれました。  1 つ目は「工夫」です。プログラム 5 日目に聞いた講義では、様々な困難を持つ先輩方の、日常生活でのいろいろな工夫が実例を通して語られました。中には歩行ができず、車いす生活という自分と似たような障害を持っている方や、自分も参考にできそうな工夫などもあって、非常に勉強になりました。又、忙しい時はあえて朝食を取らず、時間を優先するなどといった、自分には想像もつかなかった考え方を学ぶことができました。この先困難に直面しても、どうしたら良いか少し分かったと思います。  2 つ目は「出会い」です。今回障害という共通点をきっかけとして出会った仲間たちは、皆それぞれ異なる性格、趣味、そして個性を持っていました。そういった十人十色の人たちと、出会えたことを私は非常に嬉しく思っています。これから何かがあっても、互いに手をとって助けあえる…そんな新しい仲間を、このプログラムは私にもたらしてくれました。  この様に DO-IT Japan は大変なことも沢山有りましたが、得るものも大きかったです。そして、早速この経験を生かして学校行事の計画を立てました。この先も、ここで学んだ事を生かして、自分の夢の実現に向けて、頑張って行こうと思います。最後に期間中我々を支援して下さった、関係者の方々に感謝を申しあげます。 本当にありがとうございました。 ■田中 哲夫(保護者)  DO-IT の事は小学生の頃から知っていて、先の事は全く想像も出来ない中の漠然とした目標でした。息子は不得意な事は興味がなく、身辺自立も出来てないのに、得意の英語は小学校から原書を読み、オーディオブックを2倍速で聞くという個性を持つ子です。でも同時に得意な事を上手く伸ばして行ければ…と思っていました。彼自身も「社会に役立つ人になりたい」と志だけは高いものの、それを実現するには何が必要かの現実が見えず、地に足がついてない様子でした。そんな中目標だった DO-IT に参加でき、必要な支援を全て自分発信する体験は、彼にとって大転換だったと思います。小中の通常学級時代は素晴らしい先生方に恵まれましたが「他の子に遅れない為」の支援が多く、親も過干渉になりがちで息子にもそれが当たり前でした。親も子供との関わり方を成長と共に変化させる必要があるのに、障害のある子の親の場合、日々のいわば機械的とも言える介助の繰り返しの中、「これは無理」と思い込んだり客観的に見れなくなっているのかもしれません。  DO-IT はそんな事に気付かせてくれ、親が今までなかなか出来なかった事を一挙にやって頂きました。DO-IT 関係者の皆様に心より感謝致します。 28ページ ■障害と闘っているのは自分だけではないんだという希望が湧いてきました。山本 隼土 /東京都・中学 2 年  僕は初めてこのプログラムに参加した時、高校生の方々の中に入るのがとても緊張しました。親から離れてこれだけ長く宿泊するのは初めてで、一人で予定を立てて行動するのも初めてだったからです。それでも、今までパソコン越しでしか会話できていなかった方々とお会いできる楽しみも感じていました。  そして、初めて皆さんとお会いできた時、僕は感じたことがありました。それは、見ただけでは障害を持っているとは正直思えない方々もいらっしゃったことです。事前に自己紹介は済ませていても、この方々は一体どんな障害を抱えているのだろうと思わず思ってしまいました。  そんな中、他の方々との生活が始まりました。初めのうちは緊張であまり話しかけられませんでしたが、先輩の方々に優しく話しかけて頂き、緊張がほぐれました。話しているうちに、性格や趣味がわかってきて、一緒に行動するのが楽しくなっていきました。  その後、大学での講義を受けました。高校の授業でさえ受けたことがない僕にとって、大学での講義はとても新鮮でした。内容自体はそれほど難しくありませんでしたが、大学の広さや開放感に驚きました。先輩スカラーの方々の講義では、障害を持っていても自由に生活できるんだという希望が持てました。  マイクロソフト社での体験では、パソコンの機能を使って不自由な部分の穴埋めをするということを学びました。僕はそれなりにパソコンの機能は知っているつもりでしたが、自分が知らない機能がたくさんあることを知り、様々な発見がありました。僕の場合はドラッグやシフトなどの同時押しがほとんどできないのですが、先生方に固定キー機能のことなどを教えて頂き、とても勉強になりました。そして、パソコンを使った生活の広がりの可能性を感じました。  自由行動では、江戸東京博物館に大庭さんと行きました。結構良い計画を立てたと思ったのですが、意外に博物館を見学する時間が短くなってしまい、少し残念でした。それでも、久々の博物館で楽しかったです。  夕食の時の障害についての話し合いでは、他の方々と真剣に議論しました。自分が障害を負ってしまっていることについてどのような表現を使うかなど、普段あまり気にしないことも深く考えました。そして、自分の障害や他の方々の障害についても真剣に話し合いました。  僕は小学校四年生の途中までは特別支援学校に通っていました。しかし、他の人の障害についてはあまり深く知ろうとはしませんでした。その人に失礼になると思ったし、傷つけてしまうかもしれなかったからです。  でも、この議論で考えが変わりました。確かに、他の人に突然その人の障害について聞くのは無神経かもしれません。ところが、今までは自分の障害について人に話したことはあまりありませんでした。これから自立していくにあたって、人に自分の障害を説明する機会が増えていくと思います。そのために、今からその準備をしていかなくてはいけないと思いました。  そして、再び東京大学に講義を受けに行きました。このときは、IC レコーダーを使って記録しました。僕は、「この手があったか!」と思いました。今までパソコンを学習していたので、IC レコーダーを使って記録するという方法を思いつかなかったのです。パソコンと IC レコーダーを併用して使えば、今後役立つだろうと思いました。  僕は今回の DO-IT Japan プログラムに参加してみて、様々なことを学びました。自分で計画を立てて行動すること。ホテルでの生活。IT 機器の活用などです。  しかし、自分にとって一番勉強になったのは、世の中には様々な障害があるんだということです。そして何より、障害を抱えてしまっている自分のような境遇の方々に出会えたことです。障害と闘っているのは自分だけではないんだという希望が湧いてきました。  これからは、このプログラムで学んだことを活かして生活していこうと思いました。 ■山本 麻貴子(保護者)  息子はまだ 1 歳半の時に転落事故による脊髄損傷で四肢体幹不全麻痺の障害をおいました。幼い頃からたくさんの大人に囲まれ見守られて育ってきたせいか、今までは、体が不自由であっても特に大きな困難に直面することもなく生活してきました。けれども成長とともにだんだん「自分でやる」ことよりも親や周りの人に「やってもらう」ことが当たり前になってきてしまい、このままでは将来自立できずにいつまでも親元から離れることができなくなってしまうかもしれないと心配していたところに、DO-IT プログラムに参加するという貴重な機会をいただきました。  高校生のスカラーの皆様、先輩スカラーの方々、先生方、スタッフの方々との様々な交流は、彼にとって非常に刺激になったようです。プログラム後の彼の顔は堂々として一歩大人に近づいたように見えました。何より、全く親や祖父母から離れて宿泊するという初めての経験が、彼を大きく成長させ、自立心を芽生えさせるいいきっかけになったのではないかと思います。今後は、プログラムで得たツールを有効に活用し、「自分で決め、自分でやる」ことを増やしていって欲しいと思います。貴重な体験ありがとうございました。 29ページ ■決められた一つの答えなどない。油田 優衣 /福岡県・高校 2 年  私にとって DO-IT Japan は新しい世界だった。五日間の研修で、私は多くの人と出会い、様々な価値観に触れたことで見える世界が広がったように感じる。  ディスカッション形式の講義では、自分の考えを言葉にして発信することで自分の頭の中が整理され、さらに自分の考えに対するほかの人からの意見をもらうことで、考えを深めることができた。いろんな人と意見交換をすることで、そんな視点もあったのか!と新たな発見をすることができた。中でも自分の考えが変わったのは、パソコン受験を認めてもらうことと、手書きでの時間延長を認めてもらうことのどちらがよいかという議論だった。私は今まで、ペンで書くことに固執していた気がする。私は、筋力が徐々に落ちていく進行性の病気なのだが、まだ書くだけの筋力が少し残っており、書けなくなるまでは頑張って手で書こうと考え、いかに書き続けるかを考えてきた。しかし、話し合いを重ねる中で、勉強は、書くことにおいて優劣をつけるものではないのだから、手で書くことに価値はそれほどなく、いかに体に負担をかけずに楽に勉強するかのほうが大切なのだと思うようになった。  そして、テクノロジーを学んでわかったことは、体がどんな状態になっても、パソコンを使用でき、好きなことを学び続けることができる、ということだった。今までは、この先自分の体がまったく動かなくなった時、どんなふうにパソコンを使ったり、勉強したりするのか、イメージが持てなかった。しかし、私より重度の身体障害のある先輩たちがパソコンを操作している様子を知ったり、キーボードを使わずにパソコン操作ができる支援機器を使ったりしたことで、少し具体的なイメージを持つことができ、安心した。これを機に、これからはもう無理をしてペンを持たずに、書くことを卒業していこうと思っている。また、思考を整理する手段として教えてもらった XMind というソフトは、小論文を書いたり、スケジュールを管理したりするのに非常に便利だと感じた。実際にこのソフトは、学校から出た作文の課題やこの感想文を書く上でも活躍した。XMind はこれからの生活の中で積極的に活用していきたい。  他に印象に残っているのは、自分の障害の捉え方や、それに対する自分の気持ちなどをみんなで話し合ったことである。そこで私は、抱えている困難や境遇が違う人たちの話を聞いて、いろんな考えがあってよいのだということに気づいた。そして、本音で語り合える仲間がいると思えたことはとても嬉しかった。私は中学までは特別支援学校に通い、障害のある人と生活していたが、お互いの間で各々の障害の問題について深いところに立ち入ることは、なんとなくタブーなことであるという雰囲気があった(自分たちがつくりだしていたのかもしれないが)。今考えると、そんな環境にいたにもかかわらず、障害についての話をしなかったことは、とても悔やまれる。この話し合いでは、とても充実した時間をもてた。  また、先輩の話もとても貴重で、東京で一人暮らしをしている先輩の話を聞いた時は、どうにか一人暮らしができそうだという希望が持てた。それと同時に、一人暮らしを実現するためには、どんな福祉サービスを利用できるのかを知っておくことが大切なのだと感じた。もう一つ印象に残っているのは休みの取り方の話である。私は普段学校から帰宅して、疲れて数時間寝てしまうのだが、そのことがなんとなく嫌だった。睡眠をとらなければ夜まで体がもたないとわかっていても、この時間があればもっと勉強したり、好きなことをしたりできるのに…と思うことがあった。しかし、自分の目標を達成するために、休みをうまく取り入れることが大切なのだという学生スタッフの言葉を聞いて、休むことは自分にとって大切なことなのだと思えるようになり、帰ってから休む自分を肯定できるようになった。おかげで DO-IT Japan から帰ってからの私は、何の後ろめたさもなく、前よりも気持ちよく眠れるようになった ( 笑 )。  私は今までずっと、自分の考えは正しいのか、何が正解なのかを知りたかった。そして DO-IT に参加すれば、その答えがわかるのではないかと思っていた。しかし、それは間違いだった。絶対に正しい、決められた一つの答えなどない、白黒きっちりつけられることはないのだ。しかし、だからこそ、議論を重ねること、沢山の価値観に触れ、多くの視点を持って、ベストな答えを見つけていくことが大切なのだ。私はこれからも、より多くの人が納得でき、暮らしやすい社会を実現するために、よりよい答えを模索し続けていこうと思う。 ■油田 あゆみ(保護者)  特別支援学校の生活に物足りなさを感じ、普通高校へ入学した娘。それは私と娘にとって地域社会での生活のスタートであり、周囲への理解を求めることが必要になりました。しかし、この先自立した生活を目指す娘に対し、そろそろ娘自身で交渉をしていくべきではと考えていた矢先に、DO-IT の存在を知りました。その内容はまさに私の求めていたものでしたが、いきなりの飛行機での一人旅には度肝を抜かれました。研修を終えた時のとても大人びて見えた娘の姿は忘れられません。様々な課題を抱えるスカラーに出会い、自分の考え方を整理し、物事の捉え方を学んだ娘は、以前にも増して充実したメリハリのある生活を送っています。自分の力を最大限に発揮できる環境とは?必要な配慮とは?…機器と身体のマッチングはもちろん、自分自身が心身面の管理を行うことの大切さに気づけたのだと思います。そして何よりも嬉しかったのは、おしゃれを意識しだしことです。諦める必要のないことを先輩方に教わったのだと思います。スカラー達の目指すものは贅沢なものでなく、ごくごく当たり前の生活。ですがスカラー達の姿は、健常な子供達よりもはるかに輝きに満ち溢れ、眩しいものでした。 30ページ ##B2 年次以降スカラーの活動 スカラーたちは、初年次の夏季プログラムでテクノロジー利用やセルフ・アドボカシーについて学び、プログラムが終わり自宅に帰った後も、それぞれのフィールドで様々なチャレンジを続けています。このセクションでは昨年からの一年間でどのようなことがあったのかを振り返ります。 #“夏季プログラムでの学びを活かす” 夏のプログラムでは、自分が求めたいと思っている配慮の内容について考えを深め、さらに、テクノロジーにより配慮が得られた状態では、自分がどれだけ学びをスムーズに進められるのか、実体験を通じて学びました。紙のノートと鉛筆は、多くの生徒たちにとっては学びを助ける素晴らしい道具になりますが、障害のある生徒では、学びを妨げる障壁になることがあります。能力に下駄を履かせるような支援や、課題を簡単にすると行った減免措置ではなく、自分の持つ力が発揮できるよう適切な範囲の配慮を得た状態で学びを進めたり、試験に参加することが「公平」であるという、障害のある人への「合理的配慮」という考え方を学んだスカラーたちは、それぞれの日常へ帰った後、自分にとって必要な配慮とは何かを考え、周囲と対話しながら、配慮を得ていくことを続けています。 #“授業でのテクノロジー利用の状況”  印刷された文字をコンピューターの音声読み上げテクノロジーで読み上げるなど、耳で聞いて理解することで、見落としや読み飛ばし、読み間違いを少なくすることができるスカラーがいます。鉛筆を使って手書きで文字を書くことに大きな困難があり、ワープロの利用が必要なスカラーがいます。四肢を自由に動かすことが難しいことから、ワープロの利用と併用して、代筆やノートテイクを代理で行う人的支援が必要なスカラーもいます。しかし、日本国内では、まだまだ障害のある生徒がテクノロジーを活用して他の生徒共に学ぶという前例が少ないために、学校側に丁寧に説明しながら、まず自分自身が前例となっていく必要があります。 #“試験でのテクノロジー利用の状況” 教科書はもちろん、試験問題でも、音声を組み合わせて聞くことで、間違いなく内容を理解する助けになります。手書きの書字が困難な生徒では、解答やメモなどの文字を手書きすることにかかる大きな負荷が思考を妨げます。読み書きの遅さから長い時間も必要となり、誤読や書き間違いも増えます。決められた制限時間の間に問題を読み、解答を考え、書き込む必要がある「試験」という場面では、障害のない受験生たちと公平な条件で競争するために、コンピューターの利用は非常に重要なポイントになります。  ただし、単に試験のどのような場面でもコンピューター利用が認められればよいというものでもありません。漢字の書き取りの試験で仮名漢字変換機能を使うことは認められなくても、小論文を書いてその論旨で評価を受ける場面では問題なく認められる可能性がある、というように、通常の学習場面よりもさらに、テクノロジー利用の合理性が問われることになります。「本質的にその試験問題が測ろうとしている能力は何か」を関係者で共有して、本質的ではない部分はテクノロジー利用を認めて、障害のある人も参加できる教育機会を作っていくことが必要です。前例のない中で配慮を得ていく過程を歩んでいるスカラーたちは、その共通理解を作り上げていく営みを行っているとも言えます。 31ページ #“スカラーそれぞれのテクノロジー利用の状況” ■伊井 健悟 12 スカラー/奈良県・高校 3 年生 教科書の電子データを音声読み上げして学習すること、定期試験や学外模試で、問題文の音声読み上げやキーボード入力での解答が認められました。大学入試での音声読み上げの配慮を得ることを目指して準備と交渉を進めています。教科書や試験の電子データ製作は、DO-IT が支援として提供しています。 ■植田 健人 13 スカラー/大分県・高校 3 年生 手書きで文字を書くことに大きな困難さがあります。読書感想文の執筆で、ワープロを利用して書くことが認められました。また、学外模試での手書きの筆記をワープロで記述することが学校から認められました。大学入試でのワープロ利用許可の配慮を得ることを目指してい準備と交渉を進めています。 ■河高 素子 13 スカラー/東京都・高校 1 年生 手書きで文字を書くことに大きな困難さがあります。高校での授業でのノートテイキングに、デジタルカメラでの板書の撮影や、パソコンによるキーボード入力を使うことが認められました。通常の授業場面や自宅での学習にテクノロジーを活かして、学びの可能性を大きく広げることにチャレンジしています。 ■愼 允翼 13 スカラー/千葉県・高校 3 年生 高校の授業や定期試験で、ワープロや指先のわずかな動きで図を書くツールの利用と、代筆(口述筆記)の支援を組み合わせて受けています。現在は、高校と同様の支援を、大学入試でも受けられるように準備と交渉を進めています。 ■田中 佑典 13 スカラー/北海道・高校 2 年生 手書きで文字を書くことに大きな困難さがあります。高校の授業でのノートテイキングでは、前例がないためにまだワープロ利用が認められていませんが、学外模試を自宅でワープロを使って実施することが認められました。彼もまた、通常の授業場面や自宅での学習にテクノロジーを活かして、学びの可能性を大きく広げることにチャレンジしています。 32ページ #“インターンシップ・海外留学” ■東大先端研内でのインターンシップに参加  東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)は、DO-IT Japan をホストしている東京大学の付置研究所です。DO-IT は東大先端研が数多く取り組むプロジェクトのひとつです。大学へ進学した DO-IT のスカラーは、東大先端研内のバリアフリー関連のいくつかの研究室が遂行しているプロジェクトに、研究補助インターンとして参加しています。 ■他団体の海外派遣事業へのスカラーのチャレンジ  ダスキン愛の輪基金が実施している「ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業」の 34 期生として、DO-IT スカラーの蔵本紗希さんと川端舞さんが選抜されました。また二人はダスキンとマサチューセッツ大学ボストン校が 2014 年から開始した「スタディ・イン・アメリカ」という共同プログラムの第 1 期生になりました。この報告書の執筆時点で、二人はまさに米国での研修を行っている最中です。 URL: http://www.bostonduskin.org/ For information on Duskin Leadership Program at ICI/UMass Boston, contact Dr. Heike Boeltzig-Brown at heike.boeltzig@umb.edu #参加者の感想 ■蔵本 紗希・08 スカラー  私はこのプログラムに障害のある人の教育の保障やセルフ ・アドボカシーについて興味があり応募しました。 今は Federation forChildren with Special Needs という機関でインターンシップをし、大学で Asian AmericanStudies の授業を受講しています。あらゆる場所を訪ねるたびにこちらの人は権利を強く主張する文化なんだと思わされています。私はこちらに来てから "people's awareness for minorities" ということにすごく興味を持ち始め、多くの人と議論を交わしています。最初の興味と今 3 ヶ月ボストンで学んだ後の興味は少し変わってきていますが今は個人、コミュニティ、社会という3つのつながりと影響について知り考えていきたいと思っています。 ■川端 舞・08 スカラー  毎日、朝と夜、アメリカ人のヘルパーさんに介助をお願いしています。英語でのコミュニケーションは、言語障害のため英語を話せないため、ほとんど iPadでやっています。私も Federation for Childrenwith Special Needs で週二回、インターンシップをしています。インターン先は研修生の興味に基づいて決められます。私とさきちゃんの興味が少し似ていたため、同じインターン先になりました。私は最初、インクルーシブ教育に興味がありました。でも、アメリカに来て、いろんな人に出会い、自分の今までの経験と向き合う時間もあり、自分は本当は障害児の保護者支援について興味があることに気づきました。今の研修テーマは、日本で障害児の親のサポートグループを作るために何が必要かを学ぶことです。 33ページ ##CDO-IT School  2014 年の DO-IT School プログラムは、現在、2 つのプログラムで構成されています。ひとつは「OAK プログラム」そしてもうひとつは「アクセシブルテスト プログラム」です。いずれも学校に対してテクノロジー製品と、障害のある児童生徒の支援につながるノウハウ提供をセットにして提供します。DO-IT のメインプログラムでは、障害のある児童生徒・学生を対象として、彼らが自ら成長していくことをバックアップしますが、DO-IT Schoolプログラムでは、児童生徒・学生の周囲の環境に働きかけます。障害のある児童生徒が適切な環境で学ぶための合理的配慮(環境調整)を行うことができる地域での教育支援体制作りに貢献することを目指しています。 #OAK プログラム  DO-IT Japan は、困難に直面した子どもたちがテクノロジーを用いて最大限にその可能性を発揮できるよう、2012 年度より、新たに障害が重度な子どもたちの意思表出や能動的活動を支援するプログラムを開始しました。2014 - 2015 年度は、重度重複障害のある子どもたちと彼らを指導する教員を対象とする DO-ITSchool OAK プログラムを、東京大学先端科学技術研究センターが主体となり、日本マイクロソフト株式会社および株式会社東芝からソフトウェアとハードウェアの提供を受け、実施しています。  近年の医療技術の進歩に伴い、一部の障害は軽度化しています。しかし一方で、かつては生きることが難しかった子どもたちが生き残れるようになり、重度で重複した障害を持つ子どもたちの数が増えています。重度重複障害のある子どもたちの潜在能力を引き出すために、OAK(Observation and Accesswith Kinect)は、彼らのわずかな動きをカメラ(Kinect forWindows)でとらえて、家電やパソコンの操作を可能にします。また、動きの量に応じて、各位置を異なる色に着色して画像表示する機能により、子どもたちの体のどの部分がよく動くのかを評価できる機能も備えています。  重度重複障害のある子どもたちには、動きが小さく、反応が乏しいためにコミュニケーションが上手く成立していない子どもが多くいます。反対に動きはあるものの、緊張による不随意運動があり、思いをうまく表せない子どももいます。こうした子どもたちへの効果的な関わりを目指して従来勘と経験を中心に行われていた支援活動に、OAK など、客観的なデータによる評価を取り入れ、その結果に基づいた効果的な関わりが可能になると期待しています。その実践はまだ始まったばかりですが、OAKを用いた観察によって、ご家族を含めてコミュニケーションを取ることが困難であった子どもたちとの関わりの糸口が見つかる例も複数得られるようになりました。実践研究校に採択された4校(東京都立八王子東特別支援学校、静岡県立静岡南部特別支援学校、香川県立高松養護学校、徳島県立ひのみね支援学校)とともに、2014 - 2015 年度の OAK プログラムを進めています。今後、OAKを利用した効果的な関わりについての情報発信を行っていきます。 画像 OAK が持つ動きの可視化機能(右側で赤く示された所が多く動いた部分) Sponsored by 株式会社東芝 DO-IT School プログラムに、東芝製のタブレット PC をご提供いただきました。アクセシブルな試験実施のため、教科書や試験を音声で読み上げたり、キーボード入力を行うほか、OAK のソフトウェアを実行する環境として活用させていただいています。 #アクセシブルテスト プログラム  2014 年 1 月、国連障害者権利条約へ日本が批准したことに伴い、日本の教育制度にはインクルーシブ教育システムが導入されました。障害のある生徒も他の生徒とともにできるだけ通常の教育課程で、適切な合理的配慮を受けて学ぶことが目指されている。近年、通常学級でも、小学校を中心として、合理的配慮の選択肢のひとつとして、テクノロジーの利用も広がりつつあります。しかし、中学校や高校段階では、障害のある生徒が配慮を得ながら教室で学ぶことへの理解は、これから広がっていく段階にあります。また、高等教育へ進学し、専門性のある学びを得ることを考えると、教室での学びが保障されることに加えて、小学校や中学校の段階から、適切な配慮を受けた上で評価を受けることが重要になります。つまり、試験の実施において「アクセシビリティ(accessibility:障害のある人も利用や参加が可能となっているかどうか)」が配慮されていることが重要です。  アクセシブルテストプログラムでは、タブレット PC というハードウェアと、アクセシビリティを考慮した教科書・教材の利用方法や、試験を実施する上でのアクセシビリティ保障のノウハウを、プログラム参加校に対して提供しています。 34ページ ##E海外研修  DO-IT Japan では、文化やライフスタイルを含めた海外の多様な価値観や社会制度などを実際に体感する経験を得るため、海外研修プログラムを行っています。これまで大学生リーダーに限定していた対象を、中学生以上のスカラー・リーダーに拡大し、今年は 4 名の中学 1 年生スカラーが参加しました。  2014 年 3 月 26 日から 3 月 31 日まで、イギリスのロンドンを訪問し、4 名のそれぞれの目的地である「自然史博物館」「英国図書館」「大英博物館」「ベルファスト記念艦」などを巡りました。また、サウサンプトン大学のE.A. Draffan 研究員の自宅を訪ね、イギリス式の生活を体験しました。 2014.3.25 日本出国 2014.3.26 イギリス入国 2014.3.27 自分の興味を探求しよう 海外研修に参加した 4 名のスカラーが掲げたそれぞれの研修の目的地を訪れました。「自然史博物館」では、たくさんの生き物の標本とそのディスプレイの仕方に圧倒されました。「英国図書館」では、あのマグナ = カルタやジョン・レノンの手書きのメモなどを見ることができました。「大英博物館」では、本物のミイラやロゼッタストーンの実物を見て、過去から受け継がれる人間の歴史を感じました。「ベルファスト記念艦」(29日に訪問)では、本物の艦船の内部がリアルに再現され、乗組員の一員になったようでした。見るものすべてが刺激的な一日でした。 2014.3.28 イギリスの暮らしを体験しよう サウサンプトン大学の E.A. Draffan 研究員の自宅にホームステイさせていただきました。築 200 年以上の歴史ある家屋と広大な庭のあるお宅で、イギリス式の生活を体験しました。おやつにフラップ・ジャックという伝統のお菓子を作りティータイムを楽しんだり、ディナータイムにはスカラー達が日本から持参したお土産を E.A. さんへプレゼントしたりしました。勉強してきた英語を駆使してコミュニケーションを取り、少し自信がつきました。翌朝には、イースター・エッグ・ハントをして、イギリスの伝統文化にも触れました。 2014.3.29 日本とイギリスの町の違いに着目しよう ロンドンバスの 2 階からロンドンの街を観察し、日本との違いを観察しました。ロンドンブリッジやビッグベン、ウェストミンスター寺院など伝統的なイギリス建築はもちろんのこと、石造りの古い建物が多いことに気が付きました。日本の都市の高層ビル群と比べて背の低い建物が多く、広場や公園が点在していることも印象的でした。バスの音声ガイドを聞きながら、たくさんの写真を撮り、日本との違いについて考察しました。 2014.3.30 イギリス出国 2014.3.31 日本入国 35ページ #参加者の感想 ■渡邊 幸音・中学 1 年/ 11 ジュニアスカラー  日本とイギリスの違いについて感じたことが色々ありました。まずタクシーの作りが日本と違ったのは、驚きました。前の席が日本と違っていて、助手席がありませんでした。犬が乗っていることもあると聞いて驚きました。他にも、EA さんの家から帰るイギリスの電車に乗った時に陽太郎くんが、間違えて行きの時に使った切符を出してしまっていたけど駅員さんは、特に何も言わず行ってしまいました。この時イギリスの人は、大雑把なところがあるのかなと思いました。イギリスに行って見て、日本人は几帳面なところと親切な国民性があったということに気がつきました。そして本やネットで調べた時イギリスは、スリや誘拐も多くて治安も悪いと書いてありました。日本は、安心で安全の国だと日本の良い所を再認識することができました。  イギリスのお金はコインの種類が多かったです。コインが絵柄を揃えると一つの絵になるところにイギリス人の遊び心を感じました。あとお金の管理ができなかったことは、気をつけた方がいいと思いました。これからは、自分でしっかり管理できるように頑張りたいです。言葉は sorry と thank you と pleaseしか使えませんでしたが、相手が言っている事は何と無くわかったので、自信が付きました。私はイギリスに行ってみて、イギリスのことを知って、日本のことが色々見えてきました。自分も沢山の人に会って多くの物を見たら、自分のことが見えてくるような気がして、沢山の経験をすることが大事だとわかりました。グローバルな人材になるためには、多くの経験をすることが大切だと思いました。新谷先生が勉強を頑張っていれば留学したり好きなことができるようになると教えてくれたので、星槎名古屋中学校で勉強を頑張ろうと思います。そして人を助ける仕事がしたいという将来の夢を追いかけようと思います。 ■海外研修参加スカラー □水上 陽太郎・中学 1 年/ 11 ジュニアスカラー □渡邊 幸音・中学 1 年/ 11 ジュニアスカラー □嵯峨 日向子・中学 1 年/ 13 ジュニアスカラー □谷島 昂・中学 1 年/ 13 ジュニアスカラー 36ページ ##E一般公開シンポジウム  2013 年の障害者差別解消法の成立に続き、いよいよ今年 2014 年 1 月には、国連障害者権利条約に日本が批准しました。合理的配慮の提供は、教育場面で学校が確実に遂行していくべきことになりました。今年のシンポジウムでは、これまでに DO-IT の活動の中で蓄積してきた試験での合理的配慮の方法に関わる具体的なモデルを示すことをテーマとしました。 #シンポジウム【話題提供T】 ■高校・大学入試における合理的配慮とテクノロジー利用の実際 〜 Windows や Word など一般的 ICT を利用した環境構築の実例を提案〜  障害者差別解消法の可決成立に続き国連障害者権利条約が批准され、2016 年 4 月から教育場面での合理的配慮の提供が義務化されることになりました。インクルーシブ教育システムの実現に向け、全国の教育現場の状況は急速に動き始めていますが、試験での合理的配慮としてのテクノロジーの利用にも具体性が必要です。  DO-IT Japan では 2007 年から、児童生徒とともに、高校や大学の入試選抜で、ワープロや音声読み上げといったテクノロジー利用の可能性について実践を積み重ねてきました。本シンポジウムでは、障害のある児童生徒が受験する上で必要な配慮があり、かつ他の生徒と不公平とならないよう配慮した環境を全国の学校でテクノロジー利用により構築できるよう、具体的な活用モデルを提案しました。  試験の合理的配慮では、障害から生じる不利益を少なくし、障害のある児童生徒・学生が試験に負担なく参加できるよう環境調整することが必要になります。テクノロジー利用はその有力な手段のひとつとなります。しかし同時に、「テクノロジーが不正に利用されていないか?」という不安を周囲から抱かれるなど、本質的ではない部分で利用が認められることに対する障壁が残っているのも事実です。  具体的な不安としては、過去の DO-IT の実践の中で、以下のような不安を投げかけられたことがあります。 「漢字変換機能を不正利用していないか?」 「辞書検索などの検索機能を不正利用していないか?」 「スペルチェックなどの文書校正支援機能を不正利用していないか?」 「数学の公式を参照できる機能など不正利用に使える機能が無効化できないのではないか?」  そこで DO-IT では、漢字変換の履歴を含めて、コンピューターのキーボード操作の履歴を記録して、不正利用がないかどうか監視することができるソフトウェア「LIME」や、漢字変換の辞書を操作して、学年相当の漢字だけが変換候補の中に登場するように調整する「キッズ IME スイッチ」を無償公開しています。また、シンポジウムでは、Microsoft Word のリボンから試験に無関係な機能を消す(一時的に無効にする)方法など、実際に高校入試や大学入試などの場面で、テクノロジーを利用して受験する環境作りの具体例を紹介しました。 DO-IT RaRa:試験や学習に利用できるツール URL: http://doit-japan.org/accommodation/tool/  実際のところ、特に LIME は、キーボード利用を学校側に認めてもらうために、障害のある受験生の方から学校に対して「自分は不正をしないから、これを使って監視をしてもらってかまわないので利用を認めてほしい」というように、交渉のツールとして使われるケースが出てきています。障害のある受験生は、不正をして自分の受験を有利にしたいのではなく、公平に能力が評価される形で試験を受けたいのだと言えるでしょう。合理的配慮の提供の中では、障害当事者への配慮を否定せず、参加を保障するための柔軟性を何より重視しつつも、関係者間の公平性を重んじることが求められます。 37ページ #シンポジウム【ディスカッション】 ■「全国の高校・大学入試での合理的配慮としてのテクノロジー利用の今後」  2007 年に始まった DO-IT Japan のこれまでの取り組みでは、多様な障害のあるスカラーが受験での困難に直面してきました。障害そのものを理由として直接入学を拒否されるなどの差別的取り扱いを除けば、障害のある受験生では、当然ながら困難さの程度も受験の環境も個々に大きく異なるため、障害種別や診断名だけで、ある種の配慮が可能かどうかを一般論として判断することはできません。個別の事例の中で実際にどのような困難さが生じているのかをよく見て、適切な配慮を考えることが重要です。とはいえ、個別性にこだわりすぎると、配慮のあり方について考え、具体的に配慮を提供する取りかかりが見つかりません。  シンポジウムでは多様な障害のある受験生の実例から、障害による困難と関連するテクノロジー利用を紹介し、入試での合理的配慮を実現する具体的方法として期待されるテクノロジーが、今後の差別禁止と合理的配慮の時代に、障害のある本人や、教師、保護者、支援者の基礎知識となっていく未来について展望しました。 ・鉛筆を使って文字や図形を書くことができないか、非常に大きな困難のある肢体不自由や発達性の書字障害等のあるスカラー →キーボード入力の利用/代筆(口述筆記)の利用 ・ディスレクシアや高次脳機能障害など認知面の障害、視覚障害など感覚器の障害等から、視覚的に文字を読むことが難しいスカラー → 音声読み上げ、拡大やハイライト、コントラスト、背景色の 調整 ・聴覚障害等があり音声を耳で聞いてリスニング試験を受けることが非常に困難なスカラー →補聴器の利用、音声を文字起こししたスクリプトによる受験、適切な範囲での免除や代替 ・感覚過敏や注意障害等があり、大勢の受験生の喧噪の中に混じって集中して試験を受けることが極端に難しいスカラー →耳栓やノイズキャンセリングヘッドフォン、別室の利用 ・センター試験や二次試験という主に寒さの厳しい冬期に行われる受験に参加することで、健康や時には生命維持に危険が生じることのある進行性の難病、内部障害等、病弱等のあるスカラー →試験時期の調整、試験回数の柔軟化(または追試問題の活用)、オンラインでの受験 写真 渡辺 正実 文部科学省高等教育局 学生・留学生課 課長 写真 井上 惠嗣 文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課 課長 写真 加治佐 俊一 日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 最高技術責任者 写真 加藤 公敬 富士通株式会社 デザイン戦略担当 シニア・バイスプレジデント 写真 長谷川 寿一 東京大学 理事・副学長 写真 西村 幸夫 東京大学先端科学技術研究センター所長 38ページ ##FDO-IT Japan の概要と未来への展望  DO-IT Japan は、障害や病気のある若者から未来のリーダーを育てることをミッションとしています。2007 年度の開始当時から、障害のある高校生たちに障害のある人を支援するテクノロジーを提供し、大学進学での配慮を求める上でのセルフ・アドボカシー(自己権利擁護)を支援し、必要な配慮を得た上で高等教育へ進学することを支援してきました。DO-IT Japan は、障害や病気による困難のある若者のライフコースに沿ったプログラムを用意し、ICT 活用や大学体験、社会体験を通じて、次世代の社会を担うリーダーを育成していきます。 #障害のある児童生徒の進学をめぐる状況  DO-IT Japan では、2007 年に高校生プログラムを開始した後、2010 年からは大学生を対象としたプログラムを、2011 年からは読み書き障害のある小学生プログラムを、2013 年からは読み書き障害のある中学生プログラムをというように、徐々に対象範囲を拡大して来ました。2014 年は、読み書き障害以外の障害のある中学生プログラムの募集を始めました。  これまで、授業場面や入試選抜で障害のある児童生徒が排除されないように、テクノロジーの利用を中心とした適切な配慮を求めてきました。2013 年には、日本国内でも「障害者差別解消法」という障害者差別禁止のための法律が制定されました。施行後は、特に国公立の教育機関では、障害者の差別的取り扱いと、合理的配慮の不提供が禁止されます(私立は努力義務とされていますが、教育を受ける権利は基本的人権の一つであることから、提供義務を免除されることはないのではないでしょうか)。施行は 2016 年 4 月と、刻々と義務化の日が近づいてきています。今年 2014 年 1月には、差別解消法の成立を受けて、国連障害者権利条約もついに批准されました。障害のある当事者である学生たちが、自分自身にとって必要な配慮を説明し、求めていくことはこれまでと変わらず必要となりますが、当事者からの一方的な要望ではなく、教育機関の側からも、合理的配慮を実現するための基礎的な環境整備も必要となりますし、建設的な対話を行っていくことも必要となります。これについて、2013 年から始めた、学校側の環境を整えるプロジェクトである DO-IT Schoolプログラムも、今年で 2 年目を迎えました。テーマを「障害のある児童生徒・学生がアクセス可能な試験の環境整備(アクセシブルテストプログラム)」として、各地の参加校の先生方と継続的に実践中です。  高等教育への入り口の問題を超えて、次にやってくる就労や社会参加に関する出口の問題、より障害の重い子どもたちの学習や社会参加といった問題。そうした問題に立ち向かう上で、社会のリーダーとなる人材を、障害のある人々の中から育てることはとても重要なことと私たちは考えています。その支えとなるべく、DO-IT Japan は着実な取り組みを続けていきます。 #アメリカと日本における全学生に対する障害学生の割合 アメリカの障害学生:11% [出典]米国会計検査院(2009) 日本の障害学生:0.42% [出典]日本学生支援機構(2014) #DO-IT Japanと障害学生数の将来予測 2006年 障害学生在籍率/0.16% 約5000人 2007年 DO-ITスカラー参加人数 12 ・国連障害者権利条約に署名 2008年 DO-ITスカラー参加人数 23 2009年 DO-ITスカラー参加人数 32 2010年 DO-ITスカラー参加人数 46 2011年 DO-ITスカラー参加人数 61 ・障害者基本法の改正(「合理的配慮」の登場) 2012年 DO-ITスカラー参加人数 74 ・中教審「インクルーシブ教育システム」報告 ・高越教育での配慮「修学支援検討会一次まとめ」報告 2013年 DO-ITスカラー参加人数 88 ・障害者差別解消法の成立 ・障害者雇用促進法の改正(雇用での合理的配慮の義務化) 2014年 障害学生在籍率/0.42% 約1万3500人 DO-ITスカラー参加人数 105 ・国連障害者権利条約の批准 2015年 障害学生在籍率(予想)/0.5% 約1万5000人 DO-ITスカラー参加人数(予想)120 ・2016 障害者差別禁止と合理的配慮が法的義務化(差別解消法と雇用促進法の施行) 2020年 障害学生在籍率(予想)/2.0% 約6万人 DO-ITスカラー参加人数(予想)175 39ページ #DO-IT Japan 2014 年度データ ■参加者の障害内訳 ※重複あり 盲ろう 1 人 発達障害49 人 肢体不自由41 人 視覚障害 8 人 聴覚障害 7 人 高次脳機能障害 4 人 ■参加者の出身地 2014年度 北海道,新潟,栃木,茨城,千葉,神奈川,三重,香川,高知,福岡,宮崎,鹿児島 2007年から2013年度 青森,岩手,山形,福島,群馬,東京,長野,静岡,愛知,石川,福井,滋賀,京都,大阪,奈良,和歌山,兵庫,愛媛,岡山,広島,鳥取,島根,山口,大分,佐賀,熊本,沖縄 ■参加者における大学進学者総数 2007年度 参加者総数 12 大学進学者総数 0 2008年度 参加者総数 23 大学進学者総数 3 2009年度 参加者総数 32 大学進学者総数 9 2010年度 参加者総数 46 大学進学者総数 20 2011年度 参加者総数 61 大学進学者総数 30 2012年度 参加者総数 74 大学進学者総数 36 2013年度 参加者総数 88 大学進学者総数 48 2014年度 参加者総数 105 大学進学者総数 58 #DO-IT Japan への参加の流れ ■4 月上旬頃 ジュニアスカラー(小学生・中学生)、スカラー(高校生・高卒者)募集発表 DO-IT Japan ウェブサイト(http://doit-japan.org/) やチラシ等で募集発表します。参加希望者はウェブサイトから応募書類をダウンロードしてください。 ■4 月中旬〜 5 月上旬頃 ジュニアスカラー、スカラー応募期間 作成した応募書類を DO-IT Japan事務局へ郵送してください。 ■5 月上旬頃 第一次選考(書類選考) 応募書類に基づき、審査委員会によって参加候補者を選考します。 ■5 月中旬〜 6 月上旬頃 第二次選考(面接) 第一次選考を通過した参加者と面接を行い、参加最終選考します。 ■6 月上旬頃〜 参加準備オンラインミーティング パソコンや IC レコーダー等の機材と、それぞれの障害にあわせた支援機器を自宅へお送りします。その後、インターネットを通じ、夏季プログラムへ参加するための準備ミーティングを行います。 ■8 月上旬 夏期プログラムへの参加 ■8 月中旬以降 オンラインメンタリングへの参加 年間を通じて、メールやチャットミーティングを通じて様々なテーマについて専門家に相談したり、仲間と議論したりします。 40ページ 裏表紙 DO-IT2014 #主催 DO-IT Japan,東京大学先端科学技術研究センター #共催 ソフトバンクグループ(株式会社エデュアス,ソフトバンクモバイル株式会社),日本マイクロソフト株式会社,富士通株式会社 #協力 沖電気工業株式会社,オリンパスイメージング株式会社,株式会社京王プラザホテル,株式会社トヨタレンタリース東京,株式会社ライフデザイン,フォナック・ジャパン株式会社 #後援 厚生労働省,文部科学省(五十音順) #お問い合わせ DO-IT Japan事務局 153-8904 東京都目黒区駒場4-6-1 東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 03-5452-5064(TEL&FAX) info@doit-japan.org http://doit-japan.org/ 以上